プライベート7

□いつになっても
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「いらっしゃーい、わ、どしたの?顔しか見えてない」

「えー?どうしたのでしょうか」

扉を開ければ今日の紫耀くんはキャスケット帽子を深く被っておめめしか見えなくて。いや目も見えてるか怪しいけど。鼻と口?しか見えない。あまり変装するタイプではないから本当にどうしたんだろうと思って首を傾げたのになぜだか彼には誤魔化された。鼻歌歌いながら部屋に入ってくる感じはかなりのご機嫌さんで。ちょっと浮き足たってるの可愛いし。そう思って着いていけば(私のお家なんだけどね)彼はリビングに着くとくるって振り返ってニヤニヤという表現がぴったりな笑い方で笑う。

「ふふ、もぉー、ねぇ、なんなの?」

「えー?笑 べっつにー?」

「もお、、てか帽子脱がないの?なんで今日はそんな変装してるの?」

「ははは!!」

いきなりの高笑い。怖い怖い。紫耀くんの高笑い本当に魔女みたいだから苦手なの。前にそれ言ったのにこの笑い方は爆笑すれら自然に出るみたいでなかなかやめてはくれない。そう思って嫌な顔をすればそんな私の顔が面白かったのか彼はさらに笑って私に近づくとキャスケットに手を当てる。

「怖いからやめてよぉ」

「みてて、いくよ?」

「なにが?」

「お披露目。3.2.1!!じゃーーーん!!」

そのまま勢いよく取ったキャスケットでやっと見えたのは紫耀くんの髪型。黒い髪色はそのままだけどなんだかクルクルとしているその様子にそういえば、今度美容院行きたいと言ってた!とすぐにピンときた。

「わー!パーマかけたのぉ!?」

「かけたw 」

「パーマもいいねぇ!かっこいい!!」

「パーマの紫耀くんも好き?」

「うん!好き!すごくかっこいい!」

「へへ、よかった〜」

そのままぎゅーっと抱きしめられれば髪の毛からかおるいつもの彼から香る匂いとは別の独特なスタイリングの匂りにハッとして彼から離れる。

「あれ?行きたて?」

「うん、だって今美容室からここに帰ってきたから」

「あ!そうなの?私初お披露目?」

「え、当たり前じゃん、新しい髪型は絶対みぃちゃんに1番に見てほしいから隠してきたの」

「それでキャスケット変装ね!笑」

「そういうこと〜」

「あはは!ちょ、潰れる!笑」

くるくるっとしている彼の髪の毛を優しく撫でていればぎゅーっと上から包むように抱きしめられた。そういえば以前もあったっけ。紫耀くんいわく今までで1番長い髪の毛だった時に、彼から連絡があって会いに来てくれて。

(わ!え!紫耀くん!!!髪切ったの?)

(うん、どう?)

(いいね!やっぱ短いのもかっこいいもん!)

(ほんと?うわ、嬉しい)

あの時も後からチラリと廉くんに紫耀がみぃちゃんに1番に見せるって言ってた、と聞いて少し顔が熱くなったのを覚えてる。彼と付き合ってから分かったのはとにかく全部の特別を私にくれる。紫耀くんからしたら当たり前なのかもしれないけど、私にしてくれる特別扱いなことが私からしたら少し恥ずかしくて、けど嬉しくて心が痛くなるほどギュッと掴まれる。

「じゃあまたしばらくパイナップルできないね」

「ねぇ、思ってたんだけどやっぱみぃちゃんハマってたよね?」

「うん、楽しかった」

紫耀くんと一緒に過ごすようになって知ったのは彼がかなりの直毛ってことで。サラサラな髪の毛いいなーって思ってたけど、あまりにも直毛すぎてちょんまげにすればピンと上に針金が入ってるかのように立つし。寝癖は真っ直ぐ上にとさかみたいになるし。紫耀くん自身はそれが嫌で悩みだったみたいだけど、私的にはそこがかなりの可愛いポイントで実はお気に入りだったことを彼には薄々バレていたらしい。

「え、まって、みぃちゃん俺のサラストの方が好きだったりするの?」

「んー、、」

「・・待って嘘でしょ、もうパーマしちゃった、、ショックなんだけど」

「サラストも好きで、センター分けも好きで、かきあげも好きで、ロングの時も好きで、」

「、」

「今のパーマも好き、」

「っ、」

「全部好きだから選べないの」

「、もお、なにそれ、」

「あとね、今すっごく嬉しいのはね、」

「ん?」

「私に1番に見せようって思ってくれた気持ちが何よりも嬉しい」

「っ、」

「ありがとう、紫耀くん大好き」

目をぱちぱちとさせた彼はそのままその場にしゃがみこむから同じく隣にしゃがめば、顔を隠してしまった紫耀くんと目が合わない。おーいと彼の背中を触ろうと手を差し出した時だった。顔を上げた紫耀くんの目がぎらりと少し鋭くて。うわ、とびっくりして後ろに行こうとすればそのまま手を掴まれる。

「なんで逃げたの今」

「だって怖い目してるじゃん」

「俺煽ってるのみぃちゃんでしょ?」

「っ、煽ってないよ、ねぇ、やめて?その目」

「無理だよ、俺目力あるってよく言われる」

「・・・誰に?」

「え?」

「・・今までの女の子に言われてきたの?」

「、・・」

「・・・あ、ちょ、まっ、」

「はいアウトもう無理」

ガバッと抱き上げられてしまえば足をバタバタさせてももう私にはどうすることもできない。本当に紫耀くんって怖いぐらい力あるの。怖いの。圧倒的なバケモノの子と呼ばれるほどだもん。足をバタバタして逃げようとすれば「はいはい諦めましょうね〜」なんて言われてそのまま慣れたように私の寝室に入ってベットの上に優しく寝かされて紫耀くんは腰掛けた。

「力はずるいよ勝てないもん」

「どっちが?どっちがずるいんだよ」

「もお、なに?」

「可愛すぎるの本当にやめてくんない?俺マジで心臓潰れそうになるからさ、」

頬に手を当てられてぐっと顔を近づけられてしまえば私の視界は彼しか入らなくて。あー、もう、本当に。こうなれば私の世界は全て紫耀くんだけになる。

「、だから、やめてってその可愛い顔」

「・・」

「ねぇ、絶対こんな顔他の男に見せないでね?」

「、っ、ないよ、自然と、紫耀くんにだけ、そうなるから」

「・・まだ煽るの?この状況で」

「、んっ、」

重なる唇。ゆっくり紫耀くんが私の上に跨がれば気づいた時には自然と手は上で纏められて彼に押さえつけられてるから不思議。

「俺がこんなに苦しくなるぐらい好きになってるのはみぃちゃんが初めてだから」

「、」

「早くみぃちゃんも俺の気持ちに追いついて」

重なる影。揺れるシーツ。紫耀くんの甘い声と甘い顔。漏れる吐息。全てが全部幸せで泣きそうになった。色んなことがあって苦しんできた彼がこれからも少しでもここではこうして笑ってくれたらいいのに。こんなに優しい顔をしている彼に私も全ての優しさを返せますように。そんなことを願いながらも彼の首に腕を回しながら、きっと私はこの人によって世界一の幸せにしてもらっていると思った。


いつになっても、隣でその笑顔を見せて、


(・・・、あーーーー、またやった)

(・・ん?)

(無理だ、みぃちゃんが可愛すぎて耐えれない、マジでごめん、いやごめんっていうかみぃちゃんが可愛すぎるのが悪い、こんなのどんな男でも耐えれねえだろ、いやどんな男って俺以外の男は許さないけど)

(ふふ、とりあえず、お風呂入ってきていい?)

(俺も入る!!)

(だめ)

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