プライベート7
□私と彼の物語の始まり
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「お待たせ!改めてあけましておめでとう〜」
「あ、おめでとうございます〜」
「お迎えありがとう」
「当たり前ですよお姫様」
「あはは、今年もお姫様扱いしてくれるの?」
「今年も、というかずっとするよ。お姫さまなんだから」
「・・・」
「はは、照れたんでしょ?」
「もう!うるさい!あ、紫耀くんさ、お願いがあるんだけどちょっと力借りていい?」
「え?」
今日は紫耀くんと年明けて2人とも仕事がひと段落落ち着いたから一緒に過ごすことになった。家でゆっくり過ごして日が暮れたら神社にいこうと言ってたから、それまで時間あると思って紫耀くんに荷物を運ぶのを手伝ってもらう。なにこれなにこれってすごい不思議な顔してたけどとりあえず運んでもらって彼のお家へ。何度目かとなる彼のお家だけど、いつも入るたびに紫耀くんの匂いでいっぱいでドキドキしているのはナイショの話にしとこう。
「ねぇ、マジでこれ何?重いんだけど」
「うん、ちょっと見てくれる?」
「なになに?」
「紫耀くんあんまり好きじゃないって言ってたのが悔しくて。私意外とこういうの作るの好きだからさ」
「・・え、え、」
「じゃーん!作って持ってきた!!!」
「・・・マジで??」
持ってきたのはお節料理とお雑煮。紫耀くんはポカンと口を開けて目を丸くしたままで。そんな彼にお重箱を開いて見せる。紫耀くんに食べてもらうと思ってちょっと張り切って作っちゃったのは秘密。まぁでもお節料理あんまりとか言う人だから唐揚げとか無難なものも入れたのは一応保険なんだけどね。そう思いながらも、いや、てかこれよく考えたらだいぶ気持ち悪いことしてない?なにそれ。おせち好きじゃないって言った人の家にその料理をしかも自分の手料理をこんな持ってくるのやばいか。
「・・まって、やっぱり無しにする、ちょっとまっ「すっごい嬉しい」
「、え、」
「・・どうしよう、すごい嬉しい」
「、ほ、んと?」
「だからお昼用意しないでいいよ、だったんだ」
「あ、うん、」
「・・やっば、だって俺ちょっと泣いてるもん、ほら」
「ふふ、ほんとだ、なんでよ」
「はー、やば、早く食べよ!準備する!」
「あ、うん、準備しよっか」
「マジみぃちゃんすげぇ、、これ1人で作ったの?」
紫耀くんが黙って動かなくなっちゃったからやばいって焦ったけど。思ってたより喜んでくれていたみたいで。キラキラした目でお節料理を見て。それからこれなに、これはなに?と聞きながらもテキパキお皿を出してきて用意をしてくれる。保温の水筒に入れてきたお雑煮の出汁もあっためてお椀に入れて。お餅は紫耀くんの家にあったから焼いて。それも入れれば完璧なお節料理ができて。
「・・じゃあ、紫耀くん、改めてあけましておめでとうございます!」
「あ、おめでとうございます(笑)」
「2022年は紫耀くんと色んなことができて楽しかったです」
「俺もです(笑)」
「2023年も変わらず、紫耀くんの隣にいれますように、心から願います」
「・・、」
「では、いただきますの挨拶をお願いします」
「できるか!笑 じーんときたわ!!」
「いただきまーーす!」
「ちょ!待ってよ!笑笑」
恥ずかしくて紫耀くんの顔が見れなくて前のおせちに箸を伸ばす。そんな私に彼もケタケタ笑って。すげぇすげぇと言いながら。どれから食べたらいいかわかんねぇ!なんて嬉しそうに笑うから、作った甲斐あるなぁって。年末計画的に作っていってよかったなぁ、とその嬉しそうな顔を見たら素直にそう思えた。
「・・うっまぁ、なにこれ」
「ほんと?」
「うん、めちゃくちゃ美味い、、えー、待っておれ幸せすぎる」
「これでもうお節とお雑煮あんま好きじゃないって言わないね」
「言わない、これからはみぃちゃんのおせちが好きって言う」
「あはは、黒豆もあるよ?」
「!!好き!!!数の子も好き!!!!」
「うん!いっぱい食べてね」
毎年メンバーに渡すからおせちやお雑煮は作ってて。メンバーにはカウントダウン後すぐに食べて貰ったから綺麗に箱にもう一度詰め直して持ってきた。前に一度お正月の話をした時に紫耀くんが「俺おせちあんま好きじゃないんだよねー」なんて言ってた言葉がずっと頭に残ってて。じゃあなんとなく私の作ったものを食べてほしいなって。そう思ってしまったのはきっと彼に対しての小さな独占欲なんだと思う
「はー、、うっまー、、」
「あはは、いっぱい食べたね」
「やべぇー、、動けねぇー、、」
「(笑)私片付けるからゴロンってしておいでよ」
「え、なんで?逆でしょ?作ってきてくれたんだから俺が片付けるよ、ゴロンしてきて」
そう言って立ち上がった紫耀くんはテキパキと私と彼の分を片づけてくれて。それに思わず目をパチパチさせて固まってしまった。ほらね、こういうとこ。こういう当たり前に相手を気遣えることができるところが本当に素敵だと思うの。それに紫耀くんにこうやって思い遣って大切にしてもらうとキュンと胸が苦しくなって少し泣きそうになる。
「一緒にやろ?」
「えー、いいのに」
「ふふ、なんでも一緒にやれば楽しいんだよ」
「・・まぁ、確かに(笑)」
ここから2人で洗い物して。片づけて。冷蔵庫に余りを詰めたり色々して。ちょっとゆっくりして。夕方になってきたしお参りでもいこうと彼の運転で人が少なそうな小さな神社に向かった。
「神社ってよくない?なんか凄い好き」
「わかるわかる、背中ピシってするよね」
「そう、ほんとにそれ。俺昔から好きなんだよね」
こういうところに来て心が落ち着くと、あぁ自分って日本人なんだなぁと思うし。こうして背筋がピシッとまっすぐのびる気持ちになるのは神社という神聖な場所のパワーなんだと思う。
「すごい、人いないね」
「ね、思った。ラッキー」
「人多いといつもお参りする時焦っちゃうから嫌なの」
「お、じゃあ今日はたーっぷりお願いできるじゃん」
パンパンと2人の手を叩く音がしーんとした静かな神社に響いた。そのまま目を瞑り神様と私の時間が始まる。昔から神様に沢山頼むことはしてきていない。まずはここ一年のことを少し神様と思い出して、そして私の願掛けだけど今年の目標を報告させてもらう。そして私の願いを少しだけ頼むの。チラリと隣に目をやれば目をつむり小さく口が動いている彼に笑みが溢れた。神様、どうか、どうか、この隣にいる彼にとって幸せな道が訪れますように。彼が悲しみであの笑顔が曇ることがありませんように。どうか彼にとって今回選んだ道が正解だと胸を張って言えるような日々が訪れますように。そして、あわよくば、、
ずっとずっとこうして彼の隣にいるのが私でありますように、
強く願って頭を下げて隣に目をやればそこには私に体を向けて優しく笑う紫耀くんがいてそれだけで泣きそうになった。なんとも言えない顔して笑う紫耀くんはさらりと私の手を取ってぎゅっと絡ませて繋ぐ。
「ねぇ、何をそんなに真剣にお願いしてたの?」
「・・・内緒、神様と私だけの秘密だもん」
「えー、なにそれ。神様に妬くんだけど」
「紫耀くんはなにお願いしたの?」
「それは内緒だよ!」
「・・なにそれ(笑)自分もじゃんか(笑)」
そのあとひいたおみくじでは2人揃って末吉で。書いている内容はそんなに良くなくて落ち込んだけど一つだけとってもいいことが書いてあった。それにぐっと胸が熱くなって、あー、神様わたしのさっきの願い聞いてくれたのかな、なんて。
「みぃちゃん、ドライブして帰ろうよ」
「うん」
ほんと最近涙腺が弱くなる。だめだ、歳なのかな。どうして彼はこんなおばさんな私にこんなにも優しい気持ちを向けてくれるのだろう。それが私にはわからないけど、けど、隣でこんなにも笑顔を見せてくれるこの関係がずっとずっと続けばいいのに。そんなふう願ってしまっわたしは欲張りで我儘なんでしょうか。キラキラ光る景色よりも彼の笑顔の方が何倍も綺麗だった。
私と彼の物語、
(はい、どうぞ。みぃちゃんミルクティーでいい?)
(・・さすが、)
(はは、でしょー?)