蓮仁蓮

□君、輝かしく
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「見えていなくたって、明るさが変われば、だいたいのことはわかる」
「やから怖ぁない?」

 柳は答えなかった。

「そんなん嘘じゃね」

 仁王は柳の前へ出ると、唇を重ねた。

 嘘じゃない、という柳の声は弱々しいものだった。
 仁王は静かに柳の背中をさするとそっと抱きしめた。
 珍しくしおらしくなった柳は、そのまま仁王の肩にうなだれ、寄り掛かってきた。

「テニスが出来なくなることを考えた、」

 仁王はもう一度、柳の指を搦め捕ると、直ぐ見えるようなるんじゃろ、とわざとぶっきらぼうに言った。

「さっき、お前さんが言うた。うちの偉大な参謀が言うんじゃから間違いないナリ」

 柳はそうだなと笑った。

 柳が笑うときの穏やかな目元がすきだった。
 キスを落とせば睫毛は揺れ、柳はもういつもの柳に戻っていて、もうすぐ顧問が戻る、と胸を押仕返してきた。
 こうした瞬間にも、ひどく愛おしいなと思う。

「夜、行く」

 一人じゃと怖ぁてよぉ寝れんじゃろ、とからかう仁王に、柳は馬鹿、とまた笑った。


 柳の視力は翌日にはほとんど回復し、二日後には完全に戻った。

「あの時、俺がおってよかったと思うじゃろう?」

 ニヤニヤといやらしい笑みを見せる仁王に柳は言ってやった。

「いつだって思う。お前がいてくれて幸せだと。心の底から、本当に」

 仁王は目を丸く見開いて驚いてしまった。
 ストレートな告白に、迂闊にもひどく照れてしまった。
 普段そういったことを口にしない柳からの言葉であることに、歓喜してしまった。

「ワオ、そりゃすごいナリ」

 仁王は慌ててすべてを隠すよう、オーバーリアクションで茶化して見せた。
 けれど柳には全てお見通しだった。

 柳は笑っている。
 窓枠に囲われた美しい青空を背に。

 やわらかい陽の光に透けそうな彼はどうしようもなく美しかった。
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