プライベート7

□ハッピーバースデー
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韓国で仕事が入ったという彼が28日には帰ってこれるというので、地味に少しずつ少しずつ準備をして。逆に撮影があって彼がギリギリまで家に帰ってこないことは神様からのチャンスだと思い、撮影に向かう前に部屋の飾り付けやご飯の下準備もして。もし私より紫耀くんの方が家に着くのが早かったら困るから、私の家にはまだ入らないようにだけは伝えて。でも時間的に私の終わりとちょうどいい感じかなと思っていたら撮影が終わって(今日めちゃくちゃ巻いた、私ってすごい)慌ててマネージャーの車の中に入った時だった。

「っ、!!」

「わ!!!!あれ、バレた」

「・・っ、びっくりしたっ、」

「はは、ただいま〜」

「、おかえりっ、いつ帰ってきたの?」

「ん?ちょっと前。家入るなって言われてたからじゃあお迎えきちゃおーって思って」

「え、紫耀くんのお家には帰って良かったんだよ?」

「あ、家には帰った!荷物だけ置いてすぐここ来たの」

「そうなの?疲れてない?大丈夫?」

「めちゃくちゃ疲れたよ〜」

「ええ?じゃあゆっくりやすまっ、きゃっ、」

「だからちょっとでも早く癒されに来たの♡」

ぐいっと腕を引っ張られて抱きしめられてしまう。本当力強いありえない。もう!!と腕から抜けようとしてもなかなか抜けなくて。そんな私たちにマネージャーが「出しますよ〜」と呆れた顔してるからお願いしますと頭を下げる。私は自分のマネージャーさんも信用してるからいいけどこんなの見つかったら1発でアウトだよ?と言おうとしたけど、なんか本当に疲れてるのか私の首元に顔を埋めたまま動かない紫耀くんにもう何も言えなくなっちゃって。頭をサワサワと撫でていればクリクリのおめめと目が合う。

「ふふ、可愛い顔」

「どっちが?別に俺可愛くないし」

「あはは、韓国どうだった?」

「マジで撮影しに行っただけで何もしてない。すぐ帰ってきた。だってみぃちゃんに会いたかったし」

「そっか、ありがとう。今度一緒に旅行行こうね」

「え、あ、アリだね。海外行こうよ」

「うん、楽しみ」

「あと言ってくれないの?顔見て」

きょとんとしたのは昨日彼に日付がぴったり変わる時に電話で言ったあの言葉を求めているからだと思った。ちょっと拗ねたそんな顔されるとほっぺたぎゅーってしたくなるのは年下男子に恋する女の子には理解して貰えるかな。こんなこと言ったらまた紫耀くんに怒られそうだけど。ぎゅっとモチモチなほっぺたを両手で挟む。

「お誕生日おめでとう」

「っ、」

「大好きだよ紫耀くん」

「、ありがとうみぃちゃん」

そのまま唇を軽く重ねれば分かりやすく頬が赤くなるから面白くて笑っていれば「マジで覚えといてね」と怒られた。マネージャーさんなんてもう見て見ぬふりしてくれてるから本当にごめんなさい。ご飯奢ります。そのまま私の家まで送ってもらってついに紫耀くんに部屋に入ってもらう。

「えへへ、目瞑って?」

「なになに怖い」

「いいから!目瞑って!引っ張ってあげるから」

えー、と言いながらも素直に目をつぶってくれた紫耀くんの手を引っ張って靴を脱がせて部屋の中へ案内する。そのままリビングに連れて行って電気をつけた。飾り付けよし。

「いーよ、紫耀くん目開けて?」

「・・っ、」

ゆっくり目を開けた紫耀くんは部屋を見渡して目を丸くして固まるからそんな紫耀くんにジャーンと部屋全体を見せる。

「本当は紫耀くんの誕生日になった瞬間も隣にいたかったけど今年はそれができなかったから、その分!気持ちは伝わって欲しくて私ができること考えたの!今日はいっぱいお祝いさせてね!」

「、っ、」

「紫耀くんお誕生日おめでとうっ!さあ、手洗ってきて?ご飯も用意するからね!コートあずか、きゃ!!」

そのままぐいっと引っ張られて抱きしめられたからびっくりして変な声がでた。ぎゅーっと強く強く抱きしめられる。顔を見たいから離れようと思ったけど強く抱きしめられて動けない。それに耳元で聞こえるのは鼻を啜る音。だから背中に腕を回して優しくトントンと叩けばぎゅっとまた抱きしめられた。

「泣かないでよ、紫耀くん」

「・・泣いてないし」

「ふふ、そっか」

「・・ドラマでこんなに忙しいのに俺のためにしてくれたの?」

「忙しくなんかないよ」

「忙しいよ、その嘘は無理だよ」

「・・・、忙しくは無いけど、けど楽しかったよ、紫耀くんのこと思いながら色々考えて準備するの。すごく楽しかった」

「、はぁ、マジでさ、みぃちゃんってどんだけ俺のこと好きにさせたら気が済むの?」

「えー?もっともっと好きにさせるよ?いっぱい好きになって欲しいもん」

「なにそれ俺死んじゃうんだけど」

やっと離してくれた身体。やっと見えたその笑顔は私が思ってた何倍も嬉しそうでこっちまで幸せになった。紫耀くんが手を洗っている間に作ってた料理を温め直したり冷蔵庫から出したり色々と準備をする。

「え、待って待って」

「!!びっくりした〜」

「なにこれ嘘でしょ。作ったの?え、待って」

「うん、でも私も撮影あったから作りたてじゃ無いんだけどね。とりあえずあっため直したり色々するんだけど、ごめんね」

「いやいやマジで?え、マジみぃちゃん何人いるの?」

「ん?1人」

「いやわかってるけど笑 すげぇ、えー、まってね、ちょっと何から見たらいいの?どうしたらいいの俺」

「ふふ、とりあえず私は用意するから待ってて」

「え、じゃあ飾り付け見てくる」

見てくるって何見てくるんだろと思ってたけど向かうから「これ画用紙で切ったの!?え!どうしたの!?これ!」なんて聞こえてきたりカメラの音も聞こえてくるから、あそこまで反応してくれたら嬉しいなと思いなが、お皿に色々と盛り付けていく。とりあえず早くしないと、とテキパキなるべく時短で動いていたら「すげぇ!!」と、こっちに紫耀くんが走って戻ってきた。

「よし、あとスープ入れるだけだから座ってね」

「・・やば」

紫耀くんの好きなオムライスに唐揚げに小さなハンバーグも作った。あとはローストビーフのサラダとポテトサラダ。スープを入れれば完成。スープを入れて戻ってくれば紫耀くんはキラキラした目で写真を撮っていて。あー、頑張って良かったってその顔見れただけで思った。

「じゃあ食べよう、紫耀くん」

「うん、すげぇ、なにこの豪華なご飯!しかも好きなものばっかり」

「さすがに1位の濡れおかきはお皿の上には並べられなかったけどね」

「いや今の1番好きな食べ物はみぃちゃんの作った料理だから」

「ふふ、ありがとう、じゃあ乾杯しよ?紫耀くんジンジャーエールでいい?」

「うん、最高」

シュワシュワと彼の好きなジンジャーエールをいつもと違うちょっとオシャレなグラスに入れて。よし、と紫耀くんを見てグラスを手に取る。

「紫耀くん、お誕生日おめでとう」

「ありがとう」

「生まれて来てくれてありがとう、出会ってくれてありがとう」

「、」

「今日というこんな大切な日に、私と一緒に過ごしてくれてありがとう」

「それはこっちのセリフだけどね」

「紫耀くんと一緒にいる時間が長くなればなるほど、紫耀くんの素敵なところをどんどん知っていて、好きな気持ちがどんどん増えていってるの。今年はこうして、彼女として、紫耀くんの隣にいれるなんて、私はきっと世界一の幸せ者だと思う」

「・・、」

「26歳の紫耀くんが誰よりも幸せでありますように、そしてさらに楽しい思い出を2人で作れますように」

「、っ、」

「大好きだよ、紫耀くんっ」

どうして好きな人を見ていると涙が出てくるんだろう。どうして大切な人に思いを伝えていると涙が溢れて止まらないんだろう。溢れる涙を拭ってグラスをぶつければ紫耀くんはすごく優しい笑顔を見せてくれていた。

「・・あー、こんな幸せな誕生日、初めてかも」

「、それは、嬉しいっ、」

「はー、、やば、泣きそう」

「ふふ、食べて食べて紫耀くん」

「ん、ありがとう」

「後でケーキも作ったから食べようね」

「・・作ったの?」

「うん、作ったよ」

「マジか、えー、やばい、」

それから美味しい美味しいと食べてくれた紫耀くんは綺麗にペロリと平らげてくれて。そういえば唐揚げは作り置きまだあるから良ければメンバーにも持って行ってといったのに却下された。全部自分が食べるなんて言うからちょっと揉めたけど。けど何言っても無理だと思ったから諦めた。まあいいや。またこっそりスタッフさんに渡しとこう。そこからお腹いっぱいになったね、って紫耀くんにはちょっとソファーででも休憩して貰おうとしたけど案の定彼は片付けは手伝うと聞かなくて。だから2人で仲良く食器洗って片付けて一緒にソファーに腰掛けた。

「ねぇ、プレゼント渡していい?」

「え?まだあるの?」

「・・ん?まだって私渡してないよ?」

「・・まじ?このご飯も部屋の飾り付けもめちゃくちゃプレゼントだよ?みぃちゃん何言ってんの」

「違うよ!プレゼントの物もあげたいの!」

ずっと悩んでたプレゼント。絶対に喜んで欲しいから色んなものを結構前から考えて悩んで選んだ。隠してた紙袋を持って来て彼に渡す。

「いいの?ありがとう」

「うん!!どうぞ」

「・・え、なにこれなにこれ」

「開けてみて?」

すごく悩んだ。紫耀くんが何を喜んでくれるか。悩んで考えて考えて決めた。彼が好きそうな物でも良かったけど今回は私があげたいもの、って感じになった。

「うっわ、かっこいい、、」

「これね、私の昔からのスタイリストさんの知り合いがやってるお店で買ったんだけどね、紫耀くん好きそうだなーって思って」

シルバーのシンプルだけど彼の耳に似合いそうなピアス。中に小さな紫色の石が光っていて。それがまたアクセントになって気に入った。もしこの光が彼の耳にあればさらに輝くだろうなと思って迷わずこの子を選んだの。

「すげぇ、みぃちゃんってやっぱ凄い」

「え?」

「いやこんな俺の好みドンピシャなのくれるのやばい」

「え?ほんと?よかった〜、渡すまでドキドキしたの」

「つけていい?」

「うん、つけて」

今つけてるピアスを外した紫耀くんはすぐに私のあげたピアスをつけてくれて。それはそれは私の思ってた以上というか、想像以上というか。

「、っ、かっこいいっ、紫耀くん似合ってる!!」

「ほんと?マジで嬉しい、一生つけるやばい」

「ほんっとうにカッコいい」

そこから2人でゆっくりして。ちょっとお腹も落ち着いたらケーキを食べた。フルーツたっぷりのケーキ。彼はこれにもまた喜んでくれて(口にクリームつけて頬張る紫耀くん可愛すぎて写真撮ったら怒られたけど)本当にこんなにも全部喜んでくれるとは思ってなかったから嬉しくて仕方ない。そこから紫耀くんと写真いっぱい撮ってお風呂入ってゆっくりして明日も撮影があるしベットに2人で入る。

「みぃちゃん」

「ん?」

いつもベットに入ると紫耀くんはぎゅっと私を腕の中に入れてくれる。しんどくないか聞くとしんどくないって言うけど、それでも寝辛い気がするからそっと彼から離れようとした時もすぐにまた引き寄せられたり後ろからぎゅっと抱きしめられることが多いから、最近は気にしないようにした。彼の腕に頭を乗せて彼を見ればそっと唇を重ねられた。

「んっ、」

「ありがとう、俺本当に今日幸せだった」

「ふふ、それは何よりです」

「みぃちゃんと過ごせてマジで嬉しかった」

「うん、私もだよ」

「ありがとう、なんかどんなに言っても足りないけど、ありがとう」

「ふふ、こちらこそ幸せだったよ、ありがとう」

「ここからはバトンタッチだね」

「ん?」

「あと10分、次は俺がみぃちゃんを全力でお祝いする番だから」

「あはは、凄いよね。誕生日1日違い!大忙し!」

「うん、こんなにしてもらったら俺も負けてられないね」

「別に勝負してないよ!」

「いーや、俺がもっともーっと明日はみぃちゃんのこと幸せにしてあげるから」

そう言って額に降りて来た魔法。もう十分幸せなんだけど、って言葉は唇を重ねられて言えなかった。どんどん深くなる唇に耐えきれず、紫耀くんの身体を離そうとすればニヤリと笑われる。

「あともうちょっと。この瞬間は俺でいっぱいいっぱいになってて?」

「んっ、ま、まって、」

どうか彼の26歳も幸せでありますように。彼の進む道に幸せがありますように。そんなことを沢山祈りながら彼の首に腕を回せば紫耀くんがふっと笑ったのがわかった。

「ほんとかわいすぎ」

「紫耀くん、大好き」

「俺も。もう好きって感情通り越して訳わかんない」

「あはは、愛してる?」

「ん、愛してるよ」

「君だけしか見えない〜!」

「やめなさい、ほら、ふざけてたら日付変わっちゃう」

「理由とかなんとか聞かれたって〜」

「歌うな!やめなさいって!ほら、10.9.8...」

ねぇ、紫耀くん。紫耀くんのこれから先の未来に私が隣にずっといますように。そして少しでも私があなたの力になれますように。

「5.4.3.2.1..」

「、っ、んっ、」

「お誕生日おめでとうみぃちゃん、愛してる」

どうかどうかあなたの未来が輝きますように。きっと紫耀くんのためなら私はなんでもできると思った。


君だけしか見えない、


(ふふ、しあわせ、だね)

(うん、幸せだね)

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