蓮仁蓮
□裏山の妖狐退治
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真田と二人、村を出て小1時間といったところで、蓮二は急に足をとめた。
「一体何処までついて来るつもりなんだ」
真田は用心の為、刀に手をかけたが、鬱蒼とした林の茂みから顔を出したのは、狐退治のうわさを聞きつけた赤也だった。
「アンタら狐退治にいくんだろ、俺も連れてってくれよ、」
赤也は真田のげんこつを食らってもなお、自分をばかにしている村人達を見返すんだ、妖狐退治に付いて行く、と言ってきかず、真田も遂には勝手にしろ、と匙を投げた。
やむなく3人で裏山へと旅立つことになり、道中、蓮二の持ち物に興味津々の赤也は、これは何だ、アレは何だと蓮二に質問攻めだった。
やがて子供には長い道のりに、飽いてしまったのか、ねこじゃらしを引きちぎっては、辺りの草を薙ぎ払い、真田に道草をしている隙などないないのだぞ、と叱られながら、ぼちりぼちり歩いた。
「こんな子連れで妖狐退治などと…、遊びに行くのではないのだぞ、危険な旅に出掛けているという自覚をもたんか、」
真田は終始不機嫌で、ようやく仁王が住み着いているという祠についた頃には、赤也はすっかりスタミナ切れのようだった。
「この奥の洞穴に住み着いているようなのだ」
「そのようだな、先程から妖気は感じていたが、ここに立つとまた強力な力を感じる、」
では参るぞ、と先を行こうとする真田を蓮二は引き止めた。
「すまないが、ここから先は一人で行かせていたい、夕暮れ時になっても戻らぬ場合は、そのまま二人で村へ引き返してくれ、」
蓮二の言葉に真田と赤也は激昂した。
「何を言う、いくら貴様が奇っ怪な術を使いこなせるとはいえ、あの妖狐には、散々まやかしに邪魔され、真剣勝負には、まだケリがついておらん、このまま引き下がっておれるか、アヤツの妖力さえ封じてくれれば、とどめは俺が刺す、」
「俺だって村のみんなに外でちんと座って待ってましたなんて自慢にもなりゃしねぇ、」
全く引こうという気のない二人に蓮二はため息をひとつ零すと、わかった、わかった、一先ず俺の話を聞け、ととりあえず宥めた。
しかし蓮二には洞窟の奥から漂ってくる強い霊気に、二人を庇いながら闘える程の余裕がきく相手だとは思えず、とても連れて入るわけにはいかなかった。
「仕方がない、それではこうしよう、」
真田たちが蓮二の提案を聞こうと近寄ったその時だった。
蓮二は両手の指を素早く動かし、印をふむと、二人の額に掌を宛がった。
どさりと意識を失い、地面にはいつくばった二人に、しばらくそうして眠っていてくれ、と声をかけると、蓮二は一人祠の中へと進んでいった。
一方、村では赤也がいない、と丸井とジャッカルが幸村の家へ駆け込んできた。
「村中探したけど見つかんなかったぜぃ」
「多分、あの二人についていっちまってる」
幸村は眉間にしわを寄せ、握りしめた拳に一層力を込めた
(あの馬鹿…!)
幸村は普段こそまるっきり相手にしてやっていないものの、奔放な赤也のことを本当に可愛いと思っており、丸井たちに預け、その成長をひっそり見守っていた。
「万が一ということもある、手分けして探そう、」