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□愛@
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満月の光が、銀髪を照らす。
その輝きはまるで憎いアイツの髪の色。
金色にも見える。
ここは万事屋の前。
みんなに存在を忘れられても、もう一度会いたい女が居た。
「名無しさん…」
さすがは自分の家だ。
すんなり家の中に入ることが出来たのだが、奥の寝室から何か聞こえてくる
『い、いや金ちゃん』
「どーしたんだ?今までは普通にやってたじゃねーか」
『やなの、っあ、だ、め…』
…人ん家で何やってんのアイツ、からくりのくせに何俺の女に手ぇ出してんの?
今まで?いや、今までは俺ので気持ちよくなってたんだよ?
まさかの展開に柄にもなく動揺する銀時。
何より、愛しの名無しさんに他人が触れていることが腹立たしくてならない様子だ。
自分を落ち着かせながら寝室を覗いた銀時の目に映ったのは、服のはだけた名無しさんを金時が後ろから抱きしめ顔を首筋に埋めているシーンだった。
『やめて』
「なんでか言ってくんないとわからねーぜ?」
『…最近の金ちゃん、なんか違うの』
「そうか?」
『前は優しくて、無理矢理っぽくても愛があったしもっと暖かくて、ずっとくっついていたかった気がするの…でも最近の金ちゃんは冷たいよ、心が』
「何生意気なこと抜かしてんだ。愛はあるぜ、今も昔も」
そういうと金時は無理矢理名無しさんを押し倒し首を舐め始めた。
『いっ、いやあ離して!!!!』
「…」
言葉より先に身体が動いていた。
銀時が金時を木刀で吹っ飛ばした。
ぐおぅつ!
「大丈夫か!」
すかさず銀時は名無しさんを抱き抱え声を掛けた。
『あなたは…?』
名無しさんの一言に、銀時は胸がはちきれる思いだった。
「てめぇ…人の女にまで手を出しやがって、つくづく腹が立つぜ…」
『人の女…?』
「何言ってんだ、了解の上だよ」
「了解の上だ?のわりには嫌がられてたじゃねーか、やる気なのはお宅だけなんじゃねーの?」
金さんと、銀髪の人がマジな目で会話をしているのを間近で見ている名無しさんは震えだしていた。
「もう、大丈夫だから」
胸板に抱きしめながら言う銀髪の男の目に、名無しさんは吸い込まれそうだった。
『ぎ、…ぎんちゃ』
?!
「おまっ、まさか思い出して…」
「おいおい笑わせるなよ兄弟、んなことあるわけねぇよ」
『わからない、頭が痛いよ…誰なの、貴方を見てると暖かい気持ちに、なるの、わからない…』
突然頭痛に襲われ頭を抱え始めた名無しさん
「おいしっかりしろ!」
ドドドドッ!
「どうしたアルか金ちゃん!!」
神楽が起きてきて空気を破った。
「おまえは昼間の…!また金ちゃんに悪さをしに来たアルか!!名無しさんに触れるな」
番傘で戦おうとした神楽に、
悪さしに来た訳じゃねぇよ、争いに来たわけでもねぇ
そう言って銀髪は万事屋から出て行った。
もし、あのときにちゃんと思い出せていたなら。
初めて会った筈の男性に、もっと触れていたいと思ってしまった。