プライベート7
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(はじめまして、息子がいつもお世話になってます)
にっこり笑うその笑顔が紫耀くんそっくりで。初めて会う私を温かく迎えてくれて色々な話を気さくにしてくれる姿も紫耀くんにそっくりで。ああ、彼はこの人から産まれてこの人達に育てられてきたんだなとすぐに感じるほどその家はみんな温かい人たちだった。
「どうぞ〜」
「お邪魔しまーす、、わー、ふふ、紫耀くんの部屋だ」
「待ってなんかすげぇ恥ずかしいんだけどw」
「なんか紫耀くんのかけらがいっぱいある!見てて飽きないね」
「こらやめなさい、あんまり見ないの!恥ずかしいから!!」
お母さん達と話をして少しして2人で紫耀くんの部屋にきた。よく家を引越しをするらしいからそんなにずっと昔からこの部屋に住んでたわけではないらしいけど。けどやっぱり紫耀くんの好きそうな服とか小物とかが置いてあって。なんだか彼らしい部屋にどこを見ても面白くてキョロキョロしてるとぐっと腕を掴まれてそれを止められる。そのまま紫耀くんに優しく引っ張られて2人してベットに腰掛けた。紫耀くんが後ろから私を優しく包み込んでくれて、私もそのまま彼の胸の中へ背中を預けた。
「緊張した?大丈夫?」
「緊張はするけど、けど、お母さん達みんなすっごく優しい人で嬉しかったよ」
「楽しみにしてたからね、あの野原みぃに会えるって」
「ふふ、どの野原みぃ?」
「え?めちゃくちゃ可愛くて演技上手で歌が上手いスーパーアイドル」
「やめてなにそのハードル」
「ってずーっと言ってたからみんなが」
「あはは!そうなの?」
仕事の休みをもらった私に紫耀くんが提案してくれたのは名古屋の彼の実家に行くことだった。そこだと東京よりかは人目もつかないし目立たないであろうっていう彼の考え。私も落ち着いたらきちんと紫耀くんの家族に挨拶もしたかったしすぐに受け入れた。緊張はもちろんするけど彼の大切な人に紹介してもらえることは嬉しいことだなと改めて今感じている。
「とりあえず今日明日はここでゆっくりでいいかなって、ちょっと気遣わせて悪いけど」
「え?今日明日?」
「うん。あとはホテル取ってるよ?ここからちょっと離れて山の方にだけどね」
「え!そうなの!?」
「うん。みぃちゃんずーっと俺の家にいたらきっと気遣いすぎてせっかくのお休みがお休みできないからね」
いやいやそんなことない!紫耀くんは絶対実家にいる方がゆっくりできるのに!そう思って彼の方を向いて話そうとしたのになぜか振り向いた瞬間気がつけば体はベットにそのまま押し倒されていて。いつの間にか視界は紫耀くんだけになってた。
「っていうのもあるけど、あとはまぁこうやってイチャイチャしたいのに出来ないからってのも大きな理由ね」
「っ、」
「せっかくのみぃちゃんの休みだからずーっとイチャイチャしたいのに、実家でそれは流石に無理でしょ」
「・・、」
「てかみぃちゃんと一緒にいて手出さない自信ないし」
そう言ってべーっと舌を出す紫耀くんに思わず笑ってしまって。どんな理由だと思いながらもきっと彼が私が紫耀くんに気を使わないような言葉を選んで言ってくれてるんだろうなとすぐに分かったから。だから紫耀くんの頬に手をそっと当ててその可愛い顔に触れれば彼の瞳が揺れた。
「・・うん、ありがとう、紫耀くん」
「、」
「確かに、私もイチャイチャは、したいかも」
そう言って笑えばムッと顔を顰めた彼はそのまま私にガバッと倒れてぎゅっと抱きしめてきたからびっくりしたけど咄嗟に背中に手を回した。
「もおおお、マジずるいんだけど、ここじゃ手出せないのわかってて煽ってるでしょ?」
「んー?」
「マジ小悪魔すぎる」
「ふふ、ちゅー」
「っ、おーい!!!」
「あはは、うそうそ、ほら離れて?」
「、、てかマジで覚えといてね?ホテル行った時から手加減とかしないから。今決めたからね?」
そこからの時間は本当に素敵だった。紫耀くんに頼んでリビングに連れて行ってもらって。弟さんと妹さんと一緒にゲームして。さっそく仲良くなってくれた2人とはたくさん色んな遊びもした。紫耀くんはもうやめろって2人を止めてたけど。お母さんともおばあちゃんともお茶を飲みながらゆっくりいろんな話をして。あー、幸せだなってそう思えた。隣で楽しそうに笑う紫耀くんの顔はまた家族の前だと違うように見えて。新しい彼をまた一つ知れたのも嬉しかった。
「お母さんこれぐらいですか?」
「お、いいやん〜、みぃちゃん料理上手やな〜」
「え、ありがとうございます!でもまだまだなんでお2人に教えていただけると嬉しいです」
そこからお母さんとおばあちゃんと3人でご飯も作って。お母さんとおばあちゃんは私に合わせて今日は名古屋特有のご飯を作ってくれるみたいで。知らないメニューばかりで新しい料理が沢山知れて凄く楽しかった。
「ちなみにこれ紫耀好きやで」
「お!それは後でメモでも取らせていただかないと!笑」
「いやそんなん言うてくれるけど、みぃちゃんのご飯美味しいって紫耀がいうてたで?」
「いやいや紫耀くんは優しいんで褒めてくれるんですよ」
「あの子優しいけどややこしくて大変やろ?」
「ううん、優しすぎて大変ですね、私もその分返したいのに紫耀くんの優しさには誰も勝てません」
「・・そうなん」
そう言って笑ったお母さんの瞳が紫耀くんと同じように三日月型になって。あー、また見つけた。お母さんと紫耀くんのそっくりなところ。愛おしい。
「紫耀言うてたよ?大変な時支えてくれてたのはみぃちゃんやったって」
「いやいやそんなの、私、なんにもできてません」
「ううん、あの子ほんまに言ってたから。きっとみぃちゃんの存在はでかかったと思う。親から見ててもちょっとしんどい状況にはあったはずやから、だから、ありがとうね」
「、っ、」
「みぃちゃんがあの子の隣におってくれてほんまによかったわ、ずっと思ってたけど今日みぃちゃんにこうして会えてさらに思った、ありがとう」
そう言って笑ったお母さんと頭を下げてくれたおばあちゃんに私も深く深く頭を下げた。もっともっと色んなこと言われる覚悟はできてた。私は凄く歳も上だし。紫耀くんに釣り合ってないのも分かってるし。まっすぐ紫耀くんの家族からの言葉を受け入れようと思ってたのに、ここは、温かすぎる。彼と同じ。
「私も、色々あったグループなんで、知ってると思うんですけど、紫耀くんがいてくれて本当に救われたんです」
「えー?あの子が?」
「はい、色々、ぐちゃぐちゃになって、人を信じれなくなったというか、怖いって思う時があって、けどそんな時に紫耀くんと撮影したり、紫耀くんに会う機会が多くて。頭がごちゃごちゃの中でも紫耀くんに会うと、あの真っ直ぐな気持ちと、大きな優しさで、心が温かくなりました」
あの頃、メンバーと事務所と色んなことがあって。もう何もかも投げ出したい、なんて思ったのに。紫耀くんとの撮影では自然と笑えた。人と関わりたくない、なんて思ってたのに紫耀くんと話す時間は好きだった。彼の隣にいる空間が心地よかった。私はあの時確実に紫耀くんに支えられていたんだと思う。
「そっか、じゃああの子も役に立ってんねんな」
「はい、感謝しかないです」
「何歳になっても息子が褒められるのは嬉しいわ」
それから皆でテーブルを囲んでご飯を食べた。ワイワイと喋りながら食べるその空間に自分が入れることが嬉しくて仕方ない。楽しい食事の時間を過ごさせてもらってお風呂に入っておいでと言われたので、お言葉に甘えて入らせてもらう事にした。
「じゃあ俺ここで待ってるからね」
「・・え?ここで?」
「うん、だって出て1人で皆のいる場所に帰ってくるのちょっとドキドキするじゃん?」
「、」
「だからここにいるから。ゆっくり入っといで」
「・・・」
「何その顔笑」
「・・いや私紫耀くんに甘やかされすぎてる気がする」
今まで出会った人の中で誰よりも優しくて私に甘いと思う。だからいつか彼の沼から抜け出せなくなる気がして怖くなるの。
「なに、何がダメなの?」
「紫耀くん沼にハマってるからだよ・・」
「はあ?ハマっててよ、抜けようとするな勝手に」
ムッとしてる紫耀くんに思わず笑ってしまってたらそのまま彼が私の服を脱がそうとするから慌ててその手を止めると重ねられる唇。
「ちょっと、」
「隙あり〜、じゃあごゆっくり!」
そう言ってケタケタと笑いながら出て行った紫耀くんにドキドキと心臓がうるさい。実家でなんてハレンチだと思いながら服を脱いでふと洗面鏡に映る自分と目が合う。見ればその顔は赤く染まってて。うわ、やられた。なんて唇を噛み締めながらお風呂に入った。ゆっくり入りせてもらってお風呂から上がり服を着れば「服きた?」とドア越しから声が聞こえる。
「きたよ」
「ほいほーい」
がチャリと開いた扉。本当にずっとドア越しにいてくれたらしい紫耀くん。そんな彼にぎゅっと抱きつけば「わ」とびっくりしながらもぎゅーっと抱きしめ返してくれる。
「ありがとう、紫耀くん」
「なにがなにが?ほら、髪の毛乾かさないと」
「今度紫耀くん入っておいでよ」
「あ、そうしようかな」
「紫耀くんお風呂早いから私が髪乾かしてる間に出てきそう」
「もち、秒で出るわ」
彼はそのままお風呂に入って。案の定秒で出てきた紫耀くんにちゃっかり髪の毛も乾かしてもらっちゃって。2人でリビングに戻ればフルーツを食べながら私たちに気付いた皆に「おかえりー」と言われたことが嬉しくて泣きそうになったことは、私だけが知っているナイショの話。
あたたかい場所
(みぃちゃんこっちきてー!わたしのとなり!)
(あ、俺もじゃあみぃちゃんの隣〜)
(はーい!)
(・・いやおかしくね?なんで俺を差し置いて2人で)