蓮仁蓮

□借り物競争
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爽やかな秋晴れの下、秋の運動会が始まった
蓮二は借り物競争に出場すべく入場口にいた
柳くんは人望厚いし、交流範囲も広いから、とのこじつけで、あまり気乗りしない競技に参加するはめになった
行進曲が流れだし、入場すると第一グループが位置につく
蓮二は二番目だ
だいたいどのような出題がされるのか様子をうかがう。

キョロキョロとしていると仁王が観覧席でクラスメイトと談笑しているのがみえた

いつでもやる気があるのか無いのかわかりにくいのが仁王である
視線を走者にもどした
どうやら比較的簡単なお題目が出題されているらしい
蓮二は誘導員の指示に従って位置についた

パン、と弾ける音でスタートをきってお題箱にむかって走る
中身に腕まで突っ込んでかきまわすとカサカサ音がしてピンときたものをひとつつかみあげた
お題をみて直ぐ様先ほど視界にいた仁王の元へ走った

「仁王、おまえのそれを貸してくれ」

そういって仁王の銀髪に手をのばした

仁王は突然後ろから声をかけられ仰け反った
反動で倒れそうになる仁王を支えている間にするりと仁王の髪止めを抜いた

「なんじゃ参謀」
「すまんがしばらくこれを借りる」

仁王はにやりと口角をあげると蓮二の手から髪止めを取り返した

「お題はなんじゃ」
「赤い物だ」

仁王は満足げに笑うと欲しかったらとりにきんしゃいと駆け出した

「仁王!」

蓮二はわけがわからずとりあえず仁王を追い掛けた
待てと呼んでも仁王は着いて来ているのを確かめながらどんどんかけていく
もう借り物競争どころではなくなってしまったと観念し、蓮二は仁王をおいかけた
屋上までかけあがったところで絡まりあうように二人は倒れこんだ

「ようやったのう、ほれ貸しちゃる」

そういうと仁王はばさばさの髪を風になびかせながら笑った

「もう戻っても最下位だ、赤っ恥をかくだけだ」

ほならもうちょいここにおる、と嬉しそうな仁王にデコピンを一発おみまいして仁王の隣に寝転んだ
雲ひとつない真っ青な空にすいこまれそうだった

「参謀、なんでこんなもん思いついたんじゃ」
「たまたま先におまえの姿をみていたからだ」

俺を、と仁王は身をおこした

「勘違いするな、それも偶然みつけただけだ」
「ふ〜ん、」

仁王はつまらんのぅと言って蓮二に背を向けた
くくって、と甘えたこえでねだるのを蓮二は笑った
猫の毛みたいにさらさらのかみを結んでいく
ほら、できたぞ、と両肩をぽんと叩くと、くるりと回転して向かい合う

「いまやったら誰もこんけど、ちゅー」
「しない」

最後まで言い切る前に遮られ、仁王は蓮二を押し倒した

「なんじゃおまえさん、気のある素振りだけ見せてズルいやつじゃ」
「勝手に勘違いするな、俺は、」

今度は蓮二がくちを塞がれた
仁王のキスはいつもしつこい
いきがあがるまで続いて放してくれない

「借り物競争の貸しはこれでチャラじゃ」
「俺は失格になったんだから貸しはないはずだが」

仁王はけらけらと笑った

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