いいわけ

□いいわけ 終焉
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「麻百合!、麻百合!」




頭が痛い。




後頭部に鈍い痛みが、断続的にやってくる。





「カナコ…」




目の前には心配そうに私の顔を覗くカナコの姿があった。




「麻百合大丈夫?」




「うん…」




ゆっくりと身体を起こす、蝉の五月蠅い鳴き声が私を取り囲んでいた。




「あれぇ?」




「もう!心配したのよ!戻ってきても居ないし、居ないかと思ったら、こんな所に倒れてるし、身体は真冬かってほど冷たいし」




「え」




私は私の腕を触ってみる。何故か腕が冷たくて、この夏の気温が心地良く染み渡っていくのが感じられる。




「キーホルダー、見つかったんだ」




カナコの視線の先に目線を送ると、私は自分のスクールバックに付けられた猫のキーホルダーを見つけた。



「あれぇーどこにあったんだっけ」



頭の上に浮かんでは消えるクエスチョンに、私は空っぽの頭を振る。




「でも麻百合、そろそろ行かないとまずいかも、立てる?」




「…うん」




私は好く眠った後に目が覚めたときのような、不思議な喪失感を拭いきれずに首をかしげた。





『麻百合』




誰かに呼ばれたような気がして、振り返るけど、そこには陽炎に包まれた京の景色が広がるだけ。




「麻百合、明日の稽古のOB戦、沖田先輩来るらしいよ」



「あれ、OB戦って初日だっけ」



寝起きでまだ働かない頭に問いかけるように、カナコにそう話しかける。



「そうだよーもうしっかりしてよ!」



カナコの強靭な腕が私に鋭い突込みを入れて私はまたよろける。



「早くしないと、大久保先生にまた嫌味いわれちゃうよー」



ああ、そういえば、今回引率、大久保先生なんだっけ。



「またなんで政治の先生が剣道の合宿の引率引き受けるかね」



私はわざと年寄りっぽく言ってみる。



「えー私は桂先生より好きだけどなぁー大久保先生」


おどけながらそう言うカナコに私は眉をひそめて溜息を吐く。


「えー趣味わるー、絶対桂先生の方がいいよー」



そう言いながら集合場所に向かう私の手は、夏の熱を身体一杯吸い込んで、冷たさのかけらも残さなかった。



蝉の声、暑い空、合宿初日、憧れの沖田先輩はとっておきの期待。



政治の先生は、ちょっとの憂鬱?



夏休みは、始まったばかり ―





 

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