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□目覚めたらキスをして、
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音也の過去を捏造してます。
大丈夫な方のみどうぞ!
眩しい光の後に響く地鳴り。
この間授業で習ったから、なんとなく原理はわかってる。
「…っ、いや…」
それでも怖いものは怖いんだ。
皆に言ったら馬鹿にされちゃいそうだけど…高いところより苦手、かも。
施設にいた頃、建物の近くの大きな木に落ちたことがあって、それから怖くなったんだ。
その時は耳が壊れちゃうんじゃないか、ってくらい大きい音がして、雨が降ってるのに木が燃えていて、施設のおじさんが一生懸命火を消してるのを皆で部屋の角に身を寄せ合って見ていた。
皆でよく木登りをしていた大きな木が真っ二つになっちゃうんだ、建物に当たったらどうなっちゃうんだろう。
雨に負けずにごうごうと燃えている火を見て震えた。
「トキヤ…早く帰ってきてよ」
自分で思っていたよりも弱々しい声がした。
マサや翔の部屋に行こうかとも思ったけど日付が変わってしまった。
明日は朝からダンスレッスンだから、バイトで深夜に帰ってくるトキヤを待つしかない。
ヘッドフォンをつけて、傷だらけのCDプレイヤーの電源を入れる。
雨の音は少し弱まった気がする。
気が紛れるかなぁ、と思って聴いていたお気に入りのアルバムも一周してしまった。
もう一度聞いてみようと再生ボタンを押して数曲聴いていたら、急に音楽が終わった。
「何故、こんな時間に部屋の角に丸まってるんですか?」
振り向くと、少し呆れた顔をしたトキヤ。その手には俺がさっきまでつけてたヘッドフォン。
「トキヤ、おかえりっ!」
「よくわからない人ですね…もうこんな時間ですから、今日はもう寝なさい」
嬉しくなって思わずヘッドフォンを持った手を握ると、呆れたように笑われちゃった。
あんなに激しかった雨と雷はいつの間にか止んでいたみたい。
「トキヤ、一緒に寝よう」
「嫌です。シャワーを浴びてきますが、私のベッドに入るなど馬鹿なことはしないで下さいね」
「えーっ…」
俺の文句を最後まで聞かないで、バスルームに入ってしまった。
馬鹿ってとこをわざと強く言われた気がする。
「馬鹿って言った方が馬鹿なんだよー…」
悪態をつきながら、トキヤのベッドに潜り込む。
今度、理由を話したら笑わないで聞いてくれるかな…なんて考えてたら、瞼が重くなってきた。
瞼を閉じた後、トキヤの少し焦った声が聞こえた気がした。
2012.7.20
怖がる音也を見たくてつい…雷が凄かった日に書きました。
UTA☆PRI