忍若
□錆びた精神V
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今日が何月何日で何曜日なのかわからない。
そんなの知らなくても、俺の一日に差ほど影響がないからだ。
せいぜいとりたてて面白いとも思わず、ただなんとなく毎日見ていただけのテレビ番組を見逃したりして、まぁ別にいい、とむしむし蒸し暑苦しい部屋で、畳の上に死体みたいにころがるくらいの。
そんなだらしなく、何の生産性もない一日が過ぎてゆくだけだ。
忍足さんはいう。
「日めくりカレンダーでも買う、」
ああ、でもめくるの忘れて意味ないな、と笑う姿が最近とてもうざったく、監視されているようでめんどくさい。
変わりたいのに変われない2人が並ぶと、同極同士が弾きあうように突き飛ばしては、一定の距離を保とうとしてしまう。
傷つけて傷つけられて。
寂しい、その一言がつっかえて出て来ない。
あせらずとも、必ず陽はまた昇る、なんて知ったふうな口をきいていた担当医に、じゃああなたは、いつ明けるともしれない日々をどれだけ永くまっていられるんですか、とぶつけたいほどに。
「日吉には、全部、おんなじ1日に感じるんやな、」
こくんと首だけ動かして返事をすれば、忍足さんは、でも多分、全部ちょっとだけ、違う1日やったような気ぃせぇへん、と内ポケットから煙草をとりだした。
昨日より悪くなった今日、明日にはまた良くなってたりしてな、みんなそんなもんやで、と一服ふかす。
「ああ、そういえば、」
昨日はショッピングセンターの手洗い場に携帯を置き忘れてきて焦りました、と笑う。
忍足さんは、ほら、といって、ちょっぴり肝を冷やした事は感情が戻ってきたいい傾向や、と俺の額を弾いた。
気ぃつけやぁ、と柔らかく笑う顔立ちにほんわか嬉しい気持ちがした。
これもあんたが言う、よい傾向なんだろうか。
明日も雨が降る。
梅雨だからしかたない。
だけどあんたが来てくれるだけで陰鬱な1日も一変するのだ。
察して。
そして、俺の中の底無し沼のような汚いところまで降りてきて丸ごと愛して。
織姫と彦星よりも儚い夢物語を紡いで。