忍若

□すれ違いラブ
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若は一番近くの売店に行ったがそこでは飲み物を扱っておらず、しかたないので売店の店員に教えてもらった別の売店へむかった
念のため侑士の姿を確認してから急ぎ足でゆくことにした
次の店で飲みやすいスポーツ飲料水を2つ買ってあわてて戻ったが侑士の姿がない
若は一本ペットボトルの蓋を開けて口をつけた
喉元をよく冷えた飲料水が流れていく
辺りを見回しながらもう一口飲み込んだ

(ここにいろって言ったのに)

若は苛立ちながら眼鏡を持ってきたらよかったと思った
今日はコンタクトもしてこなかったのだ
ぼやけた視界にそれらしい人を見つけるのは困難だ
しばらく待ってみることにした
一方、侑士の方は少女を無事インフォメーションまで連れて行くことができたが、事情を説明している間に懐かれてしまったらしく、少女は侑士の手を取ってはなそうとしなくなってしまった

「お兄ちゃんな、友達と離れてもたからもどらなあかんねん」

堪忍な、と頭を撫でてやっても納得してくれない
しかたないので若が気づいてくれるか、待っていてくれると信じて少女の母親を待った

若は待たされるのが好きではない
もしかしたら帰りが遅いのを心配して一番近くの売店に侑士も行ったんじゃないかと思い、若は再び売店へ向かった
こういうじっとしてられない性格があまりよくない方向に働くことはよくわかっているので注意深く辺りを見回しながらあるいた
目を細めて歩いている様はきっと不機嫌全開に映ってるだろう

そんなころ、侑士はようやく少女と母親を引き合わせることができ、インフォメーションから解放されたが、内心、若が絶対怒っているだろうと、挨拶もそこそこに出ていった
そこをちょうど午後2時のパレードが始まった
待ち合わせの場所は賑わい、華やかな衣装を身にまとったダンサーが踊りながらゆっくりすぎていく
こんな中に若はいるだろうか、と侑士は少し長く時間をかけてしまったことを後悔していた
しかし悔いていてもしかたがない
人だかりで向こう側が見えないので、広場がよく見える観覧車から若の姿をさがすことにした
幸い皆パレードに夢中で観覧車にはすぐのれる
比較的低い位置から目をこらして探した
若が一番近くの売店に立っているのをみつけ、携帯を取り出したが、間の悪いことに充電に余裕がない

(しまった)

昨晩、跡部と長電話しすぎたのだ
一か八かで侑士はメールを作成し、観覧車、と最低限の文だけ送ってみた
侑士の携帯は若の携帯へメールを届けた後、画面をうつさなくなった

(たのむで、日吉)

観覧車が回り終わるまでにはまだまだ時間がかかりそうだった
急ぎ足で侑士を探す若は携帯のバイブレーションに運悪く気付けなかった
そのままもう一度パレードを見送って最初の場所に戻ったとき、やっと携帯を開いた

(観覧車!?)

なんで、と思いながら観覧車付近についても侑士をみつけられない
電話をかけてみるもつながらない

(まさか一人で乗らないよな)

メールが送られてきたのは15分も前だ
若は連絡がとれなくなった以上仕方ないとインフォメーションセンターに足を向けた
侑士はゆっくりと景色を堪能出来るわけもなく、早く下に降りてくれと願った
頂点にたどり着いたときにはひとは豆粒のようで、もう若を見失ってしまった
これはまた降りるころに見つけなければ、と焦りを感じていた
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