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□大人になりたい
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お風呂から出てきた
髪が少し濡れて、タオルでその濡れた髪を拭く貴方が愛おしくて堪らない

先にお風呂に入っていた私は布団の上に座り、そんな貴方を待つ

「あーさっぱりしたー」

『銀ちゃん、出てくるの遅い』
「まだ起きてたのか、先に寝てろっつっただろ?」

大好きな貴方より先に寝るわけないじゃない、
そんなのは心で思うだけ

何も知らない貴方は髪を片手でゴシゴシしながら、私が座っている布団の隣の布団の上に座る

『別に、いいでしょ』

「はいはい」

私の言葉も適当にあしらう
まるでさっちゃんに対するあしらい方の様に

『銀ちゃん、』

「んー」

『ちゅーして』

「あ?なんでんなもんわざわざしてやんなきゃならねぇんだよ。枕にでもしてろ」

……


私たちはお互いの気持ちを伝えてから一年も経つのにキスすらしたことがない
あるとしたら、ぶっきらぼうに握ってくれる手

一年も経つのに手を繋ぐまでなんて、実は私のことはどうでもいいのではないのだろうか

どうしてそんなに冷たくするのか、私にはわからない
愛おしいと思っているのは、私だけなんだと、気が付いた


『銀ちゃんは、私のこと愛おしいとか思ったことある?』

試しに聞いてみた
答えなんて、わかってるけど


「何急に」

『思ったこと、無いんでしょ。何で私と居るの?』

「そんなのお前…名無しさんの作る飯がうめぇからに決まってんだろ」

『私は、ご飯だけの女なの…?』

「………」

『何でいつも冷たいのっ?私は銀ちゃんが大好きなの、愛おしくて仕方ないんだよ、だからキスだってしたくなるの。だけど銀ちゃんは違うんでしょ?!その気がないならあの時…好きだなんて言わないでよ!』


勝手に想いがあふれ出た
気づいたら沢山喋ってた
気づいたら涙も出てた

涙を拭こうと手を目にやろうとしたら、ぎゅっと引き寄せられシャンプーの匂いに包まれる


「…なんかよ、キスしちまうと怖ぇんだよな」

見上げると、困ったように笑った銀ちゃんの顔が見えた。

『どうして…?』

「…体が、止まらなくなっちまいそうでよ」

『…別にいいもん、止まらなくても!』

「だめだ、名無しさんは子供だから」

『なっ』

「愛おしいからこそ、大事にしてぇんだよ」

『…』

気持ちはわかった気がした
けど、腑に落ちないからぶちゅってしてやった


早く大人に

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