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□White Valentine!
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『ふーん』
「え、なに」
『バレンタインに、チョコレートをあげたいキャラクター第1位は坂田銀時だってさ』
「マジでか!!」
『良かったねー』
座っていたベッドから立ち上がり、うっしゃー!とガッツポーズをする銀時に、名無しさんは呆れた顔でため息をついた。
「ていうか何その棒読み」
『だってうるさいんだもん、ベッドぶほん!てしたし…』
二人で座っていたベッドは、確かに銀時のうっしゃー!で大分弾んだ。
あれです、二人でベッドに座っていたといっても、お互いジャンプを読んだりスマホをいじっていただけで別にいちゃいちゃ的なあれはないです。
「ねぇねぇ名無しさんちゃん」
『なに?』
「もちろん名無しさんちゃんからのチョコ、あるよな?」
『チョコレートなら台所にあるよ』
「そうじゃなくてさぁ、バレンタインの〜」
『あるわけないじゃん。銀さんにあげるぐらいだったら自分で食べるし。っていうか他の人たちから貰いなよ第1位なんだからさ』
プイッとそっぽを向いた名無しさんに、銀時は四つん這いで近寄り顔を覗き込んでみる。
と、不機嫌そうな名無しさんと目と目が合った。
「なに、もしかして名無しさんちゃんヤキモチですか?」
『んなわけないでしょ?』
「なぁ、俺ァ名無しさんからのチョコが食べたいんですけど。かぶき町じゃ俺ァもてねぇし、そのランキングだってどーせあれだよ、
銀さん甘党だからチョコあげたら喜んでくれそう!
ぐらいな義理チョコだよ。どーせ奴等はニコチンマヨラーとかドSが好きなんだよ。でもニコチンマヨラーにゃチョコじゃなくてバレンタインでもマヨネーズ渡すだろ?ドSにもチョコ渡したってどーせ素っ気ない態度されっか豚にされるだけだってわかってんだよ。だから銀さんなわけ、わかる?」
『…自分で言ってて悲しくない?っていうか、いいのにそんな気にしなくても…だって今銀ちゃんはこうして一緒に居てくれるし…』
しょぼんとなった名無しさんに銀時は元気を出させようと(チョコを貰えるチャンスとか思ってねぇよ?さすがにこのタイミングでチョコ本気でくれなんていわねぇよ…)すかさず手を出した。
『なに』
「チョコ」
『だから無いって』
「…え、マジでないの?かぶき町でももらえなかったんだよ、こっちの世界でも貰えないってどーゆーことだァァァ!っていうか本命もらえるじゃん、目の前に彼女いるじゃん、何で無ぇんだよさすがの銀さんもグレちゃうよ?!」
『だって、誰かから貰ってると思ったし、お菓子作るの下手だし…』
「はぁ、お前ね、味なんて関係ねぇの。それに名無しさんからのチョコ以外は受け取らねぇよ」
『…』
俯く名無しさんの頬を両手で包んだ銀時は、ニッと微笑みかけた。
「今から材料買いに行くぞ!」
『え?』
「一緒にチョコレートケーキ、作ろうぜ?」
『でも外…雪だよ?』
「あ…そうだっ、た…」
大好きって、抱き付けたらいいのに
可愛くなれたらいいのにな、
お尻の下に隠した歪なチョコレートも、たぶん渡せない。
2014.2.13