お題
□全て飲み干して
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「また動きを見せたようだ」
ハンター協会に届いた知らせに協会長となった銀騎士のハンターはぴくりと肩を震わせた。
「今度はなんだ?」
「レベルEの暴走が続いている。誰が黒幕かはお前にはわかりきった事だろう?」
海斗の言葉に零は立ち上がると、愛用コートを取り羽織る。
「どこへ行く?」
「ヴァンパイア狩り」
「お前は協会長だ。俺が行こう…」
零の肩に軽く手を置き、行こうとしたが、海斗の前を阻む零。
「…もう、終わりにしたい…海斗。もう何もかもを終わらせたいんだ…」
アメジストのような瞳を細め懇願した零。海斗も何か感じたようで、視線は絡まったまま。
「…お前、…何する気だ」
「…………」
「…おい!零!!」
小さい微笑みを残し、零は歩きだした。この時、確信した。零は何かをしようとしている。
間違いない事実。
ハッとしたように、協会長の机の右棚を見た。
あの『銃』がない。
「あいつ…っ!」
海斗は零の後を追って行ったのは言うまでもない。
***
暴走を始めたレベルEの吸血鬼が人間の生き血を求めさ迷う。
純血種の支配の束縛から放たれた吸血鬼たちが、自らの欲望のために獣とかした。
零は残酷なほど簡単に血薔薇銃を向ける。躊躇いなしに引き金を弾くと、容易く暴れた吸血鬼たちが死んでいく。
いつも吸血鬼たちは揃って言った。
『もう誰も殺さなくていい…と…。』
その言葉に反応するように身体が熱くなる。
アイツの血が、アイツを思い出す瞬間に、自分でも抑えきれないくらい激しく反応した。
身体が、心が、彼女と過ごした日々を覚えていて忘れた日などなかった。
今日。
俺は……。
この暴走した吸血鬼たちを放った黒幕に会いに行く。
最後の吸血鬼と人間の永き争いに終止符を打つために。
行く手を阻む吸血鬼を銃殺しながら、ゆっくりと確実に零は歩いて行った。
***
『あなたをいつも想って……』
何回も何回も書いた手紙。最後の一文を書こうとした時に、'あなた'はいつの間にかあたしの部屋の片隅にいた。
「…かなめ…」
フッと微笑む婚約者はまるで、その一文を書くのを知っているかのようで、あたしはペンを落とす。
「どうしたんだい?動揺して」
「……」