プライベート7
□初恋にはホイップクリームを乗せて
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「ふふんふーー!どれにしようかな〜!!」
さあどれを着ていこうか。どの服にしようか。さっきからクローゼットからあらゆる服を出して1人ファッションショー状態。こないだ買ったワンピースにしようかな。いやでもズボンも可愛いやつあったなー。スカートだと動きにくいかなー、なんて。色んなこと考えながら鏡の前でクルクルまわって動いていたら「ねえ」と後ろから声が聞こえた。あ、1人ファッションショーじゃなかった。お客さんいたみたい。振り返ればじとーっとしたなんとも言えない目で私を見ている紫耀くん。
「・・・」
「・・ん?なあに?その顔」
「嬉しそうに服選んでる彼女めちゃくちゃ可愛いなって気持ちと、俺と2人のデートじゃないのにこんなにはしゃいでるのも複雑だなっていう気持ちが戦ってる」
「明日から楽しみだな〜!!嬉しいな〜!!」
「聞いてないし!!!」
今回またまた紫耀くんとじんくんと一緒にお出かけすることになった。以前3人でドライブした時もすごく楽しかったけどまさかこんなにまたすぐにお出かけできるとは思ってなくてテンションが上がる。それに今回は国内ではなくて海外でしかもお泊まり旅行。紫耀くんいわくじんくんとも予定があったしインスタ用に写真も撮りたいからどうせなら国外行っちゃう?となって今回の日程が決まったらしい。だから撮影係として紫耀くんのマネージャーさんのたっくん(田村くん)も一緒に行くらしくて。それを聞いていいなーと思ってたら恐る恐る彼に「みぃちゃんはちなみに空いてる?」と聞かれて斎藤くんに聞けば私もスケジュールが調整できることになって。そこから一緒に参加する事になったから気持ちは最上高で楽しみで仕方ない。
「ねえ、コロコロさんでいけるよね?」
「・・ん?コロコロさん?」
「ほら、こういうやつ」
「・・・え、キャリーバックのこと?」
「そう!それ!!」
「いやコロコロさんってw」
「だって名前覚えれないんだもん、、」
「なんでやねん。てか荷物一緒にしようよ。俺そんな無いからまとめて入れて俺持つよ」
紫耀くんは確かに私よりも大きなコロコロさんを持ってたからそのお言葉に甘えて私の荷物も一緒に入れさせてもらう事にした。そういえば昔からメンバーに言われてきたけど私は周りの女の子に比べて荷物が少ないらしい。でも日用品と替えの服と携帯とお金があれば最悪どうにかなるって思っちゃってるからあんまり持っていく必要性を感じないんだよねと言ったら「お前は男か」ときみくんにつっこまれたっけ。そしてきっとだけど紫耀くんも人より確実に荷物が少ないと思う。え、てかこの人この量で海外行こうとしてるの?いやいいんだけどいいんだけど少なすぎじゃない?そう思って聞いてみれば「携帯とお金あればどうにかなるっしょ」と返されて何も言い返せなかった。うん、私よりもすごい人いた。だからなのか2人の絶対持っていきたいものを鞄の中に入れても余裕で入ってまだ隙間があるほどになったので2人して顔を見合わせて首を傾ける。
「あれなんか忘れてる?こんな荷物ない?」
「紫耀くんが少なすぎるんだよ」
「いや女の子ってもっと荷物多いんじゃないの?」
「・・・誰と比べたの」
「え?」
「・・ううん!ほんっとうに楽しみだね!今日寝れるかな」
「やめてやめていきなり可愛い発言ぶっこまないで」
「痛い痛い、紫耀くん私潰れるw」
ぎゅーっと抱きしめられたけどその力が強くて思わず笑ってしまった。けどそのままなかなか離してくれない彼に不安になって名前を呼んでも腕の力は緩まない。
「・・・じんと遊べるからそんなに喜んでるの?」
「え?」
「まぁたみぃちゃんの可愛いところじんに見られるの嫌すぎる・・」
さっきからブツブツと言っている紫耀くんは自分から私を誘ってくれたのに何かしら思うことがあるみたいで。そんな彼の隣に座り彼の腕に頭をそっと預ける。ああわかってないなぁ。そりゃ確かにじんくんのこと好きだからまた一緒に楽しい時間を過ごせるのは嬉しいけどさ。
「そりゃじんくんのこと好きだから嬉しいよ」
「は?好き?」
「だって紫耀くんの大事な友達だから。紫耀くんが好きな紫耀くんの友達のことは私も大好きだもん」
「・・・」
「楽しみなのは紫耀くんと初めて海外に一緒に行くから、紫耀くんとお出かけできるから。紫耀くんが友達と楽しそうに笑ってる姿が近くで見れるから、かな?」
「っ、」
「インスタ用の写真もたくさん撮ってあげるから任せてね」
「いい。それより俺との2ショット撮る方を頑張って。インスタ任せるのはじん達でいいから」
「わかった!じゃあ2人でいっぱい撮ろうね」
それから2人で荷造りして早く寝て。次の日飛行機が早いから朝早くから起きて紫耀くんと最後の支度をして彼が髪の毛を整えてるうちにキッチンで朝ごはんを作る。
「おまた〜、かわるよありがと」
「・・・かっこいい」
「え?」
「紫耀くんかっこいい、、服にあってる〜!」
「・・え、ありがとw」
「どうしよう、こんなかっこいい人の隣歩けるかな」
「いやこっちのセリフだわ。そのワンピース俺が好きなやつじゃん」
「うん、紫耀くんが前に褒めてくれたやつにしたの」
「可愛いすぎるやろ。いやなんで今日2人じゃないん・・え、じんとたっくんに断ろうかな」
「やめてあげて。それは絶対やめて」
毎度毎度彼と目が合うたび彼を視界に入れるたびに私は胸が高鳴ってしかたない。かっこいいって体中その言葉しか出てこないほど熱い気持ちが溢れるのはきっとこれから先もずーっと続くんだろうなって思う。服だってシンプルな服装だけどそれでも様になってまるで今から雑誌の撮影でもするのかってぐらいかっこいいし。こんなかっこいい人の彼女になれたなんて私って奇跡というか恵まれてるんだなと真剣に考えてしまうほど。
「ちょっと。何考えてんの」
「ん?」
「なんかいま違うこと考えてたでしょ」
「私の彼氏どこまでかっこいいんだろーって真剣に考えてた」
「なんだよそれw」
ぎゅーっと後ろから抱きしめられてそのままあごに手を添えられて上を向かされれば、視界は紫耀くんでいっぱいになって。彼以外何も見えなくなる。そんなことされなくても私はこの人しか見えてないんだろうけど。
「約束して欲しいんですけど」
「ん?」
「俺以外に懐くの禁止ね、特にじんと仲良くしないで」
「りょーかいです」
「あとあんまり可愛すぎると我慢するの大変だから、ちょっと抑えめでお願いします」
「・・はーい」
「「・・・」」
「しょーくん」
「ん?」
「ちゅーしてくれないの?」
「っ、ちょ、絶対わざとじゃん」
重なる唇。何度も何度も重なるそれにお互いの身体が一気に熱くなるのが分かる。気がつけばソファーの上に倒れてて私の上に乗っかる紫耀くん。ゆっくり離れたそれに2人で至近距離で見つめ合うこと数秒。
「・・・どうしよ、止まんない自信しかない」
「だぁめ、もう時間ない」
「・・ええー、ちょっと遅らすのは無理?」
「あはは、今日は飛行機があるからね」
「・・・」
「服もぐちゃぐちゃになるのやだもん」
「・・・」
「こーら、やめてそんな可愛い顔するの」
紫耀くんはきっとこの顔に私が弱いことを知っててやってる。本当にそういうところは狡賢くて狡い人。けど今日は私だけの旅行じゃないし飛行機もあるから絶対に遅刻は厳禁。最後に彼のほっぺたをむにゅっと掴んでとがった彼の唇に魔法を落とせば彼はムッとした顔でこちらを見てくるから、このギラリとした瞳はやばいと思って逃げようとしたけれども。それよりも紫耀くんが私の足首を捕まえた方が早かった。
「きゃっ、」
「じん達がいるから俺が何にもしないと思ったら大間違いだから」
「っ、ちょっ、」
「さ、用意しよーっと」
「っ、紫耀くん!!!!!」
彼の唇が私の太ももの付け根に強く当てられたのを遮るほどの力が私にあるわけない。ちくっと感じた痛みに見れば赤い花がギリギリの場所にしっかりとついていて。一気にそれを見て顔が熱くなるのがわかった。けれども紫耀くんはしてやったり顔でもうコロコロさんを触って最終的な準備をしてるからたまったもんじゃない。くっそー、、やられたぁ。そう思いながらも悔しくて荷物を触る彼の背中に飛びついたのだった。
「みぃちゃーん、、いる?」
隣から小さく聞こえた声。目をやれば通路を挟んだ向こう側から伸びてくる手。見ればじんくんが私にお菓子を差し出してくれてた。それに「ありがとう」とそーっと隣にいる彼を起こさないように空いてる方の手を差し出す。少し当たってしまった気がしてビクッとしたけど、ゆっくり彼を見てもスヤスヤ聞こえる寝音が途切れることなく続いてるからホッと胸を撫で下ろした。そんな紫耀くんを覗き込んで確認したじんくんはにっこり笑っている。
「紫耀爆睡だね」
「実は楽しみすぎて寝れなかったんじゃないかな」
「なんだそれ可愛いな」
「ふふ、だよね。じんくんとの旅行すっごく楽しみにしてたもん」
「忙しくて今までゆっくり旅行なんて行く暇なかったもんな」
「楽しみだね!私シンガポール初めてなの」
「俺も!だからめちゃくちゃ楽しみ」
にっこり笑顔のじんくんが可愛くて、本当だねと返しながらも貰ったお菓子をポリポリ食べてたらじんくんに名前をまた呼ばれてカメラを向けられる。だから眠ってる紫耀くんを指さして笑顔を向ければクスクス笑った彼はシャッターを何枚か押してくれた。
「今日2人の写真係は俺に任せて」
「いやいや逆!2人のインスタ用の写真係任せて」
「えー、俺もう紫耀に頼んだって言われてるよ」
「あはは、なにそれ」
「紫耀ね、俺との旅行というよりみぃちゃんとこうしてお出かけできるのがめちゃくちゃ嬉しいんだと思うよ」
「え?」
「俺もたっくんもみぃちゃんとあんまり喋んなってこないだから結構ガチめに言われてるからね」
「そうなの?笑」
「うん、だから俺らのことは忘れて紫耀と楽しんでね」
本当に優しい人だと思う。じんくんと今まであんまり話すことは無かったけど、こうして遊んだりお話しする機会が増えてから心から感じる。この人のこの海のような広くて大きい心の優しい所に紫耀くんはきっと惹かれてるんだろうなって。前にポロッと彼が「じんは本当に優しいんだよね」と言っていたけどその通りだと思った。彼は表立った目に見える才能ももちろんある人だけど、それだけじゃなくて決して目には見えない所でも人を支えられる芯の強さを持った人だと思う。だから昔からこの優しさと心の広さで紫耀くんやグループのことを支え続けてきたんだろうなぁ。縁の下の力持ちという言葉がじんくにはぴったりな気がする。きっと今だって私が気を使わないようにこっそりと彼が眠っている間に伝えてくれたんだと思う。
「ありがとう。でもね、本当に私も紫耀くんも、じんくんと旅行できることも楽しみにしてるんだよ」
「っ、」
「本当は2人の楽しい時間を私が邪魔するのも申し訳なかったんだけど、、、ちょびっとだけ私もお邪魔させてね」
「・・・マジでみぃちゃんやばいっすね」
「ん?」
「もう俺どんどんみぃちゃんにハマってっちゃう」
「あはは、ほんと?嬉しい」
「はーー、、やばい」
そんなこと言って2人でヒソヒソとお喋りに花を咲かせていたら、もうすぐ到着するというアナウンスが機内に響いたので2人で準備する。するとやっと紫耀くんもアナウンスの声に反応したのか、周りのザワザワとした着陸準備が耳に届いたのか眉を顰めて少し反応した。それに起きたかな?と彼を見ていればパチパチとゆっくり開いた瞼。眠たそうに何度か開けて閉じてを繰り返して私に視線を向けた。
「あ、起きた」
「んーっ、、」
「もうすぐ着くよ?」
「・・・・どれぐらい寝てた?」
「ちょっとだよ?30分も寝てない」
「えー、もったいな。起こしてくれたら良かったのに」
そう言ってずっと繋いでた私の右手をぎゅっと握ってそのまま自分の頬にもっていく紫耀くん。そんな彼に私も顔を少し近づけて「可愛い寝顔起こすの勿体無いんだもん」と言えば「なんだそれ」とつっこまれた。
「ふふ、楽しみだね!天気良さそうだよ?」
「ん、楽しみ」
窓を覗けば見えてきている綺麗な景色に胸が弾む。どんな旅になるかはわからないけど、大切な人と大切な友達と一緒に過ごすんだからきっと最高になるにきまってる。こうしてゆっくりと旅行して時間を過ごすことは珍しいからワクワクが止まらない。
「みぃちゃん、楽しもうね」
隣でにっこり笑う彼に頷いてその手をぎゅっと繋いだ。どうか紫耀くんもじんくんも心穏やかに楽しめる日になりますように。彼らの頑張りが報われるように幸せなことがこの地でたくさん起きますように。そう願いながら今からの時間にワクワクが止まらなかった。
初恋にはホイップクリームを乗せて、
(やべ、まだ眠い)
(ふふ、着いたらちょっと寝る?)
(絶対やだ。その間にじんと遊ぶの目に見えてる)