いいわけ
□いいわけ ー其の八ー
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ゴンっと鈍い音と共に、私は部屋の畳の上に転がった。
「いったぁあああい」
「お前が暴れるからだ」
「いたいいたいいたいいたいー」
そっけない大久保さんが面白くなくて、わざと子供みたいに駄々をこねる。
「小娘…」
「いたいよぉ」
呆れ顔の大久保さんを見て、なんだか恥ずかしくなりすっと目を逸らしてしまった。
「今夜も冷える。ちゃんと布団で寝ろ」
そう言うと大久保さんは部屋を出て行こうとした。
「待って」
私、酔ってる。
目の前の人がぐにゃりと歪んで見えた。
「…」
大久保さん、困ってる。
こんな風に抱きつかれても。
きっと、困るだけ。
大久保さんの背中からほんの少しの人肌が伝わる。
「……ごめんなさい」
大久保さんに後ろから抱きついた腕をすぐに解くとくるりと後ろを向いた。
大久保さんはそのまま、「おやすみ」とだけ言って出て行ってしまった。
私も後ろを向いていたし、貴方も後ろを向いたままだったから、私が泣いてたことは、きっと貴方に分からない。
私が、貴方の表情を知らないように。
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