いいわけ
□いいわけ ー其の八ー
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雨が上がって晴天…元日から気持ち良い青空が広がる。
麻百合は冷たく、澄んだ空気を胸一杯に吸い込むと目を閉じてそれを思う存分味わう。
こんなに思いは儚くて、こんなにも時代はうねりをあげている。
私はちっぽけで、私の思いもまた同じだった。
移ろい易くて、脆い。
脆く、崩れ落ちて、なくなって欲しいと、そう思い始めていた。
「麻百合ちゃん」
藩邸のすぐ後ろに広がる野原に、部屋に飾る花を探しに来ただけなのに、お松さんは、心配そうに私の姿を確認しに来る。
「すみません、もう戻ります」
「あら、それ、石蕗(つわぶき)ね」
お松さんが、私の手にある黄色の花を見てそう言う。
「へぇ、そんな名前なんですねー知らなかった」
「可愛い色よね、それ」
冬の空に手を翳してそれを眺めてみる。
晴れた日に、よく似合う、美しい色。
私はその野の花の、花言葉を知っていた。
「さ、もう宴会始まるから、手伝いに行かんと怒られちゃう」
笑って舌を出すお松さんに駆け寄って、私たちは藩邸の中に戻った。
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