忍若

□バレンタインキス
1ページ/1ページ

身体中をはい回る掌が熱くて熱くて、脳への伝達網は完全にショートしている
ドクンドクンと心臓の音に全て支配され一気に高揚していく

「…はっ、…あっ、…はっ、…はあっ」

あふれ出た白濁が両手からこぼれ出てシーツを汚す
ズルリと排泄器官から抜け出た熱の塊とともにため息を吐いた

「大丈夫、」
「はい」

倦怠感がどっと押し寄せてくる

「ん、」

ティッシュ箱を渡されて、あぁ、また不毛なことをしたのか、といやになる

「シャワー行こう、中ださな、」

手を引かれてついていく
身体中が沸騰したせいか頭が痛い
温いシャワーを頭からかぶせられて体に残る戯れの後を流していく
それでも掌の感覚だけは拭えない
まつげから跳ねる水しぶきをみられている
俺は今どんな顔をしている?
自分で出そうとして手をとめられた
代わりに突っ込まれた二本の指に再び反応を始めた前を隠した
どろどろと内太ももを流れ落ちていく白濁と、じわりじわり疼くいやらしい感覚に反吐が出る

「セックスはきらい、」
「別に」

目の前に立つ彼に抱き止せられ、勃起しているのが伝わってしまった
やさしくやさしくかきだされていく
体がだるくて肩にもたれると頬を寄せてあいている手を腰に回される
キスしたい
そんな感情を持つ自分が嫌でしかたない

「おしまい」

指が抜かれるとたまらなく物足りないきもちになる

「日吉」

求めていたキスをやっともらえる
額をなで、前髪をあげられ露になった額にまずはひとつ
そしてまぶたに、頬に、焦らすようにキスをくれる

「嫌やったらおしのけて」

ズルい逃げ道を作って唇をあわせる彼が嫌いだ
甘く噛むように優しいキスはマヒした神経を呼び起こす
両腕を上げてしがみついた
貴方がすきだと言えないかわりにキスを深めてもっと欲しいと欲張る

「前、さわるで」

声なく首だけコクンとふってこたえる

「…うぁ」

掻き消えそうな声を彼の耳のすぐそばで届ける

「チョコレートみたいに甘いな、」

彼が笑う
不器用なりに普段の作り笑顔じゃない顔をみせて笑ってくれる
シャワーの水しぶきの合間にキスを交わす

「日吉」

そう何度も呼ばないでほしい
どうせ憎まれ口しか返してやれないのだから
どうせ最後に泣くのは俺のほうなのだから

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ