プライベート7

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衝撃だった。待って待って。俺今なんて言われた?話したくない?俺と?え、誰と?俺?いやでも廉には普通に挨拶してたけど俺にはせずにそのまま行っちゃったし。待て待て待て。俺何した?なんであんなに怒らせた??え?なに?みぃちゃんめちゃくちゃ怒ってたよね?激おこだったじゃん。

「みぃちゃんってあんな感情持つタイプなんや」

「・・・え、どうしよ」

「感情的にあんまならんと思ってたわ」

「・・・俺なにした?やば、待って泣きそう」

「いや、え?わかってないの?」

「「・・・」」

「・・・・え、なに?」

「・・いやいや、嘘やん、みぃちゃんの嫉妬やろ今の」

「・・・嫉妬?」

「うん、だってめちゃくちゃショックな顔してたもん」

「・・え?なにが?」

「いやだから紫耀とスタッフの女の子が喋ってる姿見てるみぃちゃん、すげぇ悲しそうやったから」

「・・・え」

廉の言葉が意外すぎて開いた口が塞がらない。待って待って、俺とスタッフさんが喋ってるの見てああなったってこと?嘘だろ、彼女に限ってそんなわけないだろ。

「・・いやそれはないでしょ」

「いやそう思うやん?でもすごい顔やってん、だから声かけてんもん俺」

「・・・」

俺がスタッフさんと喋ってるの見てモヤモヤでもしてくれたというのだろうか。みぃちゃんが俺にそんなこと思ってくれるんだろうか。逆に俺は彼女のそんな姿見たら絶対思うしイラっとするし俺以外の男と喋るなよって思っちゃうタイプだけど。けどみぃちゃんはそんなことあんまり思わなさそうなんだけどな。それでモヤモヤしたんだったら今すぐにでも沢山の言葉や態度で彼女のその気持ちを取り除いてあげたい。

「・・とりあえず今日話しに行こ」

「そうしぃ、絶対その方がええわ」

それからすぐに連絡を入れたけどなかなか返信は返ってこなくて。携帯何回も見るけど一切返信はきてない。やばい。あれ?なんで?彼女はいつもならレスポンスは早い方だから返信が来ないなんてこんなこと滅多にない。あまりにも俺がチラチラと携帯を確認するからだろう。廉が心配そうに「連絡来た?」と聞いてきたから首をふれば「あれ?俺の勘違いやったんかな」なんて言い出すもんだからさらに焦る。これはマジでやばいやつかもしれない。絶対気づいてないだけで俺がみぃちゃんに何かしたのかもしれない。早く会いに行かないと。けれどそう思えば思うほどこういう日に限ってそこからが長かったりする。早くみぃちゃんに会いたいのに撮影はかなりおす。打ち合わせもめちゃくちゃ長引く。いつもはないのに変なトラブルが続く。それでなかなか帰れなくて携帯触れるたびに連絡も送ってみるけどやっぱり返ってこなくて。やっと仕事が終わったのはもう夜深い時間だった。見ても返事が返ってきてない俺のメッセージが何個も並んでいて。慌てて電話も入れてみたけど3回かけても出てくれない。え、うそだろ。どうしよう。

「・・ごめん。俺今日家じゃなくて言ったとこまで送ってもらっていい?」

「あ、わかりました」

とりあえず会おう。直接顔見て色々話したい。そんなこと思っていたら震える携帯。見れば気になる彼女の名前。やっと出てくれた!とすぐに通話を押せば耳に入ってきたのは低い声だった。

「みぃちゃん?」

「あー、もしもし」

「え?」

「あ、ごめん。横山。悪い、ちょっとみぃの携帯借りてる」

突然のことに焦って頭が真っ白になる。横山、携帯借りてる。横山、横山。あ、横山くんか!やっとピンときてなんとか「お、疲れ様です!」と詰まりながらも挨拶が言えれば少し笑った横山くんは「お疲れ様、ごめんな」と答えてくれた。

「みぃやねんけど、今俺の家で酔い潰れてんねんな」

「え、あ、そうなんですか」

「うん、なんか自分で自分が嫌になるいうて泣いて泣いて大変で」

「・・、」

「ほんまややこいやろぉ?この女」

「、・・・迎えに行ってもいいですか?」

「うん、待ってるわ、住所送るな」

すぐに送ってくれた住所に車を走らせて貰えば駐車場で待ってくれていた横山くんは心なしかいつも会う時より表情が柔らかい気がした。横山くんとプライベートでこんな風に会うのは初めてで、大先輩だし緊張してたけど、とにかく早くみぃちゃんに会わないと、という想いが強く横山くんに着いていった。大きな広い部屋に案内してもらえば奥のソファーで眠る彼女の姿。やっと会えた。やっと、顔が見れた。ゆっくり近づいてよく見れば明らかに泣いてたんだろうなっていう顔で眠ってるみぃちゃん。まだまつ毛に水滴ついてるし。

「・・・すみません、俺泣かしちゃいました」

「いやいや平野くんのせいちゃうやろ?みぃ自身の弱さの問題やわ。多分まだこいつ起きひんで?コーヒーでも飲んでく?」

「え、あ、いいんですか」

「ちょっと待っててな〜」

俺はみぃちゃんに出会ってこうして彼氏になれて初めて知ったことが沢山ある。関ジャニ∞さんはみんなとにかく優しい。優しくて温かくてそしてみぃちゃんのことを本当に大切に思ってる。だから俺も絶対大切にしようってそう思えるほどふとした時にメンバーさんの彼女への優しい気持ちに触れることが今みたいに多い。

「はい。え、てか今更やけどコーヒー飲める?」

「大丈夫です、ありがとうございます」

「みぃの好きな紅茶もあるで?笑」

「フルーツのやつですか?笑」

「そうそう、あれメンバーみんな家にあると思うわ」

「俺もあります笑」

「せやんなー、」

少しポワポワとしてる横山くんはお酒でも飲んでいたからだろうか。普段の仕事場で会う感じとは雰囲気が全く違って俺の前に座るとみぃちゃんを見て優しい目をしていた。2人してコーヒーを飲んで少し流れる沈黙。先にその沈黙を破ったのは横山くんだった。

「・・思ったより、苦戦してるみたいでな」

「・・・苦戦?」

「おん。ほら、亮と別れて自分の中で色々あったやろ」

「・・・」

「俺さ、きっともうこいつ人のこと好きになったりせんのちゃうかなーって心配になっててんけど。そんな時に平野くんが支えてくれてて。こいつの中でどんどん存在が大きくなっていって」

「、」

「怖がりでめちゃくちゃビビりなとこあるから。だから平野くんのこと大事になるたびに、平野くんまで離れたらどうしようって勝手に怖くなってたんやと思う」

「・・・」

「平野くん知ってるやろうけどとにかく自己肯定感が誰よりも低いやつやから、自分と平野くんが釣り合わへんと思ってんねん」

「・・・それ完全に僕の言葉なんすけどね」

「若い女の子と平野くんが喋ってるの見るだけで、あー、似合ってるなぁー私が平野くんといていいのかなぁーって思うアホなやつやねん」

「・・・」

「自分の気持ちより人のことばっかりやから。昔から我慢ばっかしてたのが悪い癖づいてもうてるみたいで。それが当たり前になってるんやと思う」

「・・・、」

「平野くんの気持ち、疑ってるわけでも伝わってない訳でもないねん。なんやろな、・・・そういう奴やねん。めんどくさいやろ?」

めんどくさい。そんなふうに彼女を思ったことは一度もないし聞いてる今もその感情には全くならない。だから首を大きく振れば横山くんは「遠慮せんでええで」と笑った。いやそんなことありえないんだよ。だって完全に俺が悪いから。みぃちゃんのこと分かってるつもりでも、横山くんの話を聞いていたらまだまだ分かってなかったんだなって思ったから。だから彼女がここにきて1人で泣いたのは俺に責任がある。彼女を泣かせて不安にさせて色々と考えさせてしまった。そんな気持ちにさせないぐらい俺が不安にならないようにしてあげたらいいだけなのに。

「俺が悪いんです」

「・・・」

「みぃちゃんの場合、何か不安なことある?って聞いても言わない人で。悲しくても辛くても嫌な気持ちになっても大丈夫大丈夫って笑う人だから。だからこっちが気づいてあげないといけない」

「・・昔からな、そういう奴やからな」

「気遣いに溢れてる人だから、気遣わないでくださいなんて言っても無理で。そんなみぃちゃんに、不安なことあったら言って下さい、なんて言うのは、俺の気持ちの押し付けというか。そんなこと言う前にその不安に気づいて消してやればいいじゃんって、そう思ってるんで、なんだろ、その、俺言葉下手で上手く言えないんすけど、その、だから、俺が悪いんです、みぃちゃんがめんどくさいとかありえないんです」

俺の悪い癖。感情が高まると上手くそれに合う言葉が出てこない。だからめちゃくちゃな言葉だけどそれでも今この中にある気持ちの言葉をなんとか俺なりに探して、横山くんに伝えたつもり。けど一気に喋りすぎたからハッとして急いで前を向けばそこにあったのは優しい瞳だった。

「はは、平野くんみぃのこと甘やかしすぎちゃう〜?」

「え、」

「バシバシやったらなこいつ調子のるやろな」

「・・・、調子のってくれたらいいんすけどね」

「せやな、こいつはそれぐらいで丁度やな」

きっと俺なんかより何倍も何倍も彼女のことを知っててわかってて理解してる人。俺なんかよりも、もっと前から彼女をずっと近くで守ってきた人だから。そんな横山くんのその言葉は俺の胸にもズンと響いて。いかに彼女がずっと昔から色んなことに頑張ってきたのかまた少しだけど触れられた気がした。

「・・みぃな、めちゃくちゃ嬉しそうに平野くんのこと喋るで」

「、っ、」

「たまに現場一緒になって平野くん見つけたら自然と笑顔なってるし。その顔見たら、ああほんまに好きなんやなぁって思ったわ」

「、」

「ヤスとかには偉い惚気話してるみたいやしな。俺には恥ずかしがってせんけどな。兄貴みたいなもんやから」

「、」

「まぁ、うん、・・・宜しく頼むわ。こんな奴やけど、平野くんのことめちゃくちゃ好きなだけで、勝手に拗らせてるだけやから」

「、はいっ、」

「甘やかされることなんて仕事では無かったからな?だから、今、平野くんに甘やかせて貰えてるんは、なんやろな、俺もめちゃくちゃ嬉しい」

「・・俺、とことん甘いと思います」

「おん、思うわ。」

「え、笑」

「甘やかしたい男VSなかなか甘えない女、どっちが勝つかやな笑」

ケタケタ笑ってる横山くんに俺も一緒になって笑えば肩をそっと叩かれた。「俺は全力で平野くん応援してるで」そう言って笑う横山くんにお礼を言いながらまだ夢の世界の中にいるみぃちゃんの頬にそっと触れる。

「・・・帰ろ、みぃちゃん」

どんな夢見てるんだろ。楽しい夢、見れてたらいいのに。ごめんね、みぃちゃん俺のせいで泣かせて。ああどうか彼女が起きた時に俺に笑ってくれますように。みぃちゃんの涙の跡に胸はただただ苦しむばかりだった。


甘やかしたい男VS甘えない女、


(荷物まとめるわ、待ってな)

(あ、はい)

(送ってくわ。平野くんみぃ頼むで)

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