プライベート7

□君がいれば僕は無敵のヒーローになる
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「わ、え、マジで!嬉しい!!!!」

「・・・」

今日は2人でこれから新しい道を歩いていくっていう報告をファンの皆にさせてもらった日。コツコツと水面下でずーっと準備をしていてやっとそれを世間の皆さんにお披露目できるから嬉しくて仕方なかった。あの最後の日から思ったよりも早くファンの皆の前に立つことができたのは素敵なご縁があったからで。こんなにも幸せなことはないと思う。新しい道に進んで今からの可能性は無限にあるから大変だけれども、やりたいことも多くてかなり楽しみでもある。現代だなと思う策略というかSNSもこれからは上手く使って色々なことをやっていこうという話はじんとも滝沢くんともしてて。発表もYouTubeを使っての生放送となった。はじまってすぐに思ってた何倍の人が見てくれてる事実にかなり緊張したしめちゃくちゃテンパったけど、ずっと昔から一緒のじんが隣にいてくれたことも力強くて無事になんとか終わることができた。終わってからスタッフさん達と話をしたり滝沢くんや三宅くんと話して次のインスタライブの打ち合わせもして。軽く少しだけ休憩できたから一度じんと控室に戻ると机の上にはさっきにはなかった物が置いてあって。2人してハテナマーク浮かべてみればオシャレなフレームアレンジがあった。透明なフレームに可愛いドライフラワーが挟まれていてそこには文字が刻まれている。すぐに分かった。だってそこには俺の名前とじんの名前がかかれたやつ。そして、

「なにこれ!!紫耀知ってたの?みぃちゃんなんか言ってた?」

「・・知らない」

「すげぇ!めちゃくちゃ可愛いんだけど!手紙もついてる!」

彼女の名前が小さく記されていた。今日みぃちゃんはグループの仕事があって。俺の方が後に出るから行ってらっしゃいと見送った時に「ちゃんと見てるからね」とぎゅっと抱きしめてくれたっけ。そんな彼女にありがとうと返したけどこんなこと一言も言ってなかった。まさかこんなサプライズ考えてくれてたなんて。やられた。やっぱあの人には勝てない。

「・・うわー、、泣ける」

じんはじっくり読んだ手紙を胸に当てて絶賛感動中で。俺もゆっくり封筒をひらけばそこに書かれていた文字はみぃちゃんからの愛をたっぷり感じる内容だった。そっとそれを閉じてみぃちゃんに連絡しようと携帯をひらけば、

(ちゃんと全部見てました!紫耀くんかっこよかったよ!これからの紫耀くんの新しい道に笑顔がたくさん溢れますように)

「・・・ずるいなぁ」

これもまたひと足先に入ってたメッセージ。じんは貰ったフレームと手紙をめちゃくちゃ写真撮りだしてるし。そんなじんに「電話してくる」と言えばニヤリと笑って「オレも最後にお礼言わせて」って。ああ無性に彼女の声が聞きたい。

「もしもーし」

控室から出て誰もいなさそうな場所でそっと携帯を耳にした。ちょうど椅子があったからそこに腰掛けたけど聞こえた綺麗なソプラノの声に思わず頭を抱える。だめだ声だけで可愛くてなんか泣きそうなんだけど。

「もしもし?みぃちゃん何してくれてんの」

「あ、届いた?」

「うん、届いた。すげぇびっくりした」

「あはは!いつも紫耀くんにはサプライズされてばっかりだからたまにはね?」

「いやいや俺の方がされてんのよ、じんもめちゃくちゃ喜んでたわありがとう」

「どういたしまして!紫耀くんも嬉しかった?」

「、っ、もちろん。めちゃくちゃ嬉しかったよ」

「ふふ、よかった〜、どうしてもすぐに渡したくてね?」

「ん、ありがとう」

耳元でコロコロ聞こえる彼女の笑い声は心地よくて思わず耳をつぶってその綺麗な天使みたいな声に酔いしれる。あー、可愛い。今すぐ会いたい。会って抱きしめたい。

「あー、やべ、今無性に帰りたい」

「ええ?だめだよ?今からまだまだお仕事も残ってるでしょ?インスタライブ楽しみに待機してるもん私」

「はは、待ってくれてんの?」

「もちろんー!私紫耀くんのファンだから」

「ファンじゃなくて彼女ね」

「彼女でもありファンでもあるの!」

きっとみぃちゃんのことだ。実は俺が緊張してたことも震えてたことも知ってたんだと思う。朝からいつもと違う自分自身の様子に情けなくて笑えてた。なんか歯磨き二回しようとしてたし。リビングうろうろしちゃったし。意味わかんないオレの行動にきっとみぃちゃんは気づいてたけどそっと見守ってくれたんだと思う。いや待って。そっとじゃないわ。

(ねぇー、しょーくん)

(ん〜?)

(ちょっとぎゅーして?)

(え?大歓迎だけどどしたの?)

(したくなったの。ぎゅーして欲しい)

めちゃくちゃ可愛いなって思ったけどあれはオレのためだったんだ。オレがソワソワしてたからきっと落ち着かせるためにあたかも自分がして欲しいように声かけてくれたんだ。あの時も気付けばみぃちゃん抱きしめて2人でソファーに腰掛けてあったかい紅茶飲んで笑い合ってたもんな。そんなことしてたらすっかり気持ちも落ち着いてたっけ。

「・・やっぱ敵わないんだけど」

「ん?なにが?」

「大好きなみぃちゃんに早く会いたいなってはなし」

「ふふっ、みぃも早く紫耀くんに会いたいよ」

「、やめて、顔赤くなる」

「インスタライブでチェックしとく」

「やめてってw」

「ねぇ紫耀くん」

「ん?」

「私ね、紫耀くんのこと本当にかっこいいと思うよ」

「、」

「大きな船に乗ってても大変な時はあるけどさ、でも、わざわざ大きな船から小さな船に乗り換えようとする人は少ないよ」

「っ、」

事務所を変えて分かったことは沢山ある。今まで自分たちがどんなに守られていたか。どんなに色んな人に色んなことを支えてもらってたか。分かってたけど実際何か一つのことをするにしても大変で難しくて考えることが多くて。改めて気づいたことも沢山あった。

「それでも今日ね、紫耀くんの顔が本当に楽しそうで嬉しそうでキラキラ輝いて見えた」

「、」

「最近大変そうな姿も知ってるけど、けど紫耀くん忙しくても嬉しそうで楽しそうだから。この環境も楽しめる私の彼氏かっこいいなーって、どうだ私の彼氏って凄いだろって。どこでだってやれるしどの場所でも輝ける人なんだぞーって自慢に思えたの」

「っ、」

視界がぐにゃりと歪んだ。やばい、どうしよ。今からインスタライブあるって言ってたのに。こんなん絶対じんに馬鹿にされちゃうじゃん。彼女の言葉に涙が溢れてきてうまく言葉が返せなかったらみぃちゃんは「いや何言ってんだろ、なんか偉そうなことを、ごめんね」と慌てたように謝りだしたからぐっと拳を握って気持ちを抑えた。

「んーんっ、めちゃくちゃ嬉しい、ありがとう」

「私下手くそで、あのね、とにかく」

「ん」

「紫耀くんはかっこよくて最強ってこと!あとそんな紫耀くんのこと私はだーいすきで誰よりも1番応援してるよってこと!!」

「、んっ、」

「ふふ、どうしても伝えたくなったの、伝わった?」

「めちゃくちゃ伝わった」

よかった〜と笑うみぃちゃん。ああ本当に彼女はきっと自分の言葉にどんだけ力があるか知らないんだろうな。

「終わったら速攻帰るから」

「ちゃーんととぅーびーの人達と楽しんでから帰ってきてね」

「・・だからさ、何回も言うけどTOBEね、ちょっと発音怪しいのよw」

「あはは、ファンだけど言えないのw」

それからしばらくみぃちゃんと喋って楽屋に帰ればじんはめちゃくちゃニヤニヤして待ってた。それにジロリと睨み返したけど後から全部知った。じんにもみぃちゃんが連絡を入れてくれてたってこと。滝沢くんと三宅くんには電話までして挨拶してくれてたってこと。俺のいつも3歩ぐらい前にいるみぃちゃんにはきっと何年経ってもかなわないんだ。

「おかえり、しょうくん」

「っ、ただいま、みぃちゃん」

だからこそこの笑顔だけは俺が守る。俺が誰よりも幸せにする。そんなことを本気で思った俺はきっと今からさらに無敵になれたと思った。


君がいれば俺は無敵のヒーローになる、


(congratulations take a new step)

(新しい道に進む君におめでとう)



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