プライベート7
□大切なお兄ちゃん達と大切な人
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「・・やばい俺緊張しすぎて、どうしよう」
「え、なんで?」
「いや緊張するでしょ!!見て、手震えてる」
そう言った紫耀くんは私の手を握ってきて。たしかにその手はブルブル震えてたからびっくりした。何をそんなに紫耀くんが緊張してるかっていうとメンバーに挨拶するから、らしい。これが親とかだったらわかるけどなんでそんなに?と思ったら「みぃちゃんの家族じゃん?」と言われてしまい納得してしまった。早くに親を亡くした私にとって彼らは血が繋がってなくても兄のような時には父や母のような存在だった。でもこんなに震えるまで、私が大事にしてる存在の人を同じように大事にしてくれる紫耀くんのそういうところが好きだなぁと改めて思う。別にいいよ、と言ってるのにちゃんと挨拶をしたいと言うのでヒナちゃんに言ってみれば「ほんなら皆集めるわ」と思ったよりすんなり受け入れられてしまった。そんなんいらん!と言われる前提で言ったのにびっくりした。ああ、きみくんに言えばよかった。そしたらきっと照れちゃってそんなんいらんわって言ってくれた気がする。自分から言っといてだけど許可されればあとはもう実行するしにい。だからメンバーでの収録終わりにそのままたまに行く個室のあるご飯屋さんに連れて行ってもらって。私は一度別れて紫耀くんと合流してからその場所に向かってるんだけど。尋常じゃないほど隣で震えてるからぎゅっと手を握れば可愛い瞳と目が合う。
「大丈夫、いいお兄ちゃん達だよ」
「いやそれはもちろんだよ?もちろんわかってるんだけど」
「紫耀くんは大丈夫、どっちかといえば私の方が心配だよ〜?こんなおばさん連れてきてって紫耀くんの周りみんなに思われるじゃん」
「はぁ?それの方が100無い。昨日お母さんに電話して言ったけどめちゃくちゃびっくりしてたもん。玉の輿とか言われたし」
「いやいや、お母さん何をおっしゃるというかお母さんに言ったの?」
「うん、名古屋帰っておいでって言ってたから今度帰ろうね」
「わかった、覚悟しておく」
「なんの覚悟?w あ、メンバーにはまだ言ってないから次会った時にさらりと自慢しとくわ」
「やめてやめて」
「てか俺の話はいいの。やべー、どうしよ」
「だから大丈夫だってば、ちょっと過保護なお兄ちゃん達ってだけなの」
「あのねみぃちゃん、それが一番怖いのよ」
頭を抱える紫耀くんに心配しなくても絶対大丈夫なのにな、と思って背中を撫でる。だってあの人たちが私の大切な人に嫌な顔したり嫌な態度とるわけないもん。ただ亮ちゃん以来でこんな恥ずかしいことを言うわけだからむこうもどんなテンションかは分からないけど。けどみんな人当たりもいいし(一部人見知りありだけど)私が気恥ずかしくてどんな顔してたらいいかわからないだけで、紫耀くんに不安なんて何一つないんだよ。でもまぁこれから先紫耀くんにとっていろんな意見を言う人がいるのは事実だよなって。だって相手はかなり歳の離れた私だし。若い子にはどう頑張っても勝てないし。そんなのやめとけって色んな人に言われてしまうと思う。そう考えるとなんだかちょっとモヤモヤとして。あー、なんか想像したくないな、って。
「・・じゃあさ、もしもだよ?もしもメンバーの誰かが認めない!とか言ったらどうするの?」
「え、それは土下座でもして認めてもらうかな」
「・っ、」
「もし今日がダメなら毎日でも通って、俺の気持ち伝えてどうにかして認めてもらう」
「・・なんでそんな、」
「だって俺が認めてもらわないと、みぃちゃんまで気まずくなるじゃん。それは絶対に嫌だし」
「・・・」
「え?これなんの質問?てか誰に何言われても諦めるとかないからね?分かってると思うけど」
「・・、そうなの?」
「はあ?ちょっと怒るよ、たとえ誰にどう反対されても離す気はないし。てか他人の意見とか関係ないから」
そう言ってムッと眉を寄せて怒る紫耀くんが可愛すぎて思わず頬をむにゅっとすれば「なに」とさらに険しい顔をされたもんだから、私の手によって尖った唇に一瞬自分のそれを重ねる。そしたら目を丸くして固まった彼にクスクス笑えば逆に腕を引っ張られて今度は向こうから重ねられた唇。
「ねぇ、やめてくれる?そんないきなり可愛いことするの」
「ご機嫌なおった?」
「・・ずる、もうなにそれ」
けど効果は的確だったみたいでへにゃりと笑った紫耀くんに満足していたら着いた店先。多分もうみんな飲んでるだろうなぁとか思っていたら案の定ガヤガヤ楽しそうな笑い声が聞こえてきた。
「遅くなってごめんねー」
「あ、こんばんは、あのお疲れ様ですっ、」
「「おー!お疲れー!!」」
そこからはやっぱり私の思っていた通りで。ガチガチに緊張していた紫耀くんもいつのまにか皆の輪の中で涙を流して笑っていて。かといえば仕事の真剣な話もしているし。本当にあっという間に楽しい時間で私のグラスも少しいつもよりすすむ。紫耀くんはお酒が強いわけじゃないから付き合い程度に飲んでるけど、それでも私が知る中で1番お酒は進んでた(緊張して飲まないとやってけないらしい)それにしてもひなちゃん筆頭に皆がうまく紫耀くんにも話をふったりしてくれて。あー、本当に素敵なグループに恵まれたなぁと思って少し泣きそうになる。
「、ちょっとごめんね」
「え、どこ行くの?」
「あ、お手洗い」
「ダメだよ、着いてくよ」
「え、いいよ大丈夫だから」
「やだよ。だって酔っ払いに絡まれるかもしれないじゃん」
「なんでぇ?酔っ払いは紫耀くんでしょ?」
「酔ってませーん」
「ふふ、ほっぺ赤いよ」
「マジ?」
「うっそー」
「やってんな(笑)」
ケタケタ笑っていたら後ろからスッと背中を支えられて振り返ればマルちゃんがニコニコして笑ってた。「俺もトイレ行きたいから一緒に行くわ」そう言ったマルちゃんに紫耀くんが「すみません、お願いします」と頭を下げて。マルちゃんはそれにわかりました〜と私の手を繋いで足を進める。ちょっと紫耀くん1人にするのは心配だったけど振り返ればヒナちゃんが紫耀くんの背中をバシバシ叩いてて。ま、大丈夫かと安心して前を向けばマルちゃんがなんともいえない顔で笑ってた。
「心配?」
「んーん、皆だから大丈夫」
「そっか。・・ええ子やなあ、平野くん」
「・・うん、いい子なの」
「幸せにしてもらいや?」
「・・・やめてよ、なんかお嫁に行くみたい」
「ははっ、俺も泣きそうになったわ、ほら、トイレ行っといで」
お手洗いに行って自分の顔を鏡でふも見れば思ったより自分が泣きそうな顔をしていてびっくりした。これがどんな感情なのかは分からない。けれど何回も涙が出そうになってた。なんでかは分からないけど、紫耀くんがニコニコ笑っているたびに。メンバーがみんな私と紫耀くんに向ける目が暖かくて小っ恥ずかしくて優しくて。紫耀くんが大切に思ってくれていることを恥ずかしがらずに伝えてくれる姿に。メンバーが負けじと私のことを紫耀くんに話してくれている姿に。胸がいっぱいになって、私はなんていい人達に巡り会えたのだろうと再確認して涙が溢れそうになっていることを、きっと皆にもバレているんだろう。
「・・ふぅ、、」
きっと泣いてしまうとびっくりさせちゃうから、ほっぺをパチンと叩いて気合いを入れてお手洗いから出れば壁にもたれてしゃがんでいたのは、マルちゃんではなくて。
「、紫耀くん、」
「俺もやっぱトイレ行きたくなって」
「、っ、」
「丸山くんが代わってくれた」
ニコニコと笑って立ち上がった紫耀くんにそっと近づいて彼の背中に腕を回した。かおる彼の匂い。鼻をかすめてさらに涙が出そうになる。
「・・ん?どしたの?」
そのまますぐに私をぎゅっと優しく包み込むように抱きしめてくれた紫耀くんに首を横にふれば、「そっか」と背中を優しく撫でられた。
「みんなさ、本当にいい人達だよね」
「っ、うん」
「みぃちゃんを大切に思ってくれてるってすげぇ分かる」
「、うんっ、」
「これからは俺も負けないぐらい大切にするから」
「、っ、もう、してもらってるっ、」
「えー?まだまだなんだけど!」
「あはは、紫耀くん酔ってるでしょ?ほっぺ赤いよ?」
ほっぺたに手を当てれば紫耀くんの顔も予想以上に熱くて。あれ、そんなに飲んでたっけ。大丈夫??とびっくりして彼の首元にも手を当てようとしたらそのまま腕を引っ張られて唇が重なった。
「っ、ちょ、」
「酔ってる、みぃちゃんに」
「、っ、」
そのままぎゅーっと抱きしめられて。胸がドキドキと暴れ出す。なにこの人本当に心臓に悪い。そのまま私も彼の胸に顔を埋めて。そしたら紫耀くんの心臓もドキドキ暴れてるからびっくりして顔を上げた。
「え、なに?」
「いや紫耀くんドキドキしてるから」
「はぁー?そりゃするでしょ。好きな人抱きしめてるんだから」
「えー?」
「ほんとみぃちゃんって自分の可愛さの自覚ないよね。困るんだけど」
「それは紫耀くんでしょ?」
「はいはーい、もう行くよ?みんな心配してるし」
「いやいや、待って待って納得いってないから」
「はーい、行きますよ〜」
「やめて!あしらわないでよ!!!!」
「あはは!!!」
私の前で顔をくしゃくしゃにして笑う紫耀くんは、テレビで見る大人気アイドルの顔よりも何倍も幼なくて。ただの男の子って感じだから可愛くて仕方ない。どうかこれからも2人でこうして笑い合えますように。この人の心からの笑顔をそばで見れますように。そう思いながら2人で帰るとメンバー皆が一斉に優しい目を向けて迎えてくれるからまた泣きそうになったのは秘密の話。
大切なお兄ちゃんと大切な人、
(平野くんみぃのめちゃくちゃ可愛い写真あげるよ)
(え、マジすか)
(お前後でそれみぃに殺されるぞ)
(えー?なんでぇ?ええやんなぁ?俺と平野くんの秘密にしようや)
(平野くん酔ったマルめんどくさいから気をつけや)
(え笑)