いいわけ
□いいわけ ー其の六ー
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珍しく今日は長州藩邸ではなく薩摩で会合ひらくとあって皆が浮かれているのが分かった。
まぁ私もあの娘に会えるのは楽しみではある。
「武市先生」
以蔵が歩きながら横に並ぶ。
「先日から大久保さんがいうようにそろそろまた寺田屋を出ることを具体的に考えた方がよいかと…」
「ああ、分かっているんだがな…龍馬にはちと緊張が足りんな…」
「…」
秋が深まり、高くなってきた空を仰ぐ。
このところ幕府の取締が一段と厳しくなっている。…そして、今日話がうまく通れば近く西郷隆盛に会える日も近づくだろう…。
それまでに我々に…特に龍馬に何かあってはならないのだ。
「麻百合さんを諦めてもらうか…」
「…先生?」
…もう、彼女を手に入れることは叶わないだろう。そしてそれを龍馬は分かっているはずだ。
「何を待っているのだ…」
離れて前を歩く龍馬に届かない声で一人慰めの言葉を探した。
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