プライベート7

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みぃが休みを取れたのは1ヶ月なるかならんぐらいで。その間にあの感じが回復するやろうかと思ったし、俺らはみぃが休んでることをバレへんようにするためにうまいこと仕事止めずにやってたし。彼女にこの間に会えば変に気遣わせるかな、と思ったから連絡は控えようときっと全員思ってたはずやのに。それやのにみぃが休みをとった初日から。

(今日は紫耀くんと沢山お昼寝をしました。久々にいっぱい寝ると腰が痛くなったよ)

彼女から俺らのグループラインに連絡が来た。それに驚いたのは俺らで。たまたま全員での打ち合わせやったからびっくりして。楽屋で皆で顔見合わせた。

(はは!やっぱ流石やなあ〜!みぃって俺らの一歩前いってるよな〜)

ヤスの一言に俺らも言葉を一斉に吐き出して。なんやお前って。ちょっと遠慮してた自分アホみたいやんけ、なんて皆で言い合ったっけな。そんなみぃに大倉が「LINEするならちゃんと写真も送ってこい」なんて打つもんやからご丁寧に毎日休み中、必ずあいつは俺らにメッセージと写真を送ってきた。それに全員がちゃんと返事も返して。俺らの話題にはだからいつも彼女があがってて。不思議と離れてても離れてない、そんな感覚になってたんやと思う。俺ららしいなと思ったのは俺らもあえて触れないんじゃ無くて、今こんな打ち合わせしてるぞ、とか。こんなおもろい企画あるからな、とか。言い出したのはヒナやったかな。仕事の話も普通にするようになって。大倉やヤスは電話もしたとか言ってたし。なんや思ってた休養中とちゃうなぁって思いながらも、これが俺ららしいな、とも思ってた。そんな中、この休み期間を機会に前々から言ってた引越しも進める話を聞いて。聞けば事務所に手を借りて業者を挟んで引越しするとの話で。まあ俺らもいつもそうやってやってもらってるからそれがいいな、と思ったけど。なんとなくこれがみぃってなると心配になるっていうか、なんていうか。だから言うてもうてん。俺も。

(めちゃくちゃ大変そうなん?引越し)

(ううん、大きいものは紫耀くんの方だから、私は自分のものかな、あ、1番大きくてあのドレッサーぐらい)

(・・ほんなら俺手伝おか?)

(・・・ん?)

(あれぐらいやったら車積めるし)

(いやいやそんなの)

(俺の方が気使わんやん)

俺の話にみぃは気遣ってるのかそんなの悪いの一点張りやったけど、誰かわからんやつに頼むんやったら俺の方がマシやと主張して平野くんに変われ言うて伝えれば、平野くんも納得してくれて(別に先輩の圧は使ってないはずや)よし、決まりやと思ったのにこれが俺の誤算でなんでかメンバーに話はいってしまい。蓋を開けば、

「みぃー!これも運ぶ?」

「あ、それは大丈夫!ありがと!」

「このドレッサー運ぶのこわ!落としたらキレる?」

「キレない!けど泣く!」

「それ絶対キレ泣きやん。平野くん一緒運んで。ほんならあいつ怒られへんから」

「はい笑」

なぜかメンバー全員大集合やねんけど。おいおいなんでや。きっかけは先日で。俺が引っ越し手伝うって何で知ったか知らんけど、ちょっと経ってから楽屋で大倉にブスッとした顔で文句言われてん。

(横山くんさ、みぃの引っ越し手伝うってほんま?)

(・・なんやねん、聞いたん?)

(マジで昔から1人だけいい顔すんのやめてくれん?その日休みやから俺も行くから)

(・・え?)

その話をまた楽屋でするもんやから全員知って。「ほんなら俺もいくやん」なんて言い出して、なんでか知らんけど全員参加することなった。若干てか絶対この話聞いて平野くん引いてたからな。めちゃくちゃ仲良いっすね、って。ありがたいって礼言うてくれたけどめちゃくちゃ引いてたのは俺はわかってる。いや俺もまさかこんなことなるとは思ってなかったけどな。

「みぃこれで最後やでー!運ぶで!」

「あ、はーい!私も持つよ!」

「いやお前ええからそれ持っていって」

そりゃそこそこの男らが6人も集まればまあまあすぐにみぃの引っ越しなんて終わってもうて。皆で2人の新居まであっという間に全部運んでしまった。

「あっという間やったな」

「な?全員もいらんやろ?そんな大きいものないのに」

「ええ家やな〜!!てか気使わすからはよ帰ろ!」

「あ!いやコーヒーでも飲んで行ってください!」

「え?ほんま?ええの?」

「あいつ絶対それ待ちやったやん、お前はこの後仕事あるんやろはよ帰れや」

明らかすぐに乗っかったヒナにお前そういうとこやぞとつっこめば全員がケラケラ笑って。平野くんもめちゃくちゃ楽しそうに笑ってくれたから少しホッとした。みぃもニコニコまあいい笑顔でおるからこいつのこの顔見れるなら何でもいいやなんて思ってまう。

「えへへ、どーぞっ」

「なんやえらいお姫さんご機嫌やな〜」

「ほんまや、最後あんなに駄々こねて死にかけてたのに」

「おかげさまで元気なりました!」

「平野くんのおかげやな」

「いやいや、」

「ふふ、」

「なんやねんお前ほんまご機嫌やのう!」

「ふふ、だーってね、こうやって皆のこと早く呼びたかったからまさか引っ越し初日に叶うなんて夢みたいなんだもんっ!」

そう言ってほんまに嬉しそうに笑うみぃに俺ら全員が一瞬で息を呑んで黙って。あかん、お前なんやそれ、それは、

「・・可愛すぎるやろ!!!!」

我慢できんくなった大倉が隣のみぃを抱きしめて。みぃはそれに恥ずかしそうに笑ってたけどマジで今全員キュン死にするとこやったわ、なんやお前それ。そんないつでも叶うような夢でそんな幸せそうな顔するなよ。おっさんら殺す気か。

「マジで俺みなさんに聞きたいんすけど、どうやってこの可愛すぎる発言受け止めたらいいんですか?」

「これはな、無理や。もう昔からどんどん増すから。可愛すぎて俺らでも無理やから諦めて」

「マジっすか笑」

平野くんも顔隠して頬赤らめているから、こうやっていつもこいつの無自覚小悪魔発言にやられてるんやなとはすぐにわかった。この女はほんまに男のたまらん気持ちをぎゅっと掴んで離さんねん。怖すぎるやろ、そう思いながらも大倉の腕の中でそれはそれは幸せそうに笑ってるみぃを見て、あー、よかった、やっぱあの時一回休んで立ち止まって俺ら正解やったな、って死ぬほど思えた。

「あ、ちょっと待って、電話きた」

そう言って俺らに頭下げてリビングから出ていったみぃに皆で末恐ろしいやつやな、なんて笑って。そして俺はどうしても一つ平野くんに言いたいことがあった。

「平野くん、ありがとうな」

「え?」

「みぃの写真、毎日送ってくれたやろ?」

「、いや、」

「ご丁寧に様子まで教えてくれて。ほんまに嬉しかったわ」

そう、みぃも毎日連絡くれてたけど実は平野くんもまたあの休んだ日から毎日連絡くれててん。そのために俺にグループ作らしてくれって頼んで、そこに色々みぃのこと書いてくれてた。その連絡と平野くんの心遣いにほんまに嬉しい気持ちになったのはここにいる全員やと思う。

「いやほんまに、みぃのことやっぱり心配やったから嬉しかったよなあれ」

「いやいや、絶対気になさってるだろうなって思ってたんで」

「あいつ嘘つくからな、平野くんの方信じてたもん」

「ご飯食べました、とかですか?笑」

「そうそう、あいつの食べたと、俺らの感覚ちゃうやん?平野くんがまだまだ少しです、ってきて。ほら見てみぃ!!!って全員でつっこんだよな?」

「やっぱそうですよね笑」

俺は心から今回のこともそうやし。何度も思ってるけみぃが好きになった相手がこの子でよかったと思ってる。色々若いから心配してるとこもあったし、これからもみぃもなかなか悩むことあるやろうなとも思うけど、それでもこの子は自分の力全部使ってみぃのこと大事に思ってくれて、守ってくれて、大切にしてくれるのが伝わる。そんな優しすぎるこの子にはあいつを預けれるな、ときっとちょっと悔しいけど俺らみんな今回のことでさらにそう思ったやろうな。

「・・僕、みぃちゃんに本当に大切にしてもらってるんですよね。僕も。あの時の僕のメンバーも、僕の家族も友達も、みぃちゃんすげぇ大事にしてくれてます」

「・・・」

「だから、僕もめちゃくちゃ大事にしたいんです、みぃちゃんの大切な人も全部含めて。」

「・・・、そっか」

「みぃちゃんは家族がいないと言ってたけど、みぃちゃんの家族は皆さんだから。みぃちゃんが誰よりも大事にしてるから。だから俺は皆さんとみぃちゃんがこれからも変わらない関係でいてほしいって、思います」

「・・・、」

「遠慮せず、マジで変わらず、ここにも遊びに来てほしいし、俺とも仲良くしてくれたらめちゃくちゃ嬉しいです」

そう言って笑った平野くんに歳やろうか知らんけど涙が出そうになって。けど丸が「・・ええ子やなあ自分」って震えた声で言うからそれがおもろくて全員でなぜか爆笑してしまって。みんな泣きながら笑うから平野くんも涙流して笑ってた。ああ、なんやこれ。これもしかしてあれ?娘が嫁にいくときの気持ちってこと??俺結婚もしてないのに巣立つ娘の気持ちわかってもうてるわけ??やばい、そんなことあるか?って思うけどこの幸せで嬉しくて、でもちょっぴり悲しくて虚しい気持ちを人はなんて呼ぶんやろな。俺はまだこの感情の言葉を知らんみたいやわ。

「頼むわな、あいつのこと」

「・・はい」

「そろそろバレそうやもんな〜、平野くん的にはバレてもおっけー?」

「はい、なんなら早く公表したい派です」

「いやその方が楽やんな?」

「まあ今の時代恋人おってもアイドルやって人間やろって時代やしな〜」

きっと世間ではこの2人のことをいろんな風に勝手に評価して求めてもない意見をぶつけてくるんやろ。けど大丈夫やで、だってあいつには俺らがついてるから。それにもうあいつは弱くない。実力も力もある。だからきっとあの頃とは違う。俺らだってあの頃よりは多少なりとも実力や名がついたはずや。だから大丈夫やで。お前ら2人ぐらい俺らが全力で守ったるわ。

「平野くんと同じでみぃの大切な人、は俺らも大切な人なんよ。だから平野くんだって遠慮せんと俺らのこと頼ってな〜」

ヤスの優しい声に平野くんは目を丸くしてそしてそれからすげぇ嬉しそうに笑った。その顔は年相応の可愛い笑顔で。そらそうや、この子は若くからいろんなもん背負いすぎてる。たまには俺らみたいなおっさんに任せてもええやん。誰かさんと同じで助けてくれって言わなさそうな子やけど残念やな。そういう奴の扱いはもう慣れてる。お前が手のばさんでもここにいる全員が手掴んで引き上げるタイプやで。

「っ、はい、心強いですっ、」

厄介なもんに捕まったな。俺ら他人からしたら相当の世話焼き(仲間限定)らしいから気をつけてな。どうか2人に幸せな日々がここで過ごせることを心から祈った。


おじさん達のおせっかい、


(ご飯食べて行く?)

(いやええわ!2人の記念するべき日を邪魔したくないやろ)

(え〜、じゃあまた来てね?今度パーティーしよ?)

(はは、またな)

(・・横山くんって意外とめちゃくちゃシスコンやから気つけや?)

(・・・あんな顔するんすね)

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