プライベート7

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「んっ、」

揺れる感覚に目が覚めたけど頭がぼーっとする。感じる匂い。厚い胸板。目の前に広がる黒い服。そっと顔を上げれば見慣れた顔があってびっくりした。え、なんで、え、てかわたし何してた?驚いて声も出ないでいると頬に感じた手。

「お、起きたな」

「っ、きみく、」

前を見ればしゃがみこんで私と目を合わせてくれてるきみくんがいて。状況がわからないけどよく見ればそこはもう私の家の駐車場だった。え、なんで、って言葉も出ずにびっくりしてたらきみくんは私の頬をギュッと掴む。地味に痛い。

「まあ、俺から言えることは全部自分の気持ちぶつけることやな」

「、っ、」

「はは、なんちゅう顔してんねん」

「、ごめんね、きみく、」

「ごめんはいらん。いつも言うてるやろ」

「、うんっ、ありがとう、きみくん」

「ん。ほんならまた明日な」

「うんっ、ありがとう」

そう言ってどうやらここまで送ってくれたらしいきみくんは車に乗って帰って行った。それを見送って上を見れば大きな紫耀くんの目とバッチリ合う。

「、っ、ごめんなさい、紫耀くんっ、」

「もお、今横山くんに言われたばっかりじゃん」

「、だって、私、」

「うん、大丈夫だよ。ちゃんと話そ?とりあえず部屋上がらせてもらっていい?」

「、うんっ、」

何が大丈夫かは分からなかった。けど紫耀くんはそのままエントランスに入って私の部屋までむかう。彼の匂いも体温にも包まれることはもう最後になるのかもしれない。私が可哀想できみくんが紫耀くんに電話でもしてくれたのかな。きっと最後の気持ちをぶつけるチャンスをくれたんだろう。そう思っていたら視界は簡単に歪んであんなに涙が出たのにまだそれは止まることを知らないらしい。

「ねぇ待って。みぃちゃん絶対違うこと考えてるから。とりあえず部屋着くまで待ってよ」

思っていたより優しい声が耳に届きながら彼にそのまま運ばれて部屋に着けばそっとソファーに降ろされた。「ちょっと飲み物だけ入れてくるわ」そう言って立ち上がった紫耀くんの服を掴んだのは無意識だった。

「っ、やだ、行かないでっ、」

「っ、」

子どもみたいに泣きじゃくって彼の服を離さない私に紫耀くんはそっと私の前にしゃがんでくれた。そんな彼の顔が見たいけどでも涙が邪魔して前が見えない。

「ごめんなさいっ、わたし、自分の、嫌な気持ちであんな、あんな、酷い言葉、ぶつけて」

「・・」

「ごめんなさいっ、おねがい、おねがい紫耀くん、」

「、みぃちゃん、」

「嫌いにならないでっ、」

「っ、」

「私から、離れて、いかないでっ、」

ぎゅっとその瞬間紫耀くんに強く抱きしめられた。彼の腕の中がまた安心して涙が止まらない。まだアルコールが残ってるんだと思う。とにかく謝らないと、ってそれだけだったのに気づいたら気持ちが溢れて本音が溢れていた。どうか嫌いにならないで欲しい。好きなの紫耀くん。こんな醜い感情をもつ私を知って離れないで欲しい。もう私あなたがいないとダメになってしまってるから。私、紫耀くんが思ってる以上に紫耀くんのことが好きで大切なの。どうかお願い。私を嫌いにならないで。

「・・やっぱり違うこと思ってた。なんで俺が離れる話になってんの?勝手に嫌ってることにされてるし」

「、」

「俺、嫌ってもないし怒ってもないんだけど。俺は俺で不安だったわ。みぃちゃんすげぇ怒ってたから、俺何したんだろうって。その気持ちが強かった」

「っ、」

「・・ごめんね。あんなこと言わせて。あんな気持ちにさせてごめんなさい」

「ううん、違うの、私が、勝手に、」

そっと身体を離されて涙を拭われた。そうすれば見えたのは彼の優しい優しい顔。そしてなんだか嬉しそうな顔してる紫耀くんが意外で言葉が出ない。

「そんなわけないって思ってた。廉がみぃちゃんが嫉妬してるって聞いた時、俺はいつも嫉妬ばっかりだけどみぃちゃんはそんなこと思わないよって」

「、そんなこと、」

「うん。俺が舐めてた。だからさ、今、みぃちゃんのこと泣かせちゃってるのはすげぇ申し訳ないのに、嬉しい」

「っ、」

「みぃちゃん、俺が思ってる以上にちゃんと俺のこと好きでいてくれてるんだなって嬉しい」

「え、つたわって、なかったの?」

「いや伝わってるよ?けど俺の方が気持ち大きすぎるんだもん。だって俺おかしくなりそうなぐらい好きだからね?」

私だってそうだもん。おかしくなりそうなぐらいあなたが好き。そう思って伝えようとしたけど、きっと今この気持ちがちゃんと伝わってるんだろうなって思った。だって紫耀くんの目が本当に優しくて。まるで本当に大切なものを見るみたいに優しい瞳をしてるから。

「紫耀くん、だいすきっ、」

「うん、俺もめちゃくちゃ好き。不安にさせてごめん」

「、そんなこと、」

「ううん、あの時みぃちゃんのその気持ち気づいてあげれたらあの場で解決できたのに」

「、っ、」

そう言って笑う彼は本当に優しくてこんなにも愛をまっすぐ伝えてくれる人を私は他に知らない。彼を信じてない訳じゃないの。紫耀くんはいつも私にまっすぐ気持ちを伝えてくれるから。ただ私が弱いだけ。だからもっと強くならないと。あなたの隣に相応しいと自分で自信を持って思えるように。

「俺さ、みぃちゃん以上にみぃちゃんが他の男と喋ってたらイライラするし、腹立つし、ムカつく」

「、」

「けどこの気持ちって相手のこと好きだから思うわけで。だからさ悪い気持ちではないじゃん?みぃちゃんは俺がそんな気持ちになってたらどう思う?」

「、もっと、好きって伝えたいなって思うかな、」

「ほら。俺ら一緒じゃん。考え方、一緒なわけ」

「、っ、」

「だからさ、別に嫉妬しない、とかじゃなくて。するのは当たり前だからお互いがじゃあそうなったら好きっていっぱい伝えよう、って。それで良くない?」

「、」

「どう?」

紫耀くんと出会って知ったことが沢山ある。わかったことも沢山ある。私が凄く凄く悩んでたことも彼が凄く簡単に答えをくれることがある。その度にすごいなって。紫耀くんの大きさと凄さとそして温かさを感じるし、この人のこういう考え方が好きだなって改めて思う。

「、うんっ、それなら、私でもできる」

「そうしよう、ね?」

そう言ってまたぎゅーっと抱きしめてくれた紫耀くんに私もぎゅっと抱きしめ返して。強い力に、ふふふ、と笑ってしまえば彼は勢いよく身体を離した。

「やっと笑った!!!もお〜、俺やっと見れたその顔〜」

「へへっ、ありがとう、紫耀くん」

「どーいたしまして?あ、てかさ、一個いうとスタッフさんと喋ってたのみぃちゃんのことだからね?」

「・・ん?」

「いや、みぃちゃんってフルーツとお餅好きじゃん?美味しいフルーツ大福があるって聞いて。みぃちゃんに買って帰りたかったから聞いてただけなんだよね」

「・・・」

「だから、うん、みぃちゃんにどう見えたか知らないけど俺別に仲良くないよ?あの人と」

「・・・、そっか、」

「俺みぃちゃん以外の女の人にもう何も思わない身体になってるからね〜、てかみぃちゃん明日早いの?お風呂入って寝ない「紫耀くん」」

「大好きだよ、ふふ、世界で1番、だーいすき」

そのあと本当に嬉しそうに笑ってくれた彼に胸が温かくなってまた2人でぎゅーっと抱きしめあった。この人が私から離れませんように、じゃなくて。離れないように私も頑張ろう。こんなに愛を伝えてくれる人だから私もちゃんと伝えて、そして自信を持てるようにしないと。今の私の目標は何があっても不安になんてならない、あなたの隣に立てる素敵な女性になること。どうかこの先も彼の隣で恥じずに歩けますように。そう願って彼の頬に唇を落とせば倍になって返ってくるものだからまた笑い合ったのだった。


好きです、ただ貴方が好き、


(お風呂入ってきまーす!)

(はーい!・・・マジで可愛すぎて死ぬ、むりむり)

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