蓮仁蓮
□不幸福
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「もうよせ、これ以上恥をさらさせるな」
いくらねっとりと舌を絡ませいやらしく、見せ付けるように舐めようとも、飲み込むように口内にふくもうとも、柳の精器はやわやわとしなったまま、勃起する気配はない。
それでも、学生時代ひそかに求めてやまなかったものを、手に入れている今、俺は夢心地でうっとりと柳の脚の間に顔を埋めていた。
俺はいつもこうして頭の中でお前を好きに妄想してベッドの中、一人ビクビクいきり立つ自分を諌めてきたんだ、と教えてやってもいい。
「仁王、もういいだろう、いつまで続けるつもりだ、」
骨張った指が長く伸びる柳の大きな手の平が、俺の顔を上げさせる。
抵抗されている気にすらならない。
「ええから、全部俺に任せんしゃい」
俺は柳の両足を肩まで掲げ、自分の指を口に含んだ。
「馬鹿、冗談はよせ」
急速に酔いが醒め、青ざめて行く柳の両腕を、膝裏でがっちりロックし、俺は舌を伝って滴り落ちる唾と共に柳の中に中指を一本押し混んでいった。
異物を挿入される違和感を堪えようと、下唇をかみ、絡まる俺の両足に爪をたててつかまる柳の顔を見ているだけで、このままめちゃくちゃに突っ込んで、一生忘れられない記憶として柳の脳内に俺の顔を叩きこんでやりたい気になってくるんだから、今の俺は相当ぶっとんでる。
乱れる呼吸が淫猥で、勢い任せに差し入れる指の数をさらに一本増やした。
嫌だ嫌だと声にも出せず頭を振る柳が目の前に、俺の精器はすでにドクドク脈打ち、柳の背を汚していた。
背中のぬめる感触が柳にとっても情欲をかき立てるらしく、柳の顎はどんどん上に上がり、俺の脚にいくつも爪跡を引いた指は、口元を必死に覆っていた。
「柳、声出し、ふさいどったって苦しいだけじゃ」
やがて柳の中を無遠慮に掻き回している指が、一点を突き止めた。
柳は全身でそれを俺に教え、うめき声をあげた。
「ここ、」
もはやトリップ状態の俺は柳が操り人形のように俺の期待通りの反応を返してくることを愉しみ、固く反り返った柳の精器を力いっぱい握った。
目的は達成された。
「ほら、俺の勝ちじゃ、参謀」
柳の腹や胸に飛び散るどろりとした白濁の液体をローションをなじませるようにぬりたくった。
大きく上下する胸をなで、力の抜けた身体を自由にしてやれば、柳は額にべったりと張り付いた前髪をかきあげた。
「…信じられない、お前は相当いかれてる」
俺は上機嫌でぷり、と口づさんで柳の目尻に残る涙なんだか汗なんだかを吸った。
そのままバスルームに向かって、先程の情事を目の前にチカチカさせながら、俺は自分の股間に手を伸ばした。
翌朝、柔らかな朝日が狭いベッドに横たわる俺達を包んだ。
「…仁王、起きているか」
「んん」
柳は俺の片手を取って、柳にとっては久しぶりに迎えた朝勃ちを知らせてくれた。
「…少し、自信を取り戻せたような気がする、」
俺はククと笑って、撫でてやった。
幸せに満ちている。
こんな気持ちのいい朝は生まれて初めてなんじゃないか、そう思って、身体を柳に向けて起こした。
けれど現実はそういつまでも甘くはない。
「お前、よくあそこまで出来たな…正直驚いた」
柳はいつまでも撫でつづける俺の手を払って、勢いよく起き上がった。
そうだ。
夕べのことは、こいつにとっちゃ、酒に酔った勢いに任せて、盛りのついたガキ同士がおふざけでもするみたいに戯れた程度の出来事でしかない。
俺は相当バツの悪い気分で、あ〜参謀ならいつでも歓迎じゃ、とかいってふざけておいた。
へらへら笑ってはぐらかすのは得意中の得意だった。
昼前になって、身なりを整えた柳は、自宅に帰るといって、悪友面をして部屋をでていった。
別れ際にどうしてもそのまますんなり別れられなくて、またいつでもきんしゃい、と頬に触れておいたが、その言葉の意味を柳はきっと、またつらくなったらいつでも話にこいよ、なんて意味として受け止めていることだろう。