プライベート7

□遅れた夏休み
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単純にびっくりした。紫耀からこの話を聞いた時にすぐに受け止められなかったぐらい驚いた。まさか彼からあの子の名前が出てくるなんて思いもしなかったから。だから彼女の話題が出て俺もその懐かしい名前にすぐに会いたいってなって予定を合わせ早くに会うことができた。思えば彼女とこうして顔を合わせるのはかなり久しぶりになる。最後に会ったのは俺らの最後のステージの上でだったっけ。そこから今まで色んなことがあったからあっという間に時はすぎたけど久しぶりに彼女と会ってもあの頃のみぃの全ての魅力は何も変わってなくて、それよりもさらに一つ一つの彼女の全てに磨きがかかっていた。紫耀の隣で少し恥ずかしそうにはにかんで挨拶をしたみぃに、本当にこの2人がと驚いたけど、けどすぐになんでこの2人がこうなったのかも分かった気がしたし、2人が並んでるのを見て素直にお似合いだと思った。

(え、もうメンバー知ってるの?)

(うん、1番に伝えました)

(うわー、ヨコとか大丈夫だった!?泣いたんじゃない!?)

(泣いてないよ笑 ちょっと最初は人見知りをかなり発動してたけどw)

(想像つくわ!怖いお兄ちゃん達いて紫耀も大変だな)

(めちゃくちゃ緊張しましたよ笑)

今度ぜひともヨコとヒナとゆっくり話したいと思った。彼らが本当に冗談抜きでこの子をどんだけ大切に育てて守ってきたかはあの頃同世代の俺らが1番よく知ってる。あらゆる自分たちよりも強くて力のある大人からも必死に彼女を守っていたんだ。あの頃細くて自分の足で立つことも精一杯だった少年たちが。そんな彼女がこんなにも世間でも誰からも認められたアイドルになって、そして彼女にとって大切な人ができたなんて。きっと言葉では表せれない感情になることは察する。

「おー、こっちこっち」

「ごめんなさいっ、わざわざ社長さんがお迎えすみませんっ!」

「おいやめろww それいじってるだろw」

「え、でも事実だよね?w」

「そうだけどさ。てか逆にごめんね、ほんと予定大丈夫だった?」

「バッチリ大丈夫!誘ってくださってありがとうございます!」

「結構強引に最後誘ったからさ」

「あ、自覚ありですか?w」

「うんww」

「自覚あってよかったです笑 きみくんにも連絡くれてたよね?ありがとうございます」

「今度会おうって話しただけだよ」

空港に迎えに行けばそこにいた彼女はやっぱり周りの人間が振り返るほど特別だった。なんなんだろな、昔から彼女の周りは輝いて見える。サングラスかけようが何しようがこのオーラは隠せないってよくすばるが嘆いていたっけ。あの頃俺らの中で彼女は異例も異例で。だからこそすげぇ目の敵にされて誰からも受け入れられなくて。正直俺から見える範囲の中でも、言葉を選ばず言えば嫌われて憎まれてとことん大人達に嫌なことをされ続けていた子で。俺だって最初は女の子を入れると言い出した社長に何考えてんだって思って、そんな甘い世界じゃないんだよここはと受け入れてなかったかも知れない。けれどもそんな考えは彼女と一緒に過ごせばすぐになくなるほど、野原みぃという人間は知れば知るほど魅力にハマっていくそんな人間だった。人に文句を言わせないほどの才能に当時から溢れていたし、けれどもその才能には必ず努力もついていた。だから俺も素直にみぃのことを応援したいって思ってたし、関西ではちゃんとあのうるさいお兄さんたちが守っていたから。だから東京に来た時には今度は俺が守れるように。俺の目の届く範囲では決して彼女が苦しむことはないようにしていたつもりだけど、それでも守れることなんてあの頃の俺には小さくて。できることも少なくて。だから悔しい思いもしてきたこともある。それでも彼女の努力と根性が実を結んできて、今では誰もが名を知るほどのアイドルになったことをすげぇ嬉しく思ってる。今だにみぃの話題をテレビやネットで知ると嬉しくて保存するほど、俺にとっても彼女は大切な存在だ。

「よかったよ、来れて」

「あ、ありがとうございます」

彼女の荷物を手に取って乗ってきた車に案内した。運転してたスタッフも昔あの事務所にいた人だからみぃもよく知ってて。うわー!!と久しぶりの再会に目を輝かして握手している彼女に俺の頬も緩まる。

(いや気持ちはめちゃくちゃ嬉しいけど私は大丈夫です)

(なんで?やっぱり忙しい?)

(滝沢くんも紫耀くんたちもみーんな今新しいホームができて一生懸命頑張ってるでしょ?だから私がちょっとでも邪魔になる可能性があることはしたくないです)

(邪魔になんかならないよ?)

(もし私が映ってしまって、何か批判されたら?)

(いや俺らのカメラワーク技術なめんなよ?)

(・・でも)

(そこは俺らを、ていうか俺を、信用してよ。別にみぃに迷惑かかることはしないし)

(いや私は)

(本当にここずっと色々と大変だったでしょ?)

(・・・)

(みぃも楽しい夏休み過ごして欲しいっていうさ、俺の我儘だけなんだよ。悪いようにはしないから。だからさ、ね?)

(、っ、ありがとうございますっ)

俺があの事務所を離れてすぐに色んなことがあった。見るからに事務所はバタバタして本当に大変そうだったし。きっともう事務所の中でも上の地位になっている彼女らのグループは特に大変だったんだと思う。ジュニアの育成にも手を貸してくれてたみたいだったし。それに個人的にも社長のことが大好きなみぃだったからこそ、今回の件は余計に苦しんだことが想像できる。俺も紫耀を通して彼女が心配で様子を聞いていたけど、話を聞くだけでもなかなか大変そうだった。だからこそ今回このハワイでの撮影案が出た時に、俺の中では予定が合えば彼女も絶対に連れていこうとずっと考えていた。みぃのことは健くんもよく知ってるし。北山も大倉つながりで仲がいいと聞いたことがある。スタッフ達に言えばみんなよく彼女を知ってる人も多いからいいんじゃないかって(みんなあの事件でみぃを心配してたから)とりあえずメンバーで健くんだけには彼女のことを相談したけど、それはめちゃくちゃいい案だと1発オッケーだった。俺も昔からみぃのことはよく知ってるから(なんなら紫耀よりも俺との方が付き合い長いしね)メンバーが撮影の時は俺とゆっくりカメラから離れたところでハワイを楽しんでもらえればいいやと思った(別に俺がみぃと過ごしたい訳ではないから。いや8割その気持ちもあるのは嘘じゃないけど黙っとこう)けど普通に来てもらっても面白くないからそれはあの子達には内緒にしてもらった。まぁ紫耀にサプライズしたいっていう気持ちが大きかっただけなんだけどね。だからみぃには申し訳ないけど後から遅れてハワイに到着してもらうことにした。俺らはハワイ着いてちょっと散歩して。みんなで夕飯食べてもうだいぶ初日の絵も撮れたからってカメラも撮り終えた頃、俺らは空港からちょうどホテルに着いていた。彼女と一緒にそーっと現場に入ればまだまだガヤガヤと残りの食事を楽しむメンバー。だからみぃにはそのまま中に入らず外のテラスで待ってもらうことにした。俺が現場に帰れば分かってる健くんだけがこっち見てニヤニヤしているから俺もニヤリと笑い返して外を指差せば、健くんはそーっと席を外してテラスへと向かって行った(悪いな、反応見ようとしてるな)

「あ、紫耀。ちょっと紹介したい人がいるんだけどいい?」

「・・・・え?なんすか」

「俺の女」

「っ!!!・・・・はい???」

俺の言葉に飲んでたジュースを吹き出してびっくりしてる紫耀と、俺の言葉が聞こえた何人かは口を開けて固まっている。とりあえずまずは紫耀だけを外に呼んでテラスに座って飲み物を飲んでもらってた彼女にそーっと2人で近づいた。

「あれ見て。めちゃくちゃいい女なんだよ、どう?」

「・・え?・・っ、え??え?いやいや、ええええ?」

多分情報が追いつかないのか紫耀は俺の隣で何度も何度も彼女を見て。それから向こうで紫耀の反応にケタケタ嬉しそうに笑ってる女の子にやっと意味がわかったのか、膝から崩れ落ちて叫ぶ紫耀に、どっと知ってた周りの人間が笑う。めちゃくちゃ動揺してる紫耀に俺も笑いすぎて涙が止まらなくて。振り返れば健くんがバッチリとカメラを向けていて、紫耀の良すぎる反応にスタッフもみんな涙流して笑ってた。

「どした?紫耀ww」

「いやいやいや待って待って!意味わかんない!!」

「ほらあれどう?w めちゃくちゃいい女じゃない?」

「いやww そうっすね、それはガチのいい女ですけどww 」

「でしょ?あれ俺の女なんだけどさ」

「いや違いますよ社長。あれ俺の女っす」

なんだその台詞。今の言葉かっこいいなって思ったけど、大きな声で「なんでぇ!?!!」とみぃの方にやっと走って行った紫耀と嬉しそうに紫耀に抱きついたみぃに、思ってたよりサプライズが成功してニヤけが止まらない。紫耀の大声に次々外に集まり出したメンバーもみんな彼女が誰かわかると驚いて集まってきて。

「なんでww マジねぇ!!何してんの!!ww」

「うん、タッキーがYou来ちゃいなよってw」

「いやいや、それややこしいな!!ええ!!朝のあの見送りはじゃあ何!?」

「大変だったよ〜?バレずに荷造りしないといけなかったから」

「マジか、、!!ええ、、!!!」

「え!?みぃちゃん!!!!みぃちゃん!?なんでえ!」

「あ、じんくんあのさ〜、こないだ言ってた美味しいパン屋さんあるじゃん?」

「むりむりむり!!!やめて、普通に東京で会った時のトーンで話すの!!!!」

この後はもうドンチャン騒ぎだった。みぃも連れてきたかったことをメンバー皆に説明するとみんな一つ返事で受け入れてくれて。そこからはマジでこいつら皆彼女に興味があるんだなって分かるほど一気にみんなみぃを連れて中に入って行ってしまって(健くんが率先して引っ張って行ったんだけど。紫耀がいきなりみぃを取られたことに1番びっくりしてたわ)あっという間にチームの輪の中でみぃは楽しそうに笑ってた。その笑顔はつい最近テレビで見た少し疲れてる顔とは全く違ってて。やっぱ連れてきて良かったなと思っていると紫耀が離れてスタッフ達と座っていた俺の隣に腰掛ける。

「ちょ、社長やばいっすよ!!マジでびっくりしましたw」

「でしょ?俺からの紫耀へのサプライズ」

「こんなことあります?w」

「あの子すげぇ断ってたんだけどさ。自分は関係ないって。俺らに迷惑かけたくないって。けど俺はどうしてもこのハワイにみぃも連れて行きたくて」

「・・」

「ちょっとゆっくりして欲しくて。日本ではゆっくりできないじゃん?だから絶対映さないっていうのを条件でやっと首振ってくれて」

「・・そうですか、」

「うん、だから撮影止めたらみぃと存分に遊んでくれていいからね」

「・・・ありがとうございますっ」

「撮影の間は俺がデートさせてもらうけどね〜」

「はは、まじすか」

昔から彼女は人を見る目がよくあると思ってた。なぜだかその時に世間が目につけてる目立つ人と彼女は接点を持つことが多い。世間はみんな人の噂を真にうけてしまうことが多いと思う。けどみぃの凄いところはどんな人も自分が見て感じたことしか信じないってところ。それは簡単にみんなができることじゃない。

(みぃどした?)

(仁はそんな人じゃない。なんであの子が悪く言われないといけないかわからない)

だからあの頃から赤西とか亀梨とか。山下、錦戸って彼女の周りには目立つ奴らが多くいた。けれどもそれはみんな容姿じゃなくて、中身をちゃんと受け止めてくれる彼女の器のデカさに惹かれて自然と集まっていたと思う。そしてみぃの考えや言葉に救われてあの頃のあの時代の奴らは頑張ってやってこれてた。社長がよく冗談で言ってた「みぃと一緒にいる子達はどんどん売れていくんだよ」って言葉はあながち俺は間違いではないと思う。彼女の支えがあればどんな奴らでも自分の力を出し切ることが出来てたから。だからこそ今再び時代が回っても彼女がこの平野紫耀という人間の隣にいることに多いに納得してしまうのは、あの頃を知ってる奴らからしたら当たり前なんじゃないかな。

「みぃは本当に太陽みたいだね〜、いるだけでみーんな笑顔になる」

「、そうっすね」

「俺が保証するけど、マジでいい女捕まえたよ」

「、はいっ、勿体無いぐらいです」

その言葉をはにかみながら話す紫耀の肩を思わず叩いたのはあのご飯会でポツリとつぶやいたみぃの顔とかぶったから。

(大丈夫?紫耀で)

(はい、私には勿体無いぐらいですっ、)

なんだよ、錦戸の時も思ったけどまたか。みぃってやっぱ凄いな。こいつら太い赤い糸で結ばれすぎなんだって。

「紫耀くーん!みてみて!」

「お、呼ばれてるよ〜」

「はい、行ってきますw」

紫耀の隣で本当に幸せそうに笑うみぃに心から幸せでいてくれと願った。君の幸せを願うやつらは多いんだよ。こんなに今楽しそうに笑ってるあの姿を俺は見せたいやつが大勢いる。とりあえず横とヒナにこの写真を見せてやるか。きっとあの2人も同じように喜ぶ、いや俺以上に喜ぶだろうから。今回のこの旅が彼女にとって楽しい幸せな旅行になりますように。こうして再び彼女と深く関わるようになったのも何かの縁だから。だからこそ俺はまたこの子のためならどんなことでもすると誓ったのだった。


彼と彼女の夏休み、


(社長さ、マジこれはやったね、めちゃくちゃ面白かったわ)

(全部知って知らんぷりしてる先輩が1番こわいよ)

(俺とみぃのデートの時間も作ってよ)

(それは紫耀に交渉してくださいよ)

(よし、先輩の権力つーかおう)

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