プライベート7
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幸せな空間だった本当に。大切な家族と大好きな人が笑い合っている。それを見れることがこんなにも幸せだとは思わなかった。みぃちゃんのことは付き合うってなってすぐに親には連絡して伝えた。そうなん、なんて別に大したリアクションもなかったけど、後からりくから「お母さんがめちゃくちゃ興奮してた」ってメールがきてたから笑った。今回みぃちゃんの少しのおやすみが決まってどうしようかと考えたけどやっぱり今はこの東京にいるよりも静かな場所で2人で過ごしたいなって考えてた。だからあまり人の多くない場所にしよう、観光地に行きすぎると話題になるからなるべくな場所。そう思ってた時に思いついたのが自分の実家だった。元々いつか彼女を連れて実家に帰りたいとは思ってたから今回がいい機会かなと思ってみぃちゃんに聞いてみるとすぐにオッケーをもらえた。休むことが目的なのに彼女に気を使わせてしまうことが心配だったから、2日ぐらい実家で過ごして。それからは名古屋の山の方で友達が小さなホテルを経営してるからそこを予約した。ここならあまり人目がつかないとふんで。それを彼女に伝えると困ったようにして笑ってたけど、みぃちゃんは気を使うなと言っても使ってしまうタイプだから。ずーっと実家にいたら疲れてしまうのは目に見えてる。だから少しだけ、俺のわがままだけど家に帰ってきた。けどさすがみぃちゃん。すぐにお母さんともおばあちゃんとも仲良くなって。弟妹もすげぇ懐いちゃって。ほんと彼女の人の良さで全員すぐに虜にされちゃうから、野原みぃ恐ろしって思ったもんね。
「・・・ん?」
そんなこと考えながらふと、あれ今何時?と思って目を開ける。昨日皆で喋って眠くなってみぃちゃんと俺の部屋で寝て、寝て、え、いま何時だ、と眠い目を擦って時計に目をやればもうお昼前。うわ、寝過ぎたかと身体を横に向けたのに。
「は?」
隣にいたはずの彼女がいない。跡形もない。びっくりして飛び起きてもやっぱりみぃちゃんは部屋のどこにもいなかった。おいおい、なんで俺のこと起こさないんだよとすぐに下に降りてリビングに行けばソファーに座るのはお母さんとおばあちゃんだけ。俺に気づくときっと寝癖だらけであろう俺を見て顔を歪めながらも「おはよう」「おそようやろなんやその髪」と声をかけてきた。
「・・おそようございます」
「はよ顔洗ってきい。寝癖えぐいで相変わらず」
「みぃちゃんは?」
「あー、出かけたよ」
「・・・・・・ん?」
「りく達と。モーニング食べて朝活する〜って」
「・・・はあ!?!?!?」
「うるさ。ちょ、なに?」
「なに?じゃないやろ!!みぃちゃんが出かけた!?りくと!?え、おれは!?」
「俺は寝てたやん」
「・・・ありえないんだけど」
思わずしゃがみ込んで頭を抱えてしまう。どこをどうしたらそんな事になる、、てかみぃちゃんなぜ俺を起こさない、、普通昨日会った弟と妹と俺抜きで遊びに行く?と思って携帯を出してすぐ彼女にメッセージを送る。
「執着の強い男は嫌われるで」
「うるさい」
「はよ顔洗っといで。昼前やしもうちょっとしたら帰ってくるって」
いやそうじゃないと困る。なんで彼女とゆっくり過ごせるって喜んでたのにみぃちゃんがりく達に取られるんだよ。ありえねーんだけど。なんだこの状況、って思いながらもとにかく顔を洗って歯を磨いてリビングに戻ればお母さんとおばあちゃんが2人して昼ごはんの用意をしてて。とりあえず彼女からも連絡は返ってこないし仕方ないからリビングのソファーに腰をおろす。
「紫耀、みぃちゃんええ子やな」
いきなりかけられた言葉に振り返ってお母さんを見ればキッチンの近くで優しく笑っている。
「そうだよ?すげぇいい子なの」
「可愛いし美人さんやけどなんていうか親しみやすい性格というか愛嬌あるというか、、」
「そう、マジでそう」
「ええ子やなぁって思ったわ。うちの息子があんないい子を選んできたことが誇らしかったね」
「俺見る目あるんだよね〜」
自分でも思う。俺は凄く素敵な人を好きになって俺には勿体無いぐらい良い人と付き合えてるなって。本当に世界中のどこを探したってあんなに可愛くてあんなに良い人はどこにもいない。
「しばらくみぃちゃんゆっくりできるん?」
「うん、休み貰えたらしいから」
「ほんならほんまにゆっくりさせたらなあかんな?あの子ずーっと働いてたんやろ?大変な中で」
「うん」
「りくからチラッと聞いたけどネットで批判されてるんやろ?あの子も色々、その、されてるやなんやって」
「そう。しかも事務所の上の人間からは嫌われてすげぇ嫌な事いっぱい言われてる」
「・・・」
「ま、これからは俺が守るけどね〜」
守ってやる。何もかもからみぃちゃんのこと。俺は全てかけてでもこの人を守るって決めたから。だからもう泣かせない、昨日みぃちゃんの両親にも約束したから。
「・・あの子、私に言ってきた。私は凄くおばさんで紫耀くんには釣り合わないと思われると思いますが、紫耀くんのこと誰よりも大切に思ってる気持ちは負けませんって」
「、」
「私の全てをかけて紫耀くんを支えていきますって、認めてくれなんて烏滸がましいことは言わないです、けど私は本当にお母さんの息子さんのことが大好きで何よりも大事ですって」
「・・、」
「・・愛されてるねんなぁ、うちの息子はって、嬉しかったわ」
鼻の奥がつんと痛くなった。みぃちゃんはいつも俺に真っ直ぐな愛情をくれる人だ。楽しい時にそばにいてくれる人は沢山いるし。俺に声をかけてくれる人だって本当に沢山いると思う。けど辛い時しんどい時悲しい時にそばにいてくれるのはみぃちゃんで。一緒に涙を流してくれたのもみぃちゃんだった。
(大丈夫、大丈夫だよ、紫耀くん)
だからこそ俺が今度はみぃちゃんの力になりたいんだよ。彼女は俺よりもっともっと悲しい思いも辛い思いもしてきてるはずだから。だからこれからは悲しい思いなんてさせたくない。
「・・・いい人すぎて、困るんだよね」
「あはは!せやなあ!いい子すぎて一緒におると毒抜かれる感じあるわな!」
「ほんま、、あんな人、どこ探してもいないでしょ」
「幸せにしたらなあかんよ」
「うん」
「手放したらあかんよ」
「俺の性格知ってるでしょ?笑」
「みぃちゃん可哀想。骨の髄までしゃぶられる」
「おい、バケモノみたいな言い方するな」
そんな話をしてたらガチャガチャと玄関から音がしてどうやら3人が帰ってきたらしい。バタバタ足音と笑い声が聞こえてきて入ってきた妹と、そして俺を見るなりヤバって顔したりくと(めちゃめちゃメンチ切ってやった)そして。
「あ!やっと起きてる〜!おはよう紫耀くん〜!」
「・・・」
「うわ、めちゃくちゃ睨まれてる!おかあさーん、紫耀くん怒ってます〜笑」
「ほっときほっとき」
ぶすーっと拗ねてる俺にケタケタ笑いながら近づいてきたみぃちゃんは俺の前までくるとしゃがんで頬を指でつついてくる。
「ねえ、なんで俺起こさなかったの?」
「だって気持ちよさそう〜に寝てたんだもん」
「別に起こしたらいいじゃん」
「紫耀くんやっと実家帰ってきてゆっくり出来るんだからさ?ゆっくりしてほしいの」
「・・・」
「そんな可愛い顔しないで」
「りくと何してきたの?」
「3人でパン屋さん行ってパン食べてきた」
「なにそれ〜俺も食べたいし」
「ほら、お土産買ってきたよ?明太子パン!」
「・・・」
「あとね!じゃーん!ガチャガチャのお土産!」
いや何歳やねん俺。とつっこみたかったけどめちゃくちゃ笑顔で俺の前にガチャガチャ渡してくるからとりあえず何も言えず受け取ると隣でりくが吹き出してたかれ後でしばく。開ければそれは今またハマり出してる鬼滅のストラップで。
「紫耀くんみつりちゃん好きでしょ〜?」
「・・みつりよりみぃちゃんが好きだけど」
「・・・うん、ごめんね。今度は絶対起こすから一緒に朝パン食べに行こう」
「ぜひそうして」
「あはは、うん、そうする!ごめんね〜」
そのままほっぺたぎゅーって挟まれたからイラッとしてそのままみぃちゃんの腕を引っ張って俺の腕の中に閉じ込める。ケタケタ笑う彼女が幸せそうで。俺にあーんってパン食べさせるのも、鬼滅のガチャガチャ買っちゃうところも、全部全部愛おしい。
「さ、お昼食べようか〜」
「お母さん手伝います〜!!!」
「させるか〜!!!!!!」「わ、わ、ちょ、」
「いいわ、みぃちゃんそのめんどくさくて重い男の相手しといて、こっちきたら邪魔や」
「そうや邪魔や。俺の相手して」
「名古屋弁でてる怖い怖いww」
ふざけてはしゃいで戯れ回る俺とみぃちゃんを優しい目で見てくれる大切な家族に本当は少し泣きそうになった。ああ幸せだなって思った。最近ちょっときついことばっかだったから頑張ればこんなに幸せなことがくるんだなって。
「紫耀くん、幸せだね」
「、」
「ありがとう」
「・・・俺の台詞だから。みんなと仲良くしてくれてありがとうみぃちゃん」
俺の大切な人もきちんと大切にしてくれるみぃちゃん。けれども俺のことを誰よりも大切にしてくれるみぃちゃん。本当にこんな幸せが俺に来るなんて思ってもいなかった。お互い何度もありがとうなんて言い合って笑っている姿を家族が涙を堪えながら笑って見てくれていたことを知るのはもっと後の話。
僕の大切な人、
(はははは!!!!)
(・・お母さん、紫耀くんのこの笑い方どう思います?)
(気持ち悪い)
(・・怖いですよね)
(いや気持ち悪い)