プライベート7

□2
1ページ/1ページ


みぃちゃんが凄く俺に気を遣ってくれたのは感じてた。自分がいない方がいいって考えたのも彼女らしいなと思ったし。みぃちゃんならそう言うだろうなと納得した。けど俺は帰ってきて彼女の顔を1番に見たいと思ったから。みぃちゃんにただいまって言いたくて。おかえりって言って欲しくて。だから遠慮してくれた彼女に無理言って俺の家にいてもらうように頼んだ。みぃちゃんが俺のために準備してくれたお風呂。めちゃくちゃいい匂いするしあったかい。お湯に浸かれば一気に疲れがジワジワと取れて。いい匂いだな、これみぃちゃんが最近お気に入りのやつだ。きっと俺のためにこれを選んでくれたのか。それだけで身体だけじゃなくて心まであったかくなる。

「おかえり〜、気持ちよかった?」

「うん、最高」

「アイスティー飲む?」

「え?まじ?飲む〜」

冷たいレモンティーをコップに入れてくれたみぃちゃん。一口飲めば甘さもちょうど良くて。うま、と思わず声に出れば彼女はとても優しく笑ってて。あー、なんだろ。マジで胸があったかい。

「紫耀くん髪の毛乾かしてあげようか?」

「ええ!なにそのご褒美〜」

「いつもやって貰ってるからね、私もやりたい」

「んー、今日は甘えちゃおうかな」

「お!素直な紫耀くん大好き〜」

「はは、ほんと俺を甘やかすね〜笑」

「紫耀くんには負けるけどね」

ソファーの下に座る俺とその上に座ってみぃちゃんが俺の髪の毛に触れる。そのまま優しく乾かしてくれた彼女の手が気持ち良くて。あー、だめだ。これは寝そうだ。目を瞑りながら彼女の心地よい触り方に気がすーっと落ち着くのが分かった。

(紫耀くんさ、一個だけ聞いてていい?)

(なに?)

(私はこれからもきっとグループがある限りこの事務所にはいると思うのね)

(うん?)

(それで紫耀くんが私のせいで嫌な気持ちになったり、何かやりづらいことがあったりしないのかな)

(・・・ん?)

(嫌なの。私が紫耀くんの足枷になるの。紫耀くんのこれから歩く道の邪魔になることはしたくないの)

(・・・もしそうだとしたらどうするの?)

(紫耀くんとのこと考える。大切だから絶対嫌だから)

(・・はあ?なにそれまじキレるよ)

みぃちゃんに少し前に言われたことがある。彼女は何よりも人を優先する人で。その人が彼女の中で大切になればなるほどみぃちゃんは自分よりも相手を優先するところがある。だからこそきっとみぃちゃんなりに自分があの事務所にいる存在で、そのことが俺を苦しめる日が来るかもしれないと考えたらしい。なんなんだその馬鹿みたいな話、と思ったけど。みぃちゃんの顔は真剣で。しかも本気で俺と距離取りそうなぐらいの気持ちの強さだったから腹が立った。いやいや何それで諦める存在になってんの俺が。俺ってそんなもんなわけ?って思ったけど。けどすぐ理解できた。いや違う。違うだろこの人は。この人の考えはある意味普通の人とは違うんだ。俺を大切に思ってくれてるからか。彼女はそういう人だから。だから迷うことなく俺のためになると自分の気持ちなんて捨ててすぐにでも俺を切れるんだって。

(みぃちゃん悪いけどその選択だけはありえないから)

(・・、)

(俺がどんだけみぃちゃんに今感謝してるか、みぃちゃんに力もらえてるか。マジでわかってないんだね)

(、っ、)

(無いよ。俺がみぃちゃんをそんなふうに思うことも。みぃちゃんがそこにいるからやり辛いことなんてないし。俺そんな弱く無いし小さく無いことはみぃちゃんもわかってくれてるでしょ?)

(・・うん、)

(ないから。大丈夫。そんなこと二度と考えないで、・・っていいたいけど、もしまたそんな風に感じたらすぐ言って。何回でも言うから。みぃちゃんをそんな風に思うことはないって)

(・・そっか。わかった、ごめんね。もう二度と言わない)

本当にみぃちゃんは分かってないんだろうな。今だって俺に気を遣わせないために泣くのずっと我慢してんだよ。ここ最近あの事務所が凄く不安定なのは知ってる。ジャニーさんの記事のこともあって事務所の中もぐちゃぐちゃで。それは中にいるタレントにも少なからず色々と影響はある。それにみぃちゃんはみぃちゃんでありえない記事書かれて変な噂かかれてるのもしってる。

(・・紫耀、みぃちゃん大丈夫?)

(え?)

(なんかこの記事でてるから)

(・・はあ?なんだこれ)

読むだけで不快なありえない記事。みぃちゃんとジャニーさんがんなわけないだろっていう記事の内容。そんなこともあって忙しいはずでみぃちゃんだって心労もあるはずなのに、それなのに彼女はここ最近最後の俺の番組を気にかけてくれてか、ずっと俺の隣にいてくれてる。そして俺におかえりって笑顔で涙を隠していつも迎えてくれる。そのみぃちゃんの優しさに俺がどれだけ救われて感謝してるか知らないんだと思う。今日だってここまで帰って来れたのもみぃちゃんがいると思ってたからで。彼女の笑顔を見て、おかえりって言葉を聞いて、一気に安心したし。みぃちゃんが頑張ったねって頭を撫でてくれて、ぎゅっと抱きしめてくれて。ああ、俺頑張れたんだなって。俺は間違えてなかったんだってすげぇ思えた。俺に沢山言わないで、何も聞かないでこうしてただただ一緒にいてくれる彼女に俺が救われたことも。みぃちゃんがぎゅっと抱きしめてくれた時にすげぇ心の声が届いてきた不思議な気持ちになったことも。大丈夫だよってその声がなぜか俺に届いて安心したことも。彼女は分かってないんだろうなって思う。きっと自分なんか別になんの力にもなれないって思ってそうだし。マジでなんでわかんないんだろ。みぃちゃん自分で自分のことなめすぎなんだよね。

「ほんと紫耀くん髪のびたね〜」

「いや?」

「ううん、長いのも好きだよ」

ベットに2人で入って向かい合ってたらみぃちゃんが俺の髪をそっと触って。それから俺の目を見て笑ってくれる。優しくまるですげぇ大事なものを触るみたいにみぃちゃんはいつも俺に触れるから。彼女に触れられるとそれだけで幸せになれて、ああ、俺この人のこと本当に好きなんだなって思える。

「ねぇ、みぃちゃん」

「んー?」

俺の長い髪でクルクル触って遊び出す彼女。そんな彼女を呼べばみぃちゃんは俺に目を向けてふわりと笑う。みぃちゃんの色素の薄い瞳の色。大きなアーモンドアイの瞳は見つめられると吸い込まれそうで。綺麗なその瞳に捕まると二度と離れられない。

「きっといろんなこと考えさせてたと思うけど、けど、俺すげぇ思う。みぃちゃんが今こうして隣にいてくれて嬉しいし、感謝してる」

「っ、」

「おかえりってみぃちゃんの顔見て安心したし、頑張ってよかった〜ってマジで思えたからさ、」

「、」

「だからありがとうみぃちゃん。ずっと支えてきてくれて」

「、っ、」

「大変な時、苦しい時、みぃちゃんがいてくれて頑張れた」

ドラマで忙しかった時、何もかもに最後がついて苦しかった時、そして。

(大丈夫、大丈夫。何も見なくていい。聞かなくていい)

いろんな人にいろんなこと言われてちょっとしんどかった時。そばにいてくれて支えてくれたみぃちゃんがいたから俺はここまでやってこれたのは事実で。だから本当にみぃちゃんには感謝しかない。ありがとうなんかじゃ足りないけど、けど、この気持ちが少しでも伝わってほしい。みぃちゃんに届いてほしい。

「、っ、そっか、私、力に、なれてんだ」

そう言ってにっこり笑って。そんなみぃちゃんから涙がポロリと流れて。ああ、やっぱり色々考えさせちゃったんだなって。みぃちゃんの涙をそっと拭えばそのまま手を握られて嬉しそうに笑う彼女に俺もまた目の奥が熱くなる。

「うん、力ってか俺の全てだからね、みぃちゃんは」

「そっか、それは、嬉しいね」

「だからこれからもすえながーーーく宜しくお願いします」

「ふふ、こちらこそ、すえながーーーくお願いします」

みぃちゃんの唇に軽く自分の唇を重ねれば照れたように笑った彼女からも魔法が降ってきた。2人で笑ってぎゅーっとくっついておやすみって眠るこの時間が幸せで。さっきまであんなに心痛くて泣いてたのに嘘のように温かい気持ちで俺が今過ごせているのは紛れもなく全部俺の腕の中にいるこの人のおかげだ。

「、ありがとう、みぃちゃん」

スヤスヤ眠りにつく彼女の額にもう一度魔法を落として俺も目を瞑ればすぐに夢の世界に入って。見た夢はメンバーとみぃちゃんと一緒に美味しいもの食べて遊んで笑い合うそれは最高に幸せな夢だった。


僕たちの夢物語、


(しょー!)

(しょーくん!)

(ちょ、まって!笑いすぎて死にそー!)

次の章へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ