プライベート7

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紫耀くんに「今日の夜2人でここ行かない?」と携帯のあるサイトを見せて貰ってから私の心はずーっと浮かれ気味だと思う。見せてくれた画面には空いっぱいの星空が浮かんでて、あのサップの時に言ったことちゃんと覚えてくれてたんだな、とか。本気で調べて考えてくれてたんだなって。彼の気持ちもまたすごく嬉しくて自然と緩んでしまう頬を隠すことに必死だった。

(みぃちゃんなんかご機嫌〜!なんかあった?)

(え?ううん!なーんもないよ?)

あまりにも私が浮かれ気味だから鋭いじんくんにはバレちゃって。そこで今日の夜のことを言っても良かったんだけど紫耀くんが2人の秘密だからねって言ってたから簡単に教えることはできない。今日の予定は比較的この滞在期間の中でゆったりとしたスケジュールで。アートな街を見てから晩御飯食べて私たちは帰ってきた。そこから紫耀くんとコッソリ抜け出して事務所が借りてる車も拝借して(車借りたいから1人のスタッフさんだけにはコッソリ話したって言ってた)彼の運転のもと星が見れる場所まで移動する。このハワイはどの場所からも星はある程度は見れて綺麗だけど。街灯もあまりない真っ暗な場所に行くとさらに自然界のプラネタリウムみたいにもっともっと綺麗らしい。楽しみだな〜って思いながらも運転する彼を横目で盗めば、紫耀くんも鼻歌うたって口元を緩ませながら運転してたから、紫耀くんも楽しんでくれてたら嬉しいな、ってそう思った。

「お、ついたついた!ここ!」

「誰もいないね」

「ね、ラッキーじゃん!じゃあさ、準備するからちょっと待ってて」

「準備??」

はてなマークを浮かべる私に彼が私の頭を撫でて。それからシートベルトを外すと車から出て行ってしまった。え?置いてけぼり?って思っていたらすぐに開いた後ろのドア。振り返れば紫耀くんはまたご機嫌そうに鼻歌を歌いながらどんどんシートを倒していく。何してるんだろ、と思っていれば「出来た!」とニヤリと笑ってそして開く助手席のドア。

「お姫様どーぞ」

「、あ、りがとう」

彼の差し出された手に自分の手を重ねて車から降りる。本当に街灯がないから真っ暗で。前の車のライドだけが今は頼りだなって感じ。おー、すご、と思って聞こえてくる波の音に目をやればそこには広い海が見えた。そしてそのまま後ろのシートまで連れて行ってもらって座らせてもらう。

「よし、これで完璧」

後ろの席がフラットに倒されて腰掛けられるようになったスペース。小さなランプが一つ置かれてた。そして私をそこに座らせてくれると紫耀くんは毛布を足にそっと優しくかけてくれる。

「寒くなったら言ってね?まだ毛布あるから」

「すごーい、、準備してくれたの?ありがとう」

「いやいや、今からだよ。みぃちゃんちょっと目つぶってくれる?」

「わかった!!」

「いくよ??」

そっと目をつぶれば真っ暗な世界が広がる。紫耀くんが隣からいなくなったのが空気で分かった。聞こえたエンジンが止まる音。そしてまた隣に感じる彼の気配。「いいよ」と聞こえた優しい声にそっと目を開ければ、

「っ、」

声がでなかった。目の前に広がる満点の星空。こんなの今までに見たことがなかった。本当に空が一面あらゆる星に埋め尽くされてる。すごいすごいすごいすごい!!

「すごい!!!!!紫耀くんっ!すごいね!!!!」

「ははっ、すげぇね!」

隣を見れば嬉しそうに笑う彼。本当に見たことないほど綺麗な星空。遠いはずなのになんだか手を伸ばせば届きそうにも思えて。こんな景色きっと日本じゃ見れないんだろうなぁ。ハワイならではのこの自然の広大さに言葉にできない感動が体中を巡っているのがわかる。

「やっばいねー、、」

「うん、、涙でてきた、、」

「わかる、やばいねこれ」

「なんか、うん、なんて言えばいいかわかんなくて」

こんなに素敵な景色をこんなに好きな人と隣で見れるなんて。こんな幸せなことはない。溢れ出す涙を拭おうとすれば紫耀くんの手が頬に優しく添えられて。彼の方を見れば本当に優しい笑顔で私をまっすぐ見てた。

「別にサップのくだりがあったから連れてきたんじゃないよ?」

「、うんっ、」

「みぃちゃんとハワイで星みたいなんて、そんなのハワイ行くってなってから思ってたし」

「、ん、」

「たまたまあそこでみぃちゃんが星言っただけ。てか罰ゲームのお願い事にいうことでもないよ?こんなのお願いになんないじゃん」

「ふふ、だって、これしか思いつかなかったの」

「もー、つーかほら、泣かないで」

「あはは、くすぐったい」

紫耀くんの親指が私の頬をスルスル摩るからこそばくて笑ってしまう。優しく私の涙を拭った彼にありがとうと言えばゆっくり綺麗な紫耀くんの顔が近づいてきて。そして唇に暖かいものが重なる。ああ、だめだ、むりむり。幸せが止まらない。

「・・んー、幸せすぎる、やばいかも」

「ね、幸せだね」

「マジこれなんのご褒美?ちょっと怖くなってくるわ」

「それは今まで紫耀くんが頑張ってきたご褒美!怖がる必要なんてないよ?堂々と貰えるぐらい紫耀くんは頑張ってきたんだから」

「・・・そっか」

「そうだよ?まあ今からもお互いかなり頑張らないといけないけどね?」

「頑張れるよ。だって俺にはみぃちゃんがいるから」

「・・っ、うん、私も頑張れる。紫耀くんがいてくれるから」

大切な人ができると弱くなるという人もいるけど私は逆だと思う。大切で大好きな人がいると人は見たこともない考えられないほどの大きな力が湧くと思う。紫耀くんが隣にいてくれる限りきっとわたしは何にでもなれるし何でも出来る。彼に似合う人になりたいから、彼の隣で堂々と歩きたいから、そして彼を支えたいから。この気持ちだけでどこまでも歩いていける気がするんだから不思議。

「ねぇみぃちゃん、あの星さ、捕まえれるかな?」

紫耀くんが手を伸ばした先にあるのは1番光って見える星。こんなに沢山綺麗に輝く星の中でもさらに一層際立つ一番星。きっとそれは難しいかもしれない。世の中にはこんなのも美しいものがあるから。凄いものが溢れてるから。その中でさらに輝くことは安易なことではないと思う。けどね、紫耀くん。

「わたしね、紫耀くんが出来る!やるぞ!って思ったことは全部できると真剣に思ってるの」

「、っ、」

「だから紫耀くんならあの星、捕まえられるよ」

わたしの言葉に目をパチパチさせた彼。それからフッと小さく笑った紫耀くん。

「うん、そう言ってくれるみぃちゃんの隣にいるから本当にできちゃう気がするんだろうな。じゃあ見ててね」

そういうと紫耀くんはぐーっと身体を起こしてあの星にさらに手を伸ばす。そして、

「いくよ、えい!!!!」

ぎゅっと手を握りしめた。そして私の前にその拳をそっと差し出す。

「ほら、つかまえたよ」

「え?ふふ、この中に?」

「うん、ピカピカのお星様」

そう言って彼が手をゆっくり開くと。そこに入っていたのは見覚えのあるものだった。

「っ、え、な、んで、」

「遠慮なんかしないでよ。したいことはしたいって思ったままに言って欲しい。何もみぃちゃんは気にしなくて良いんだよ」

「ま、って、」

「待たない。俺は待たないし我慢しない。みぃちゃんがしたいこと、やりたいことは全部叶える」

「っ、」

「俺は黙って言うこと聞くだけの賢い王子じゃないから」

紫耀くんの手の中にあったのはあの店で私が見ていたあの指輪。可愛いなって1番気に入ってたけど、意味がある指輪だったから、もし、もしこれで何かあったらって、

「わ、たし、別に我慢したわけじゃ、」

「うん、わかってるよ」

「ただ、その、もし、なんか、」

「うん、知ってる」

彼に迷惑はかけたくない。若くてこれからがある彼に私の存在で落としたくない。それは常にある。無意識に思うことなんだと思う。

「みぃちゃんこのリング見た瞬間すげぇ嬉しそうでさ、目キラキラしちゃって」

「っ、」

「なのに買うのやめるんだもん、俺に何も言わないで」

「、」

「まあ確かに、俺らにはどうしても普通の人よりは気を遣ってしまうことは多いと思うんだけどさ、けど、なんだろ、そんなの取っ払ってマジで俺とみぃちゃんだけの問題だと思ったらさ」

「、んっ、」

「このリング、欲しかったでしょ?」

1番可愛かった。1番キラキラしてた。すごくデザインも素敵だった。けどみたら書かれていたのはbridal ringの文字。紫耀くんに言ったら一緒につけてくれるかな。けど紫耀くんにも引かれちゃうかな。彼には重い気持ちになったらどうしよう。これつけてるとこ写真撮られたら。何かで特定されて意味を大きく取り上げられたら。紫耀くんがそれで仕事上やりづらいことになったら。傷つけられたら。腹が立ったら。ファンを大事にしてる彼のファンを悲しませることになったら。グループの迷惑になったら。じんくん岸くんにも迷惑かかったら。社長にも頭を下げさせることになったら、

「みぃちゃん」

ハッと意識が戻る。目に映ったのはただただ本当に優しく笑って私をみていてくれている紫耀くんと、そして光り輝く丸いリングだけだった。

「っ、うん、欲しかったっ、」

無意識のうちに自分の胸の中に閉ざしていた気持ちが彼によって一気に引っ張られる。そしてそれは涙となっても溢れて止まらなくなる。

「よかった。俺も付けたかったから」

「っ、しょ、くん、」

「付けていい?」

「、うんっ、」

ゆっくり私の左手の薬指を取ってくれた彼はそのままリングをつけてくれた。まるでこの星空から一つ流れ星が落ちてきたかのようにキラキラと輝くそれは私の指にはあまりにも眩しすぎるぐらい光って見えた。

「やっぱり。すげぇ似合ってる」

「紫耀くんも買ったの?」

「もちろん。みぃちゃんがつけて?」

「っ、うん、」

彼の左手をそっと握れば紫耀くんは私にリングを渡してくれた。私のよりも大きいけど同じデザインのリングを指に通す。そうすれば紫耀くんの指も満点の星空みたいに輝いたんだけど、けれども、

「はは、やべぇ、めちゃくちゃ嬉しいね」

彼の笑顔の方が何倍も何倍も輝いていて。それに胸がギュンッと痛くなって思わず紫耀くんに飛びつくようにして抱きついた。

「わ、びっくりしたw」

「ありがとうっ、紫耀くん、」

「うん、つーかいいじゃん。意味あって。なんでダメなの?俺みぃちゃんとしか結婚しないし。つーかマジでするし。別にブライダルリング付けさせて何がダメなわけ?そんなん俺らの勝手じゃん」

「、嬉しいっ、ありがとうっ、」

「・・・もっとわがままになってよ」

「私わがままだよ?」

「いーや、足りない。全然足りない」

「ええー笑」

「あ、これプロポーズじゃないからね?ちゃんとさせてそれは」

「ふふ、うんっ、」

「けど意味はあるから。ここに付ける意味はちゃんとあるからさ。出来れば意識してつけてて」

「、んっ、」

「あとその顔絶対俺以外見せないでね」

紫耀くんの額がゆっくり近づいてきてコツンと私の額にあたる。彼の言葉に顔が熱くなってるからきっと私の顔は今赤く染まってるんだと思う。ああ良かった。暗くて。

「ねえ、紫耀くん」

「ん?」

「私世界一幸せだよ」

「、」

「ありがとう、紫耀くんに出会えて良かった」

「っ、俺も」

今度は私から重ねた唇。紫耀くんは嬉しそうに笑ってくれた。ねえ、紫耀くん。本当に本当に私は幸せものだね。ありがとう大好き。この星空の下でこうしてあなたにこんなに素敵なものを貰えたこの日を私は一生忘れないと思う。それから2人で彼が用意してくれたあったかい紅茶を飲みながらしばらくゆっくり星空を眺めて過ごしていた。真っ暗でも2人で夜空にかざしたリングがとても綺麗で。涙が溢れて止まらない私に紫耀くんはまた優しく笑ってくれたのだった。


星空の下であなたと、


(私このハワイで紫耀くんに色々プレゼントもらいすぎじゃない??)

(そう??)

(うん。お返しに私もプレゼントしたいからなんか買おう??)

(え?その可愛さがもう毎日プレゼントなんだけど)

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