蓮仁蓮

□20121204
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電飾で彩られた街が嫌いだった
みんな浮かれて幸せそうなのに自分だけ取り残されているようで嫌だった
しかし今年はちがう
同じくイルミネーションを淋しくみつめる人間を見つけたからだ
空っぽのぬけがらみたいにぽけっと突っ立っているから別人かと思ったが、見間違うには銀髪が派手すぎた。

「仁王じゃないか」

声をかけるといつもの仁王にもどる

「参謀、きちょったん」

駅前のターミナルの時計を頂点として広がるイルミネーションは鮮やかで評判も上々だ

「なあ参謀今日一緒にかえる、」
「かまわないが、見学はもういいのか、」

仁王はいい、といって腕を引っ張っていく
息が白くなってきたのがわかるほど気温が下がっていた
滑り込んできた電車にとびのる

「あー寒かったナリ」

鼻をすする仁王に懐紙を手渡した

「参謀、今日なんで見ちょった、」

なぜと聞かれても困る。
生徒会で遅くなってしまったついでに見たのだと正直に言うと、仁王はずるずるみっともなく身体をもたれて座った

「なんじゃ、自意識過剰か俺は」

そう言えば今日は仁王の誕生日だった、と姿勢を正そうとした腕を止め、ぐしゃぐしゃに散らばった仁王の頭をなでた

「今更」

拗ねてみせるのがあかやのように可愛くて思わずにやけた

「仁王、誕生日おめでとう」

蓮二はかけていたマフラーを仁王に巻いた

「空っぽの仁王、今ならリクエストに応えるぞ」
「空っぽ」

まあいい、と仁王は蓮二にくだらないおねがいをいくつかした
その間に蓮二の降りる駅は通り過ぎてしまったけれど、蓮二は黙って仁王に付き合っていた
次はしりとり、と仁王も降りる駅を通り過ごして二人で何処までも乗っていたかった

「いつやめる、」
「仁王が満足するまで」
「果てしないのぅ」
「いいんだ」

じゃあ肩枕ともたれかかってきた仁王の手を取った
もう誰も乗っていない電車のなかで貸し切りきぶんでキスをした

「まだまだたりん」
「強欲だな」
「しっとったじゃろ」
「そうだな」

仁王のキスはいつだって気持ちが伝わるキスだった
寂しいといっている可哀想な子供をあやすように背中をなでた

「参謀が生まれてくれてよかった」
「今日はお前の誕生日じゃないか」

参謀もおんなじこと考えて、とまたキスは深くなる

「仁王が生まれてくれてよかった」

嘘つきじゃ、とマフラーに埋まるほおが赤く染まっていた

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