プライベート7
□5
1ページ/1ページ
ハワイの地元の雑貨屋さんはめちゃくちゃ可愛かった。ここからは自由行動で紫耀くんたちのところにはカメラが回っていたから、彼らのお店の一軒となりにあった店に社長と入り雑貨を見て回ってた。最初は2人で見てたんだけど、社長がスタッフさんたちに呼ばれたからここのお店にいることを約束して少しの間、私も私で好きに回らせてもらうことにした。海外製ってなんでこんなに全部可愛いんだろう。日本の作りとは違う色合いや形の品々に胸が高鳴る。そうだ、ここでメンバーにおみやげでも買って帰ろうと1人ずつ色々選んでみることにした。クリスマス前だから可愛いクリスマスのオーナメントも多いし。あ、これはきみくんにあげようかな。なんだかお顔がきみくんに似てるって言ったら怒られるだろうなぁ。あ、この可愛いやつは章ちゃんにしよう。章ちゃん好きそう!え、この熊さんなんかたーくんみたい。そうだ斎藤くんにも買って帰ろうかな。なんて真剣に色々と見てたら後ろから肩を叩かれるから社長か紫耀くんかなと思って笑顔で振り返る。
「hello. what are you doing?」
振り返ればそこにいたのは全然知らない1人の若い男の人だった。軽い軽装の彼はきっとここの現地の人なんだと思った。知らない人に声をかけられたから私に言ってるのかな?と驚いて一瞬固まってしまったけど、彼は完全に私を見てニコニコ笑顔を見せてくれている。きっと日本人の私が1人でじーっとここに立っているから困ってるとでも思ってくれたのだろうと思い頭を下げた。
「looking for souvenirs」
「where are you from??」
「I came from Japan」
「oh..I like japan. When did you come?」
「nn.. 3 days ago」
「I went to Japan 3 years ago」
「oh!traveling?」
「ya.tokyo.kyoto」
「Japan is a good place?」
なんだかとても気さくで良い人のようでニコニコ愛想良くどんどん話してくれる彼は聞けば相当日本が好きらしい。日本に何度も旅行に行ったことがあると教えてくれた。だからこそ日本人がいて嬉しくて話しかけちゃったのかな。お話上手な彼と会話は自然と止まることなくて、しばらく彼と話しながらもハワイ育ちらしい彼に現地のことを聞いたり、日本のことを話していたら「you are the most beautiful person I've ever seen」なんて褒めてくれて。お礼を言おうとすれば「This is what I recommend」とどうやらこの店のオススメを教えてくれるらしく、腕を掴まれてそちらに足が進んだその時だった。一瞬の隙にぐっと腰に腕が回って足がピタリと止まる。包まれた匂いはよく知っているものだった。顔を上げればいつのまにか隣には紫耀くんが立っていて、彼は私ではなくまっすぐ前の人をいつもより鋭い目つきで見つめていた。
「Hello、Do you need something for her?」
「oh. There's nothing special」
なんだか紫耀くんも笑ってるけど雰囲気はいつもと全然違うくて。それに驚いて彼の腕を持って声をかけようとしたけど、どうやらその雰囲気を前にいる男性も感じたらしく。私と紫耀くんを交互に見ては、私に「Is it your boyfriend?」と尋ねる。それに「yea」とすぐに答えれば、男性はパッと手を離しにっこり笑うと私に手を振りそのまま去っていってしまった。えー、おすすめの雑貨は?知りたかったんですけど、と思いながら紫耀くんの方を見れば彼はじーっと私を見て顔を顰めてた。え、うわ、すごい怒ってる。
「、っ、え!違うよ!おすすめの雑貨があるって」
「はあ?典型的なナンパじゃん。みぃちゃんってマジで海外行ってもナンパされんの?」
「いやいや今のはそんな感じじゃなかったよ」
「そんな感じしかねぇし。俺見て逃げて行ったじゃん」
「、そ、うだけど、」
「あのね、簡単について行ったらダメに決まってんじゃん」
「ついていってないよ!腕掴まれたか「腕なんか触らせないでよ何してんの?」
「ええ、、だって」
「てかなんで社長から離れてんの?1人でなんでここいるの」
「あ、っと、社長スタッフさんに呼ばれて」
「・・・」
「・・ごめんなさい」
この顔はかなり怒ってる。そらそうだよね。知らない人なのにちょっと信用しすぎてた所もあったし、腕掴まれて無理矢理にでも連れて行かれる可能性がなかったとも言い切れないし。完全に私の注意不足だと思ったから素直に謝れば、私の顔をじーっと見た後に紫耀くんは、はぁと深いため息をつく。そしてそのまま私の腕を引き寄せるとぎゅーっと抱きしめた。え、ちょっと、見てる見てる。みんな見てる。すごい見られてる。
「紫耀くん、まって、すごい見られてる、ねえ」
「いいよ、ここ日本じゃねぇし」
「いや、でも、ねえ、」
「見られたらいいよ。それでみんな知れば良い。みぃちゃんが俺の彼女だって。マジ勝手に声かけてくんなよ、腹立つわ」
ブツブツとずーっと文句を言ってる紫耀くんに、そりゃ私だって、と思った。このハワイで私のいない時に紫耀くんが女の人に声をかけられてるのを遠目で何回も見てきた。その都度笑顔で断ってるけどそれでも彼のニッコリした顔向けられて嬉しそうな女性を見て私だって良い気がしたわけじゃない。でもそんなこと言ったって仕方ないことだから黙ってたし。みんなが好きになってしまうぐらい素敵な人なのが彼の魅力だと理解してるから何か言う必要もないし。きっと今私の肩に顔を埋めてモヤモヤとした黒い気持ちと戦ってる紫耀くんは知らないんだろうなぁ。私だってそんな黒い気持ちと戦ってる時がこの何日間の中でもう何回もあったんだよってこと。
「・・紫耀くんだって何回も女の人に声かけられてたくせに」
「・・・」
「笑顔で手振ってたの知ってるし。一緒じゃん」
「違うよ」
「一緒だよ、私だって嫌だったもん」
「・・・」
「紫耀くんがそんなにも魅力的だってことはさ、嬉しいことでもあるんだけどね?私の彼氏かっこいいでしょ〜?って自慢には思うけど、けど良い気はしないもん」
「・・・ごめんね?」
「うん、ね?大丈夫紫耀くん。一緒だから。私だってその今の黒い気持ち、ちゃんと持ってる」
「、」
「だから紫耀くんだけがそうやって思ってることだけは無いって。それだけはわかっててね」
私を見て目をパチパチしてる彼は少しして意味を理解したのか口元をムッと結んで。あ、この顔は知ってる。照れて恥ずかしい時の顔だ。うん、大丈夫。ちゃんと彼には私の気持ちが伝わったみたい。
「みぃちゃんってさ、マジ俺を嬉しくさせる天才だよね」
「そりゃ私以外にそんな人いたら怒るもん」
「・・ははっ、やべぇ、みぃちゃん敵わねぇw」
にっこり笑った彼にはもう黒い気持ちなんて残ってないみたいだったから、だからぎゅっと彼の手を繋いでそれからさっき気になった雑貨を2人で一緒に見て回った。メンバーにお土産買うことを伝えると紫耀くんも一緒に選んでくれて。そこからじんくんや岸くんも合流して皆で色んなものを買う。さらに近くにあったドトール本店にも入る。これはこれでパイナップル雑貨が多くて可愛い。
「ごめんね、ナンパされてたんだっけ?」
「・・いや別にナンパではないんですけどね」
「紫耀に怒られたわ。ちゃんと見てて下さいって」
「えー?社長になんてことを」
「なんでマジでみぃは紐でも俺につけておこうかと」
「やめて?日本人変だと思われるんで」
「ははw あ、パイナップルとかヨコにも買う?送れるらしいよ」
「え、そうなんですか!じゃあメンバーにも買おうかな」
「そうしよ、俺からも皆に買うよ」
パイナップルも選んで買ってたら向こうからじんくんに呼ばれて。どうやら撮影も終わったらしくて行けばなんかすごい変な人も立ってた。
「わ、何してんの?」
「パイナップルニキ」
子ども用のリュック背負ってめちゃくちゃ笑顔でポーズとってくる紫耀くんに、私も笑いながら写真を撮ればじんくんになぜかそのリュックを差し出される。
「え?w」
「まあまあパイナップルネキでお願いします」
「あはは、わかったw」
私も背負って紫耀くんの隣に立てばドッと皆が笑って写真を撮られまくる。紫耀くんも2人でインカメで写真撮ったりして。(社長がなんだお前らのそのギャップって涙流して笑ってた)美味しい現地のパイナップルも食べて存分にこのお店を楽しんだ(紫耀くんがまた負けたらしい)そしたら撮影が終わったらジュエリーショップに行こうと3人が約束してたらしくて、紫耀くんじんくん岸くんとスタッフさん達から離れてさっきあったお店へと戻る。中に入ればそこにはピカピカ光るジュエリーが沢山あって。美しい品々に思わず目が輝いた。
「うわー、可愛いっ!」
「ここやばいよね!」
「俺なんか買おう〜」
「俺も〜」
「ちょっと紫耀くんあっち見てくるね」
「はいはーい」
女性物のコーナーへ向かえばそこにキラキラ輝くたくさんの物。うわ、綺麗。やっぱりこういうキラキラした物を見るとテンション上がるよなぁ。こういうとき女の子だなって思うよね。せっかくハワイに来たし私もなんか思い出に一個は買おうって思って色々見て回る。可愛いなって思ったのはやっぱりハワイだし星とか月とかをモチーフにしたネックレスとかリング。あ、ブレスレットも可愛い。普段つけないけどこれを機につけてもいいかな。うわー、どうしよう。
「This is also popular」
「、っ、可愛いですねっ、」
悩んでる私を見かねてお店の人が指さしてくれたのはこのお店で1番人気の物らしい。確かにすごく可愛いしハワイ感もあるし柄も可愛いし素直に欲しいなとは思った。けどそれにはちゃんとブライダルジュエリーって書いてあるからちょっとそれだと意味を含めすぎちゃうよなぁなんて思いながら軽くその指輪を断って別の指輪に目を向ける。プルメリのお花の指輪も可愛いなぁ。んー、これにしようかな。
「なーに見てんの?」
「ん?これ、可愛くない?」
「可愛い、みぃちゃん好きそう」
「紫耀くんは何か買うの?」
「うん、買う。これ見て?」
そのまま彼に連れられて向かえば紫耀くんの好きそうなやつをもう何点か選んでたみたいで。いっぱい買うんだなと思ってたら岸くんが「すげぇ買うじゃん」って同じようにつっこんでた。
「3人でお揃いするの?」
「皆が俺の真似したの」
「え、可愛い、、3人お揃い可愛い・・」
「みぃちゃんもお揃いしようよ〜4人お揃い」
「いやいやそれはさすがに烏滸がましいよ」
「いやダメだよ、2人とみぃちゃんが同じ物つけてるって考えるだけでムカつくから無理」
「はあ?なんだあいつ」
「みぃちゃん俺とペアリングしよー?」
「する?」「じん殺すよ?」
「こっわ」
3人でブレスレットも買うらしくて、お揃い可愛いなぁ。後で3人の写真撮ろうと思っていれば背中に感じる温もり。顔を上げれば紫耀くんが後ろから覆い被さっていた。
「みぃちゃんが本当に欲しかったのさっきのリング?」
「え?うん!あとね、ピンキーリング好きだからそれも買う!」
「ふーん、そっか」
そう言った紫耀くんは「俺も一個みぃちゃんに買おう〜!」と私の指に色々リングをつけて選んでくれて。そして1つの可愛いリングも選んで買ってくれた。あまり派手すぎない私の好みの可愛いやつ。紫耀くんって本当に私のことよくわかってるよなぁと改めて感じながらもさっそく買ってすぐにつけたリング達に私の指が一気に可愛くなって気分は上がる。
「みてみてー!」
「うわ!可愛い〜!!写真とらせてー!」
「うん!紫耀くんが買ってくれたの!」
「ええ、俺も買ってあげたのに〜」
「ほんと?じゃあまた買ってね♡」
「ずきゅん!!ったあ!!!なに!?!?」
「なんか腹たったから」
「いや意味わかんねぇし」
紫耀くんとじんくんのやり取りもなんかお決まりになってきたよねと思いながら2人ではしゃぎあってるのに可愛いなぁと思いつつ。紫耀くんにありがとうと手を見せてお礼を言えばどういたしましてと優しく笑ってくれた。
「えへへ、可愛いな〜!!」
「そんな喜んでくれたら紫耀の財布の紐も緩むな」
「えー?今回は社長にも紫耀くんにも良い物買ってもらっちゃった〜」
「よかったね〜」
車に戻って社長に指輪を見せつつ出発するのを待ってたらノックされる窓。見れば紫耀くんがニコニコして何か持ってて。それにドアを開ければ「お邪魔しまーす」と私の隣に腰掛ける。
「はい、これココナッツジュース」
「わー!ハワイっぽーい!」
「飲んだことある?」
「ない!」
「飲んでみ」
「・・・え、まず」
「あはは!だよね!うまくないのよ!」
「え、じゃあなんで飲ませたの?」
美味しくない物をなんで飲まされたかは分かんないけど私の反応にすごく楽しそうに笑う紫耀くんに、まあこんなに紫耀くんが笑ってるならいいやと思って彼の肩に頭を預けて手をかざす。
「かーわいい」
「ね!すっごく嬉しい!紫耀くんからのプレゼント〜!」
「さっきからずーっと見てニヤニヤしてたよ」
「ねえやめて?なんでバラすんですか?」
「えー、めちゃくちゃ可愛いじゃん、なんでも買っちゃいそう」
別に物がなくてもこの楽しい記憶だけで本当に素敵な思い出になるけど、こうして物としてこれからに残ると思うと嬉しくて仕方ない。私はこのリングを見るたびに紫耀くんとの楽しいハワイでの時間を思い出すんだろうなってそう思うの。
「ふふっ、しーあわせ!」
「・・何よりだわ、マジで」
ずーっと紫耀くんにくっつきながら自分の指を見てたから気づかなかった。社長も紫耀くんも凄く凄く優しい顔で私を見てくれたことも。2人が最近の疲れていた私を凄く心配してくれてたからこそ安心してくれていたことも。でも私は今自信を持って声を大にして言えるよ。私は幸せだって。しんどいことも多かったしこれからもあるけれど、けどこんなに幸せなことがあるならなんでも頑張れるんだって。今日夜にでも大好きなお兄ちゃんたちに送ろう。とっても今楽しいよって。そんなふうに思っていた私に社長が今の私を撮ってきみくんにもう送ってくれていたことを知るのはずっと後の話だった。
幸せで幸せで消えてしまいそうだ、
(ふふふ〜ん)
(・・・かわいい、無理すぎる・・)
(ほんとバカップルだな)