プライベート7
□めりーくりすます
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何歳になっても何回この日を過ごしても私はこのイベントが好きだ。街はキラキラと輝き人々の顔が笑顔いっぱいに溢れる。手を繋ぎ寄り添い歩く恋人たち。本当に嬉しそうにプレゼントを選ぶ我が子を見つける優しい目の夫婦。ゆっくりと歩きながらもしっかりと手は握り合いそして綺麗な景色に頬を緩めるおじいちゃんにおばあちゃん。この季節独特の街の幸せ溢れる雰囲気を感じるだけでなぜか私まで幸せになれるから。だからこのイベントになると心から嬉しくなる。それに今回は私にとっても大切なものでもあって。だって彼の恋人になれてから初めてのクリスマスだから。そういえば去年は名古屋でライブがあった私のところにサプライズでサンタさんが来てくれたんだっけ。あの時にはもうすでに自分の気持ちを誤魔化せられないほど彼への気持ちが大きかったことをふと思い出す。
「ん、みぃちゃん?」
「ふふ、おはよ」
「・・・なに、おきてたの?」
「うん、私の彼氏いけめーんって思って見てた」
「もお、いいってそれはw」
今日からの2日感が楽しみすぎてか今朝は少し早く起きてしまった。アラームが鳴る前に目が覚めたから彼の腕の中でずーっと彼の寝顔を見つめながら色々なことを考えていたけど、どうやら私の熱い視線に気づいてしまったのか紫耀くんの目がゆっくり開いて。それから私を見ると全てお見通しのように呆れたように優しく笑った。
「しょうくん」
「んー?」
「メリークリスマスイヴ!」
「・・めりーくりすますいゔ」
寝ぼけてるからひらがなで聞こえたその言葉に面白くてケタケタ笑っていれば引っ張られてぎゅーっと抱きしめられる。視界いっぱいに広がっているのは紫耀くんの胸。分厚くて筋肉でいっぱいのこの胸の中が今の私には1番安心できる場所になってる。
「なあに?なんじいま」
「ん?まだ8時だよ〜」
「・・・おひめさまはやおきすぎないですか?」
「ふふ、もう少し寝てていいよねぼすけ王子様」
そう言ってふざけてほっぺにちゅーなんてしちゃって、彼の腕から出て起きあがろうとしたのに気がついたらまた一緒にベットにダイブしてた。
「あれれ?」
「・・そんな可愛いこと何処で覚えてきたの」
「紫耀王子に教えてもらったんだけど」
「・・・・おひめさま、きょうのご予定は」
「それ執事じゃんw えーっと、今日はお家でダラダラして〜、飾り付け完成させて〜、紫耀くんお仕事帰ってきたらお家パーティーかな」
「ですよね、じゃあ提案していいっすか?」
「はい、どうぞ」
「・・二度寝っていう案はどうですか」
「・・・ふふ、いいでしょう、もうすこし寝ちゃいましょう」
そう言ってぎゅーっと再び彼に抱きついていつもみたいに寝る体制に入れば、紫耀くんは小さく笑って私をまた優しく包み込んでくれた。もうかなり目は覚めちゃったから紫耀くんが寝たらそーっと抜け出して「ちなみに途中で抜け出すの無しね」抜け出せないみたいなので大人しく寝ることにします。
寝れないだろうと思ってたけどそこから案外すぐに眠ってしまったみたいで次に2人で起きた時は10時前とかになってた。もう起きてもいい時間だとベットからやっと出て2人で並んで歯磨きして髪の毛綺麗にして。で、朝ごはん兼昼ごはんとしてサンドイッチでも作ろうかとパンを焼く。
「今更だけど紫耀くんおにぎり派だからご飯にすればよかった」
「え、なんで?サンドイッチでしょ?いいじゃん、おにぎりよりかはクリスマスっぽくない?」
「いいの?」
「うん、ちなみにだけど俺みぃちゃん影響でパンも結構好きになってきてるからね」
「お、それは嬉しい」
なんて幸せな休日だと思った。紫耀くんは夜からYouTubeの仕事があるから出ないと行けないけど、まだまだ時間はある。だから2人でキッチン並んでゆっくりサンドイッチ作って。こないだ買っといたサンタさんの旗なんか刺しちゃって。オレンジジュース入れて2人で食べて。有名店のパンとかじゃないけどそれでも一緒に作ったものは世界で1番美味しくて。美味しいねって食べあって。食べ終わったらまたベットに入っちゃったりしちゃって、テレビつけたりYouTube見てゆっくり時間を過ごした。
「あ、みぃちゃんかざりつけもしないと」
「ほんとだね、したい!」
付き合う前からなんとなく予想はしてたけどやっぱり紫耀くんもイベントが好きな人なんだと思う。この12月に入ってから私もお店で見つけてきた可愛いクリスマスのオーナメントをつい買ってしまって。家に少しずつ飾っていってたんだけど。
(じゃーん、見てこれ)
(え!可愛い!なにこれえ!)
(めちゃくちゃ可愛いよね、見つけたから買ってきた)
紫耀くんもその感覚が同じで早くクリスマスになんないかなーっなんてワクワクしながら、一緒に飾りを増やしていってくれた。それに今だって部屋の飾り付けも進んで一緒にしてくれるし。
「みぃちゃんこれ歪んでる?」
「ん?えーっとね、ううん!完璧!」
「やっぱこの旗のやつあるといいよね、豪華になる」
「みて!風船も買ったよ」
「おお!!いいね」
2人で満足するまで最後の飾り付けも完成されてそこから今度は最近一緒に買ったスイッチのゲームもしちゃったりして。だいぶゆっくり過ごせて大満足だった。
「お、紫耀くん私そろそろご飯準備する」
「じゃあ俺も手伝う〜」
「え、いいよ?出る準備しておいでよ」
「出る準備ないもん。向こうでメイクするし、なにからする?」
「ありがとう、んーっとね、ちょっとだけ準備したいから〜」
今日はお家パーティーだから昨日だいぶ用意してるんだけど、あともうちょっとだけ下準備の続き。紫耀くんが家を出るまで手伝って貰えばすぐにそれも終わっちゃって。あとは彼が仕事が終わって帰ってくるのを待つだけになった。
「ふふ、がんばれ!しょうくん」
「あー、まじで行きたくない」
私にくっつきながら今から外に出ることをすごく嫌がる彼の背中を苦笑いしながら撫でる。わかるよ、この中途半端に遅い時間の方が出る気なくなるよね。
「頑張れ!ファンの子達にプレゼントあげてきてよ」
「・・それはそうだけど」
「で、帰ってきたら私だけのサンタさんになって」
「・・俺はいつでもみぃちゃんだけのサンタだよ」
重なる唇。こんなにも彼とゆっくり過ごす休日は毎日ある訳じゃないから。忙しい彼と予定が合う日が続くことはない。だからこそ2人でゆっくりできる日のありがたみは身に染みて感じるし。こういうことを当たり前に思わずいつまでも大切にしたいなって思った。あれから駄々をこねる紫耀くんをなんとか見送って私もYouTubeをつけて彼を見届ける。そこには新しい仲間と一緒に笑い合う姿があって思わずそんな彼の笑顔に私までつられて笑ってしまった。2時間ほどで帰れると聞いていたので、それに合わせてどんどん最終的な用意をして。紫耀くんから帰る連絡をもらってテーブルに並べていった。さあ彼が帰ってくるまであと少し。2人のクリスマスパーティーの続きが始まる。すると鳴る通知オン。そしてガチャリと鳴る音。急いで走っていけば「ただいま」と私を見て笑顔を見せる彼。けれどもその格好はさっき見送った姿でもなく、YouTubeで映ってた衣装でもなく、
「っ、サンタさんだああ!!!」
真っ赤な衣装に身を包んだサンタさんが立っていた。びっくりしてけれども嬉しくてガバッと抱きつけばぎゅっと抱きしめられる。可愛い!赤い帽子まで被ってひげ付けてる。
「本当にサンタさん帰ってきた!w」
「言ったじゃん、いつでもみぃちゃんのサンタだよって」
「ありがとう!私のサンタさん!帰ってきてくれて」
いつ着替えたんだろう。向こうで着替えて帰ってきてくれたのかな。今着替えてたのかな。わからないけどこんな素敵でお茶目なサプライズをしてくれる彼の気持ちが嬉しくてぎゅっと抱きしめた。
「よかった、ひかれたらどうしようかと思ってたから若干勝負だった」
「ええ?なんでひくの?すごく嬉しい!そんなことなら私もサンタ着ればよかった」
「なにそれ見たかった」
「ふふ、来年じゃあ着ようかな」
「はい、それ録音しとこ〜、後で言って」
「やだよ〜」
ヒゲがほっぺたに当たってくすぐったくて笑えば紫耀くんはヒゲだけずらしてそして私の頬に魔法を落とす。そのまま2人でくっついてリビングまで入れば彼は持ってた袋をよいしょと下におろした。
「今年のみぃちゃんはお利口さんでしたか?」
「はい!とっっても!」
「お、偉いね。じゃあ紫耀サンタからプレゼントをあげましょう〜」
「ええ!ありがとうサンタさん!」
そう言って紫耀くんが袋から取り出してきてくれた紙袋。それはもう見るからにこないだ話していたある物で。
「え!え!これって!!」
「開けて?」
「!!わー!!!やっぱり!私が欲しいって言ってたコート!!嬉しい!!欲しかったのこれ!」
「うん、知ってる。自分で買うって言ったらどうしようかなって思ってた」
「あはは、うん、買おうとしてた」
「あぶねw」
こないだ紫耀くんとお店で見た時に可愛くて欲しいなって思ってた白のコート。私との会話をちゃんと覚えてくれてる紫耀サンタが嬉しくてぎゅーっと抱きついてお礼を言う。
「サンタさん、私もサンタさんにプレゼント!」
「サンタさんにじゃなくて紫耀くんにね」
「もうなにw 先に言ったのそっちなのにw」
私もコッソリ準備してた。紫耀くんが欲しいって言ってたやつ。寝室に隠してあったプレゼントを取りに行って、彼の元へ急いで戻るとソファーに座ってる紫耀くんはニコニコして待ってくれてた。
「はい!メリークリスマス!あ、それは明日か」
「ありがとう」
「今回すごく良い組み合わせかも!」
「ん?・・うお!!マジ?これあれ?ニット?」
「そー!!!!」
「うお!!嬉しい!!すげぇテンションあがる!」
「ほんと!?よかった〜、これ着て2人とも明日はお出かけデートだね」
「なにそれ最強じゃん」
去年の私なんか夢にも思わなかったんじゃないかな。まさか紫耀くんと一緒にこうして抱きしめあって聖なる夜を過ごそうとしてるなんて。こんな幸せが毎日が来ることは全く予想してなかったと思う。だからどうか教えてあげたい。去年の私に、その前の私に。あなたにはこんなにも私を幸せにしてくれる人とこんなにも素敵な夜を過ごしていることを。あの頃の私に。あの時のもうきっと自分に幸せな日なんてこないなんて考えてしまっていた頃の私に。教えてあげたい。あなたはこの人と出会うために苦労をしているんだよ、と。
「紫耀くん」
「ん?」
「大好き。世界で1番大好きだよ」
「俺も。大好きみぃちゃん」
きっともしまた同じようにしんどくて辛い思いをしても、それを経験しないとこの人に会えないのだとしたら私は迷わず同じ道をまた選んで苦しむよ。それぐらいあなたは私にとって大切で大きい存在なの。サンタさんありがとう。こんなにも素敵な人に出会わせてくれて。
メリークリスマス、
(ねぇ紫耀くん早く食べようよ)
(待って、これやばすぎ。写真撮らないと無理。今度岸くんに自慢する)