プライベート7

□独占欲に溺れて死んだ
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ありえない。マジでありえない。これは絶対にありえない。じーっと見てる俺の視線には彼女のことだからさっきから気づいているはずなのにどんどん自分の身支度を進めていくみぃちゃん。くっそー。そう思ってそっと近づいて彼女の背中のファスナーを下にゆっくり引っ張った。

「あ、こら!」

「ねぇマジでやめて」

「ん?」

「ちょっと本当に、、マジでぇ、、、、」

今日はみぃちゃんは仲良しな友達の妹の結婚式に行くらしい。前々から聞いてたし久々に人の結婚式に行けるとかなんとか言ってかなり喜んでたから俺も最初は微笑ましかったけど。その考えが変わったのはまずはさっき美容院から帰ってきた彼女がめちゃくちゃ可愛くてびっくりしたから。いやわかってた。みぃちゃんが可愛いことなんて知ってるけどマジでなんかどこのお姫様ですか?みたいに編み込んじゃってなんか綺麗にまとめてさ。なんていうの?このヘアスタイル。なにこれ今これが流行ってんの?てかそれにしてもこれみぃちゃんの為に作られた髪型だろ。なにこれ可愛すぎるんだけど。それなのにそこから結婚式用の服を着て(みぃちゃんいわくお呼ばれドレスっていうらしい、そういえば新しいやつを買ったとか嬉しそうにこないだ言ってたっけ)メイクを始めた彼女はどんどんさらに綺麗になっていって(いや元から綺麗なんだけどさ)

「どう?可愛い??」

「無理無理無理、ねぇちょっと真剣に話し合おうよ」

「え?なにを?」

俺の方を向いてくるりと回ったみぃちゃんの肩を両手で思わず掴む。服はレース生地でシースルーの部分もある淡いミント色。ロングのスカートなんだけどウエストが引き締まってる形だから身体にフィットして腰の細さがよくわかる。なんともまぁ上品で可愛くてかなり綺麗で。やっぱりみぃちゃんってどこかの国のお姫様なんじゃねぇの?つーかこんなの主役の新婦より目立つんじゃない?俺が参列してたら絶対この子しか目に入らねぇわ、新郎でも見ちゃって絶対怒られるわと思って彼女をぎゅーっと前から抱きしめる。

「わ、痛い痛い痛い笑笑」

「ねぇマジでさぁ本当になんで行くの?」

「んー?なんで?結婚式に誘われたからかな?」

くっついてる俺を何とも気にせずニコニコ笑いながら彼女はどんどん準備を進めてしまう。

「今日なんかいつもよりまつ毛くるんとしてない?」

「ふふ、そう?いつも通りのメイクだけど」

「髪の毛だってすげぇ手こんでるし」

「そりゃ美容院行ったからね?プロにしてもらったもん!」

「てかこの服ちょっと肌見えすぎじゃない??」

「え、そう?シースルー好きって前に紫耀くんいってたからこれにしたんだよ」

好きだよ、好き。めちゃくちゃ好き。この布一枚あるけど肌が透けて見える感じがめちゃくちゃエロくて好き。すげぇ似合ってる。けどさそれは俺と一緒にお出かけする時にしてほしいわけ。てか俺のためにそういう服は着てほしいんだもん。俺以外の人と会うためにこんな可愛いくてエロい服着て欲しいわけじゃない。みぃちゃんがリップを塗ってる間もべったり背中にくっついてやった。あーあ、唇まで可愛くしてるし。それこないだ買ってた新しいリップじゃん。え、もしかしてこのために買ったの?俺とのデートの為じゃなかったのかよ。なにそれ。そんなの男が見たら誰でも食べたくなるやつじゃん。仕上げには耳にユラユラ揺れるイヤリングもつけて。なんだこの完璧具合。男が皆好きそうな奴じゃん。

「ねぇ紫耀くん」

「・・・」

「悲しいなぁ」

「え?」

「私帰ってきてからまだ褒めてもらってない・・」

「、」

「ねえ、今日の私どう??」

そう言ってソッと離れてそして俺の方を見てまたクルリと一回転して笑ったみぃちゃん。なんだそれ。なにその確信犯め。そんなの聞くまでもないじゃん。

「めちゃくちゃ可愛い、世界で1番可愛いよ」

「っ、ふふっ、嬉しい」

俺の言葉に本当に嬉しそうに笑うもんだから、もーーーとその場にしゃがみ込んだ。俺言葉で言ってなかったけ?心の中では何万回も言ってたけど。てかみぃちゃんが可愛いから困ってるに決まってんじゃん。何だ今の。本当にみぃちゃん何もわかってない。だって友達の妹の結婚式で久々に会う学生時代の友達が来るって喜んでたし。昨日してたラインのグループに男の方が多かったの俺知ってるからね。ガッツリ見てたし。まぁさ俺の胸にもたれながらLINE返してた時点で彼女にやましい気持ちが一つもないことは理解したよ。そんなことはわかってるけどそれでもみんな「会うの楽しみだね」「2次会俺らだけでしよう」とか言ってたでしょ。夜ご飯いらないってことはその二次会行くんだろうし。

「しょーくーん」

そんなこと考えたら気づいたらふわりといい匂いがして顔を上げたらみぃちゃんが、俺の前にしゃがんで俺の髪の毛を優しく撫でた。

「紫耀くんが心配してることなんて何もないよ?」

「・・・」

「中学の時いつも一緒にいたメンバーなの」

「・・みぃちゃんってマジで分かってないよね。昔から男に囲まれすぎて距離感ちょっと変なんだよ」

「ん?ディスってる?w」

「・・・こんな可愛い姿俺以外の前ですんなよ」

かっこ悪い。こんな時男らしく余裕持って楽しんできてねなんて言えたらいいのに。それなのについ出てしまった本音に恥ずかしくなって顔を隠した。何だ今の。何歳だよ俺。無し無し。今の無し。そう思って手を離して彼女に弁解しようとしたのに・・

「・・・なんであなたが真っ赤になってんの」

「・・・・・嬉しかったから?」

「、もおおおお、」

だめだ。この人何言っても何しても可愛いしか言葉が出ない。やばすぎる。とりあえず顔隠して照れてる彼女の腕を掴めばゆっくり合う視線。みぃちゃんは頬を赤らめて俺を見てる。潤んだ瞳。ああどうかこんな顔は俺にしかしませんように。

「約束、して?」

「・・ん?」

「送り迎えしたい。帰りは俺に連絡してすぐ迎えに行く」

「、いいの?」

「行きたい」

「・・じゃあ、お言葉に甘えてお願いします」

「あとあんまりお酒飲み過ぎないで」

「わかった」

「久々に会ってもかっこいいとか俺以外の男に思うのも言うのも禁止」

「ふふ、思わないよ」

「あとあんまり男の近くにいるのも禁止。女の子の隣にいて」

「、は〜い」

「こら、笑い事じゃ無いからね?マジだからね?」

「うん、わかった」

「・・俺のネックレスつけてく?」

「え?あの紫耀くんのお気に入り?やだやだ、これに合わなすぎる!」

「・・・じゃあこれで」

シュッと彼女に俺の香水を振りかける。それになぜか嬉しそうに笑ったみぃちゃんは俺の首元に腕を回して抱きついてきて可愛い魔法を唇に落としてくれたのだった。なんとか自分の嫌な気持ちを押し殺して(多分顔めちゃくちゃ拗ねてたと思うけど)彼女をギリギリの時間で目的地まで運んだ(早く行かせて男らに見られたく無いし)式場近くで友達に会うっていうからその近くに車を停めたけどここまで来れば参列する人たちで溢れていて。ほらやっぱりどの女の子よりみぃちゃんが1番可愛いじゃん。えぐいじゃん。レベチすぎるって。

「紫耀くんありがとう」

「・・どういたしまして」

「ふふ、そんな顔しないで?」

「・・・可愛すぎるんだよぉ・・」

「しょうくーん」

俺のほっぺたをツンツンとつつく彼女。そんな彼女に逃げるように顔を背けたのにそれを分かられたのように俺のほっぺたをグニュって片手で掴まれて制された。

「ふふ、変な顔」

「・・・・・ちゅーしてやろうか」

「だーめ!リップ取りたくないの」

「・・・」

「すぐ帰るからね?」

「・・・飲み過ぎ厳禁でお願いしますよお姉さん」

「はーい!任せて!じゃあね!」

そう言って俺のほっぺたを最後にまたぐにゅっとしたみぃちゃんは車から颯爽と降りていってしまった。おいおいおい。ほら見てみろって。降りてちょっと歩いた瞬間注目されてるのよ。でもそんなこと気にもせずに俺の方を振り返って笑顔で手を振る彼女。はい100点。可愛すぎ。そんな笑顔見せられたら拗ねてたはずなのに反射で手振っちゃうし。なんなのほんとに。どうかこの時間で変な虫なんかつきませんように、なんてそう願った。

それから俺もダンスレッスンとかしてて終わって家に帰ってきた。結婚式終わったよ〜という連絡、今から二次会でご飯食べてくるねという連絡、あんなに気にしてる俺がいたからか彼女からこまめに届いたメッセージ。それに申し訳なかったなとめちゃくちゃ反省した。楽しんで欲しいのに朝の俺のせいでこっちにまで気を遣わせてしまっている。だから「二次会行ってらっしゃい!ゆっくりしてきてね」と返したのはかれこれもう3時間以上前となる。けど待てど暮らせどそこからピタリと止まった連絡は来なくて。やっと連絡があったのは深夜0時前だった。かかってきた電話に待ってましたとばかりにすぐに出たけど俺の嫌な予感は当たっててかなりフワフワした声のみぃちゃん。もうすぐお開きになるよ〜なんてゆるゆるの声が耳に届く。いやそらそうしてくれないと困る。今何時だと思ってるの。周りのざわざわした音を聞くなりまだお店の中なんだろう。聞こえてくる大きい男の声も多数。絶対みんな酔っ払ってるし。その状況にすぐに車の鍵を掴んで駐車場まで走った。そして言われた店の駐車場までつけばそこに立っていた何人かの友達に囲まれたみぃちゃん。うわしかも見事に全部男だし。彼女のいる近くに車を停めればすぐに俺に気づいたみぃちゃんが小走りにやってきた。

「しょーくんありがとう」

「ん、おかえりみぃちゃん」

「ただいま〜」

へらりと笑う彼女の頬は少し赤くて瞳も潤んでる。あ、これはまあまあ飲んだな。そんなこと思ってたらみぃちゃんは向こうにいる友達たちに手を振って挨拶するから俺も窓から顔出して頭を下げる。うっわみぃちゃんの友達ってマジでイケメンばっかりじゃん。なんなの。そう思いながらも助手席に乗り込んだ彼女からはアルコールの匂いとかタバコの匂いがして、もうそこに俺の香水なんて1ミリも残ってなかったからなんだかそれに無性に腹が立った。

「おむかえありがとう、ごめんね?ねむくなかった?」

「んーん、全然平気」

「そっか、早くあいたかったからおむかえうれし」

「会いたかったの?俺に」

「うん、けっこうずーっと思ってたよ」

「そーれにしては帰ってくるの遅くない?」

「え?」

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