プライベート7

□しろいひ
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撮影も残り4日。なかなか最後の追い込みになった。どうしても悲しいシーンも多くて健の顔見るだけで泣きそうになるから今日も健に笑われた。どんどん話が進んでいくのは嬉しいけど、けど、自分の好きな人がいなくなっている事実はやっぱり変わらなくて。それに向き合わないといけなくなるから辛い。それにふと考えてしまう。もし紫耀くんが今いなくなってしまったら。もう二度と彼に触れることも顔を見ることも話すことも出来なくなってしまったら。きっと生きる意味さえ分からないほど辛いだろうなって。それでもゆいは負けずにしっかり向き合おうとして生きようとしてる。本当にゆいの強さはすごい。きっと私には無理だろうな。そんなこと思ってたらぎゅっと胸が痛くなって苦しくなる。今日は紫耀くんにバレンタインデーのお返しするから家に行くねと言ってもらってて。早く彼の顔が見たいなと思った。早く安心したい。彼がちゃんと隣にいることを感じたい。家に着いて足早に部屋へと向かう。チャイムを鳴らせば向こうから「おかえり〜」と向かいに来てくれた彼。最近すっかりクルクル伸びてきた髪の毛が愛おしい。私を見つけると優しく笑ってくれた紫耀くんに飛びつくように抱きついた。

「わ、びっくりした!!」

「っ、」

ただいま、も言わずにぎゅーっとただただくっつく私に紫耀くんも何か感じてくれたのか「おかえり、今日もよく頑張ったね」と抱きしめてくれる。ぎゅっと抱きつけばわかる。彼の力強い身体。太い腕。しっかりした身体に受け止められると安心する。もうお風呂に入ったのかな。私のボディーソープの匂いがする。良い匂い。知ってる匂い。男の子にしては甘すぎる匂いかもしれないけど。紫耀くん意外と甘い匂い好きなのかな。でも自分と同じ匂いってちょっと嬉しいかも。私も紫耀くんの家に行くと彼のボディーソープとかシャンプーを使ったら紫耀くんに包まれてるみたいで安心するけど、彼もそう思ってくれてるのなら嬉しいな。

「わ!」

そんなこと考えたらいきなりの浮遊感。びっくりしたけど紫耀くんが私をお姫様抱っこして部屋の中に入って行った。

「あはは!びっくりした〜!」

「お姫様お風呂の準備してますよ」

「え!ほんと?ありがとう〜」

「なんか凄く良い匂いの入浴剤買っていれてみた」

「ええ!!見たい見たい!!」

「お、連れて行きましょうお姫様」

そのまま風呂場に連れて行ってくれた紫耀くん。扉を開ければもう良い匂いが溢れていた。アワアワでお花が浮かんでてなんだかお風呂場がおしゃれになっててビックリする。

「すっごーい!!なにこれー!!」

「さ、素敵なお風呂タイムをお過ごし下さいね」

「ふふ、執事キャラ?あれじゃん、バトルオブバトラー?」

「お嬢様あなたが笑顔になるなら化粧も落としてあげましょう〜」

そう言って今度はソファーに優しくおろしてくれた紫耀くんはそのまま持ってきてくれたクレンジングで化粧まで落としてくれる。優しく肌をクルクルしてくれる彼に気持ちよくて眠たくなってきた。

「ちょっと、寝ないでよ?」

「ふふ、気持ちいいから眠い〜」

「じゃあいきますよ」

「わ!あはは!まだ着いてから一歩も歩いてない笑」

「いーの、俺が全部やってあげるから」

今日は何から何までやってくれるらしい。そこからお風呂場に連れて行ってくれた紫耀くん。いつの間にか着替えまで持ってきてくれて(下着まで持ってきたのは笑ったけど。それはどうなの?笑)置いてくれた紫耀くんはそのまま私に軽く唇を落とした。

「ふふ、下着までご用意してくれたの?」

「うん、好きなやつにした」

「あはは!悪い執事じゃない?笑」

「じゃ、ごゆるりね」

ニヤリと笑って出て行こうとする紫耀くんの腕を掴んだのは無意識。目を丸くして私を見てくる彼の首に腕を回したのも考えるより先に身体が動いていた。なんだろ、今は1秒も、

「離れたくない」

「え?」

「なんで今日は先にお風呂入っちゃったの?」

「、いや、いつも一緒に入るの嫌がるから」

「今日は一緒がよかったのに・・」

思わず出た恥ずかしい本音に顔が見れなくて紫耀くんの胸元に顔を押し付けて自分の赤くなってるであろう顔を隠した。そしたらバッと身体が離されて次にもう見えたのは彼のお腹。ん?お腹?

「え?」

「はい、もう無理〜、みぃちゃん疲れてるだろうから我慢してたのに絶対無理〜、悪いのは全部みぃちゃんね」

「え、え、うそうそ、ごめん、もうお風呂入ったんでしょ?」

「入ったよ?でももう一回入る。決めた。俺もこの良い入浴剤気になってたし」

「え、ま、「またない」」

「、」

「責任取ってよね。ほんと悪いお嬢様」

そう言ってる間にあっという間に服も脱がされて彼と一緒にお風呂に入ってた。紫耀くんにシャンプーもしてもらって髪の毛のケアまですごく丁寧にしてもらって。全部されるがままでお世話してもらいっぱなし。そのまま湯船に2人で一緒に浸かれば凄く気持ち良くて良い匂いで思わず「ふー」と2人して同時に声が漏れる。

「すっごく気持ちいい〜」

「ね〜!これやばいね〜!」

「紫耀くんこれどこの?匂いも大好き」

「でしょー?みぃちゃんの好みバッチリだから俺」

「ん〜、癒される〜!!!」

「よかった、みぃちゃん頑張りすぎるからね」

その言葉に彼の顔が見たくなって向かい合うように身体をくるりと回せば優しく笑う紫耀くんが視界に入る。紫耀くんのほっぺたにすくった泡をえいと乗せれば彼は「お」と同じように泡を掬う。

「わ、やめてよ」

「そっちが先にやったんじゃん」

「アワアワ〜」

「ちょ、おい!割合!!」

べたーっと泡の手でほっぺたを挟めば思ったより顔が泡だらけになってそれが面白くて笑いが止まらなくなった。そんな私に紫耀くんも同じように泡をつけてくるから気がつけば2人とも泡だらけ。

「あはは、むりむり、お腹痛いっ、」

「もーー、何してんの〜」

「紫耀くん可愛い〜」

「1番可愛い人に言われたくないです〜」

「2人で温泉とか行きたいね」

「いいね、行こう。絶対泡風呂じゃない温泉」

「なにそれ笑」

「だって泡ジャマなんだもん、みぃちゃんの良いところ全然見えないし」

「きゃー!えっちー!」

「男はみーんなエッチなんです〜」

「オオカミ?」

「がおーーー!!!」

「わ!ちょ!やー!!!」

2人でそんなことして遊んでたらのぼせそうになってきて。紫耀くんが慌ててまた私を抱き上げて外に出してくれた。そこからは髪も乾かしてもらっちゃって、なんならボディクリームまで塗ってもらっちゃって、何から何までしてもらって今はソファーに座ってる私にアイスティーを入れて持ってきてくれた。

「何から何までありがとうございました」

「いーえ、こんなの全然です〜」

「とっても癒されて大満足でした」

「それはそれは良かったです」

「ふふ、明日も頑張れそうですっ」

「じゃあもっと頑張れるように、ホワイトデーのプレゼント」

「え!今の全部がプレゼントなのに!」

「・・ん?え、どれ?」

「いやいや、うそ、お姫様体験させてくれたじゃん」

「いやそれはみぃちゃん今撮影疲れてるからやってあげたかっただけだし。本題はこっち」

いやいや完全にプレゼントとして受け取ってたのに、と思ったけど紫耀くんは向こうから何か取ってきてくれて。

「はい、みぃちゃんこれ」

「、うわーっ!」

綺麗な花束を抱えている紫耀くん。嬉しくて立ち上がって走って彼の元に向かった。可愛いお花。凄く好きな色合いのお花たちに頬が緩む。やっぱりお花もらえるのって嬉しい。なんか凄く心が伝わる。

「みぃちゃんお花好きだから」

「うん!大好き!ありがとう〜!凄く可愛い!」

「あとさ、プレゼント1つは先延ばしにさせてほしくて」

「ん?」

「みぃちゃんが行きたい場所。落ち着いたらディズニー一緒に行こ?」

「、」

「本当はすぐにでも連れてってあげたいけど、今はきっとみぃちゃんに迷惑かけちゃいそうだからもうちょっと待っててくれる?」

「、うんっ、待つよ、いつまでも待てる」

「はは、もうちょっとだけだよ。大丈夫」

「うん、」

「でね、もう一つはこれ。開けて?」

渡されたのは小さな箱。可愛いピンクの箱。リボンを解けば中に入ってたのはとても綺麗な淡い色のケースだった。可愛い。マーメイドのような色合いの淡い綺麗なもの。

「、綺麗っ、」

すごく綺麗な色合いにうっとりしながらもそのケースを開ければ中に入っていたのは金具のリング。それはよく知ってるやつで。えっと、え、これは、

「みぃちゃん、俺と一緒に住まない?」

「っ、」

「6月ぐらいから良ければ同じお家に住みませんか?」

「、」

「俺にみぃちゃんの1番のおはようと、最後のおやすみを下さい」

自然と涙が溢れた。紫耀くんの言葉にうまく声が出ない。まさかそんな提案されると思ってなかった。よくお互いの家に行ってたし2人でずっといれたらいいなって確かに何度も考えた。けど、若くて夢のある彼の生活に私が入るのは良くないなって思ってたから。

「みぃちゃんと一緒にいれば普通のこともすげぇ幸せになるから。だから、もっともっと、2人で幸せな時間を増やしませんか?」

涙を流す私に紫耀くんが親指で優しく涙を拭ってくれた。そしてそのまま優しく唇を重ねられる。

「、お返し、って、言ってくれてたのに、私があげるの?」

「はは、確かに。お返しという名のさらにねだってるわ」

「あはは、欲張りさん?」

「うん、みぃちゃんに関してはね、かなり欲張り」

ぎゅっと抱きしめられて2人の距離はゼロになる。紫耀くんが私の髪を撫でながら「返事は?」と聞いてくれるから。だからゆっくり身体を離して彼の頬に手を添えた。

「ありがとう、こんなにも嬉しいプレゼント貰えると思ってなかった」

「、」

「私だけに、紫耀くんのおかえりも、ただいまも、全部くださいっ」

「・・プロポーズじゃん」

「ええ、私されたいタイプだったのに」

「いやそれはちゃんと俺がするから大丈夫」

「ありがとう、紫耀くん大好きだよ」

「俺は愛してるよ」

2人重なる唇。何度も何度も降ってくる魔法が幸せすぎてまた涙が溢れた。そんな私に呆れながら笑った紫耀くんの目も本当は潤んでて本当はすごく緊張しながらこの言葉を言ってくれたことを知るのは、きっと何年も後に思い出話として今日のことを2人で話す日だと思う。これから先も彼と毎日を幸せに過ごせますように。紫耀くんといろんな気持ちを一緒に共有できますように。そんなこと思いながら2人してベットに入ってくっつきながら眠って見た夢は幸せでピンク色の温かいものだった。


甘い蜜に誘われたのはわたし、


(ふふ、紫耀くんくすぐったい、)

(幸せすぎて怖いからちょっと抱きしめさせて)

(いたいいたいいたい、死ぬやめて)

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