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□バレンタインの夜に
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去年は嬉しそうにもらってくれたけど
今年ももらってくれるかな…

まぁ私は一応彼女なんだけど!!

チョコ…渡しづらいかも。




『よし!出来た!!』

昨日、つまり13日の夜から今朝、つまり14日の今日に掛けて作りました。

料理へたっぴながらに頑張りましたよガトーショコラと生チョコ!!

『銀ちゃん、喜んでくれるかなぁ…』


ところで銀ちゃんは今日、万事屋に居るのだろうか。

世の恋人達にはビックイベントのバレンタインになぜ私たちは何の約束もしていないのだろう。

とりあえず、万事屋に向かう名無しさん。


ピンポーン


万事屋に付きインターホンを鳴らすと、なんだか髪の毛が今日はやけに整っている男が現れた。

これが坂田銀時である。


『急に来てごめん。いいかな…えっと、少しで良いから、ちょっと会いたかったというか…』

「おう、まぁ上がれや。どーせ仕事もねぇしよ」

頭を掻く彼の足元を見ると、いくつかの靴が置いてある。


『お客様?』

「そんな大層な奴らじゃねぇよ」

ふーん

と言いながら居間に行くと名無しさんは動きを止めた。



「あらぁ、名無しさんちゃんじゃない、こんにちは」

「名無しさんちゃんか…だが妙ちゃんの隣は譲らん」

「あら名無しさんさん、何しにきたのかしら彼女が最後だなんて余裕ね、私なんて一週間前から銀さんの家にいたんだから」

「わっちはたまたま通りすがっただけじゃ」

『こんにちは…お妙ちゃん、九ちゃん、さっちゃんさん、月詠さん。あれ、神楽ちゃんは?』

「新八と定春と遊びに行ってるぜ」


万事屋の居間は女だらけだった。




たわいもない話や幾多の言い争いの末、夜は更けた。

「てめぇらもう帰れ、銀さんご飯作るから」

女子たちはブーブー言いながら、彼に箱をそれぞれ渡して帰って行った。

最後の1人が私になった。
このタイミングの悪さ、呪いたい。

銀ちゃんの腕に抱かれた箱たちは、何なのかわからないほどバカじゃない。

彼女たちは無造作に渡したが、彼はデレデレと受け取っていたのを名無しさんはしっかりと見ていた。

『じゃ、またね』

「おいちょっ、待てよ、なんか銀さんに渡すもんあんだろ」

『…ごめん、なーんも持ってきてないわ』



本当は持っていた。
鞄の中のピンクの箱に、ガトーショコラと歪な形の生チョコが。

だけど渡す気にならなかったのだった。


さっきの集まりで、彼女の前にも関わらず散々女共が彼氏を取り合う会話をしたり、バカにしたりしていた。

私の方がお似合いだの、あんな奴付き合わない方がいいだの、お酒が入った場面では私以外の女性と変な雰囲気になっていたりした。

好きにしてくれ


それで平然としているなんて、男って意味がわからない。


そんなことを考えてたら、突然の抱擁に出くわした。


『なに?』

「今日、何の日か知ってっか?」

『もうそんだけもらってんだからいいじゃない。糖尿病になるよ、寸前じゃなくてただの糖尿病になるよ』

「おまえのしかくわねぇし、それで糖尿病になるなら仕方ねぇな」

『私の所為じゃん』

「まぁな」

『…』

キスをして、頭をなでられ、またキスをして

そんなんされたって、さっきの光景が離れなかった。


がばっと彼から離れて、ピンクの箱を取り出して投げつけた。


『それ、神楽ちゃんとあんたと新八くんと定春に。悔しかったら他の女の人と仲良くするの止めなさいよね!仲良すぎなのよバーカ!!!』


そのままお家へ走って帰ったのであった。
家に付くと玄関にもたれ掛かる男がいた

『しつこいな、何でいんの』

「なんで怒ってんの」

『…べつに、怒ってないよ?』

「怒ってんだろ」

そうしたらまだ抱きしめられた。


「なぁ、俺が悪かった」

『ちがうよ…』

「違うことねぇよ、辛そうな顔してる名無しさんを見て楽しんでた」

『最低だな死ね天パ』

「だけどな、こんな銀さんでもする事はするんだぜ?」

『?』

彼はニカッと笑い、チョコを一粒渡してきた。

「食べて見ろよ」

『は?』

「いいから早く」


チョコを口に含み、食べていると中から何かが出てきた。

吐き出してみると、それは指輪だった。


『ねぇ銀ちゃん』

「おう」

『汚い』

「…」

『でも、ありがとう』

「どういたしまして」

はめてみるとサイズはぴったりで、感心した。

「結婚すっか」

『…へ?』



バレンタインの夜にプロポーズ
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夏海さまへ

2012.3.17 ゆらん
 

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