いいわけ
□いいわけ ー其の八ー
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「どうしたがじゃ、麻百合」
私は坂本さんにそう言われて固まっていた手をおずおずと差し出した。
手に持った小さな杯ーお猪口に透明の液体が注がれる。
一応、未成年なんだけどなぁ。
そう思いながらもえいっと喉にそれを押しやる。
初めてじゃないけど、喉がかっと焼けそうになって思わずむせた。
「おおっ大丈夫か」
「龍馬さん、姉さんに無理強いするのは止めて下さい」
中岡さんからの厳しい言葉に胸を押さえながら、「いいんです」と何とかいいわけする。
お料理も粗方出し終わって、私はお松さんに宴会に一緒に参加するように勧められ、部屋の花飾りをした後に広間に行った。
既に酔った坂本さんと中岡さんに勧められて二人の間に座らされた直後の出来事である。
広間の対角線上に居る大久保さんの呆れ顔が目に入ったような気がした。
「あれ、美味しい」
お膳の上のいつもより豪華な食事に手をつけると、ふんわり懐かしいような味が広がる。
お松さんは本当に料理が上手なのだ。
そして、なんだかこのお酒にとても合うような気がする。
私は坂本さんが並並と注いでくれるお酒をまた一口、飲んだ。
口の中に甘い香りが広がる。
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