忍若

□20121015
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ガツン、と鈍い音と共に衝撃と鈍痛が襲ってきた

「どうせあんたのことですからろくに殴られたこともないんでしょう、」

若は冷ややかな目で侑士を見下ろしたまま、殴られるときは歯をおもいきり食い縛るんですよ、と言う

「ほら、ガードが甘いから唇がきれてる、中もきれましたか、」

若は侑士のむなぐらを掴むとふらつく侑士をロッカーにたたきつけてキスをした
痛みに思わず仰け反った

「やっぱり、鉄の味がしますね、」

何故殴られるか解りますか、と顔をぎりぎり迄引き寄せられて普段は穏やかな眼を侑士は閉じ込めた

「不可抗力や、わざわざ用意してきてくれたもん突き返すなんかできひんやろ」
「そういう優しさが相手を逆に苦しめることになるってしらないんですか」

ほな、俺が届くプレゼントみんな拒否したら気が済むんか、と侑士の暗い目が長い黒髪の間から覗く
若は黙ったままもう一度、今度は優しくキスをした

「あんた誰にでもいい顔し過ぎなんですよ」

HAPPYBIRTHDAY、と額をくっつけると猫のように甘えてくる

「嫉妬焼きももうちょいひかえめやとええんやけど」

若はこんなときだけ笑う

「俺からのプレゼントはさっきの、熱烈な愛情ですよ」

歪んでるなあと思う
ただれているなあと思う
それでも自分はアンタじゃないとだめなんだと思われているのを強くかんじてしまう
他のだれにも取られたくない
桃城に執着した以上に自分に執着して欲しい
そう願っているのだ
憎しみだってかまわない
自分だけに特別な感情をよせてくれればそれで満足なのだ

痛い、と首を振る侑士の頭を若はなでまわす

「わかりますか、あんたがすきなんですよ」

若は何度も繰り返しながら額、目じり、まぶた、耳たぶ、どんどんキスを捧げる
侑士の細く骨張ったゆびが若のネクタイを抜き去り、シャツの第一ボタン、第二ボタンを外した

「お返し」

あ゛、と思わず声がもれた

鎖骨にくっきりと歯形が残るキス跡をなぞる舌が心地いいなんて
セックスは後にしてください、と懇願するように侑士の肩にうずくまってくる

「わかっとるわ」

ぐいっと抱き締めあって熱くなる
目眩がしそうなほど息が苦しい
なあアンタは?
アンタは俺がすきですか?そう問われている
全身全霊でこたえよう

「すきやで」

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