プライベート7

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1つの可愛らしいお店。お庭があって素敵な外観のお店だった。お庭には可愛いお花が沢山植えられていて白を基調にしたベンチや花壇も可愛らしかった。ピンクや黄色のミニ薔薇が可愛い。これはなんてお花だろう。可愛いランプに照らされたきっちりと手入れされてるお花たちが可愛い。夕方でもこんなに綺麗だからきっとお昼頃にきてもまた素敵なんだろうなぁ。ここプライベートでも今度こようかなと素敵なお店に思いながらも誰もお客さんは他にいないのか人の気配は全くない。静かなお店に少し戸惑いながらもゆっくりドアを開ける。するとそこにいたのは、

「え、」

「お待ちしてましたお姫様」

「、な、、んで?」

黒いタキシードに身を包んでバッチリ髪型もセットした紫耀くんが立っていて。カッコいい。いやカッコいいんだけどカッコいいんじゃなくて、なにしてるのと、聞きたいことが沢山あったのに言葉が出なくて多分固まってる私にふはっと笑った紫耀くん。

「上着お預かりします」

「いやいや、え、なにこれ」

「なにって、ほら、俺言ったじゃん?すげぇお祝いするって」

「え?」

「お誕生日おめでとう、ご飯食べよ?」

いやいや。こんなことある?あっていいの?びっくりして声が出ない私に紫耀くんは私の腰に手を回して奥へ案内してくれた。その部屋にはセッティングされたテーブルがいくつかあり、夕方になりもう辺りは暗いけど可愛いキャンドルがテーブルに置かれていて暖かい灯が灯されていた。うそ、なんでと思ってたけど奥から出てきたのは店員さんだろうか。紫耀くんは私の上着をその人に預けるとそのままひとつの席に案内して座らせてくれる。そして同じように前に腰掛けた紫耀くんは「びっくりした?」とニヤリと笑う。

「び、っくりしたよ!」

「じゃあ成功だね」

「まだ心臓ドキドキ言ってるもん」

「あはは、てかみぃちゃんめちゃくちゃドレス似合ってる」

「、ありがと」

「俺が選んでメイクさんに預けておいたんだよね〜」

「っ!!そうなの!?」

「うん、俺の想像以上でびっくりしたけどね〜、さすが俺だわ。似合いすぎ。バッチリ」

「、今日、雑誌の撮影って聞いてて、」

「うん、サプライズしたかったからさ、色んな人が協力してくれたよ。ほんと嫉妬しちゃうぐらいみぃちゃんって色んな人に愛されてるって確認できたもん」

「、」

きっとあのメイクさんもマネージャーもみんなこのために力を貸してくれたんだろう。そんな周りの人の気持ちにも嬉しくなっていれば、そこから店員さんが来てくれて次々とコース料理が運ばれてきた。美味しいスパークリングワインから始まって、前菜はサーモンのマリネ、メインのお肉料理も美味しくて、スープもパンも本当に美味しい。全部美味しいけど2人で一緒に食べながらこれ美味しいねって。このソースなんだろね、なんてお話ししながら食べてるこの時間が幸せで胸がいっぱいになった。

「美味しいね、いっぱい食べた!」

「ね、俺みぃちゃんがこんな食べてるの見たの初めてかもしれない」

「うん、紫耀くんの気持ちが嬉しくてさらに美味しく感じれたから」

「それは良かった」

「ありがとう、紫耀くん」

「ねぇ、みぃちゃんさ。本当は外でこうやってご飯食べたかったでしょ?」

「え?」

「今はファンのことを1番に考えてって。ティアラにこれ以上不安な気持ちにさせないであげてって言ってくれて俺すげぇ嬉しかった。けど、てことはさ、俺らが行きたい所もしたいこともさ、しばらくは我慢しないといけないってことじゃん?」

「、っ、」

「みぃちゃんの気持ちはすげぇ嬉しいし、俺もそうするべきだとは思うから頑張ってやってるけど。やっぱ欲は出るというか、俺みぃちゃんのことすげぇ好きだからさ。2人で買い物行ったり旅行行ったり遊びに行ったり、こうやってご飯食べに行ったりもしたいなって思っちゃうんだよ」

「、」

「けどそれって、みぃちゃんも一緒なんだろうなってちゃんとわかってる」

「っ、」

紫耀くんとお付き合いするって決めた時。自分の中で絶対曲げずに貫き通そうと決めたことはあった。それは彼と外では2人で会わないってこと。今紫耀くんは本当に大切な時で。大きな決断をしてその花道を歩いている時期だから。その花道をファンの皆が惜しんでそれでも彼を必死に応援してる。そんな状況でもし紫耀くんと私のことが世間を騒がせるようなことになればファンの子も困惑するかもしれない。紫耀くんの道を私の存在でデコボコにするのは嫌だったの。紫耀くんも、ファンも、そしてメンバーの皆さんも、今は大事な時間だから。だから彼にはグループとファンのことだけを考えて事務所にいる間のときは過ごしてほしい。専念して欲しい。それが私の願いだった。紫耀くんもそれを受け入れてくれてお礼を言ってくれたけど。けど。

(みぃは平野くんとデートしてるん?)

(お家デートならしてるよ)

(やっぱ外はしてないんや)

(うん、とにかく5月まではね。しないでおこうって約束なの)

(・・そうかー、いや、わかるけど、あれやな。ちょっと寂しいな)

章ちゃんにそう言ってもらった時本当はちょっと泣きそうになった。私が決めたことだしこれは何言われても譲れない思いなのは変わらない。けれどもそれでもやっぱり人の欲というのは恐ろしくて。ふとした時に何回も何度も彼としたいことを考えてしまう時もあった。一緒に美味しいご飯を食べに行きたい。楽しい旅行をしたい。海外も行きたい。2人で服を買いに行きたい。友達も誘って皆で遊びに行きたい。やりたいこと、紫耀くんと2人でしたいことが沢山出てきたの。今回も誕生日、本当はこうやって2人でレストランとか来て美味しい特別な料理を食べたいって思ったこともあった。でも、なんで、なんで、

「、どうして?」

「ん?」

「なんで、わかるの、私言ってないのに」

「わかるよ、だって俺みぃちゃんのことしか見てないもん」

「、っ、」

「いっぱい我慢させてごめん。みぃちゃんのしたいこと今は叶えられなくてごめん。」

「、っ、」

「俺のこと、グループのこと、メンバーのこと、ファンのことを1番に考えてくれてありがとう」

「、しょ、くん、」

「みぃちゃんお誕生日おめでとう。生まれてきてくれてありがとう。出会ってくれて、俺の彼女になってくれて、ありがとう」

「、」

「愛してるよ、」

そう言って笑った紫耀くんに涙は止まらなくて。そんな私にいつのまにか店員さんがケーキをそっと持ってきてくれたのかテーブルの上には可愛いケーキが置いてあった。紫耀くんは席を立つとこっちに来てしゃがんでくれて座っている私と目線を合わせてくれる。

「泣かないでよ」

「、っ、だって、」

「みぃちゃん、これ」

紫耀くんが渡してくれたのは可愛い花束。ぶわっとそれに涙が出ると彼は手を伸ばして私の頬に触れて優しく涙を拭ってくれた。

「はは、止まらない」

「うんっ、ごめんっ、ありがとう、紫耀くん」

「もう一個。俺さ、みぃちゃんもご存知の通りなんですけど、独占欲すげぇ強いと思うんだよね」

「・・そう?」

「え、そう。だから、みぃちゃんの周りには色んな男がいるから。今は俺のって言えないけど、けどみぃちゃんは俺の彼女だからさ」

「、」

「これ付けといてくれる?」

「え?」

手を取られて紫耀くんは私の右手の薬指にそっと綺麗なリングをつけてくれた。ピンクゴールドのリング。それにまた涙が溢れて止まらない。

「やばい、めちゃくちゃ泣かせてるんだけど俺笑」

「、紫耀くんが、王子様みたい、」

「えー、俺王子だけど」

「確かに、紫耀くんは初めから王子様だった」

「みぃちゃんだけの王子だけどね」

「ふふ、綺麗、嬉しい」

手をかざして見ればピカピカと光るそれ。なんて綺麗なんだろう。するとそっと紫耀くんが私の隣に自分の手もかざす。するとそこには同じ指にキラリと金色に光るそれが付いていたからびっくりした。

「俺は、これ毎日首からぶら下げとくから。だからみぃちゃんは指につけてくれる?」

「、っ、うんっ、」

「で、色々終わったら俺もここにつける」

「うんっ、」

「でさ、いつかってか、近々がいいんだけど、こっちの指にもつけさせて」

「っ、いいの?」

「みぃちゃん以外ありえないもん」

「、っ、どうしよ、幸せすぎてつらい」

「・・ちゅーしていい?」

「ふふ、誓いのキス?」

「やめて、恥ずかしいから」

紫耀くんがそのまま腰を上げて私の唇にそっと魔法を落としてくれた。ああ、こんなにも幸せな日があっていいのだろうか。色んなことがあったけどこの人に会うために私は産まれてきたのかな、なんて思えるほど紫耀くんのことが愛おしい。これからどんなことがあっても今日のこの時間を思い出せば頑張れるんだろうなと思う。それぐらいかけがえのない時間を過ごさせてもらえた。2人で目を合わせて恥ずかしくなって笑い合っていたら紫耀くんは立ち上がって「さ!ケーキ食べよ〜」と前の席に向かう。

「ありがとう紫耀くん」

「ありがとうは俺だけどね?大事なみぃちゃんの誕生日俺にくれたんだから」

「私、こんなにも幸せな日は初めてかもしれない」

「・・・ほんと?」

「うんっ、嬉しいっ、ありがとう、大好きっ」

どうかどうかあなたとずっと一緒にいられますように。いつも沢山の愛をくれるあなたに同じぐらいたくさんの愛を返していけますように。そんなことを願いながら目の前で優しく笑ってくれる紫耀くんの笑顔を何よりも守りたいと思った。


私だけの王子様、


(お腹いっぱい〜)

(ねー、美味かった〜!!さあ姫、帰りますよ〜)

(はーい!カボチャの馬車はあるかしら?)

(ないわ笑)

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