お題
□全て飲み干して
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蝶はひらひら舞い、そして自分の求めた場所へ向かう。それがとても羨ましい、なんて思う自分がいる。
もしわたしが蝶ならば、貴方の元に飛んで行くでしょう。
もう二度と別れたくないから…。
風が吹き抜け、いつも整った髪が少し崩れた。
婚約者の'あなた'と共に生き始めてだいぶ経つ。あの日の惜別も時間と共に薄らいだ。
でも、今日。
貴方に無性に逢いたくなった。この気持ちだって罪だとわかっても。運命に逆らうものだとしても。その美しい蝶が目に映り、わたしの心は揺らぐ。
幾千生きても、絶対に満たされない渇ききった心。満たされる瞬間はあの人の側にいる時だったと気付くまでどれだけの時を要したかわからない。
それでもわたしは、本当に欲しい血の主ではないヴァンパイアの王の'あなた'と共にある。
それを望んだのも自分だったけれど、窓の外を見つめるとやはり、あの蝶の行方が気になってしまう。
小さな期待を抱いて。
好きな人の場所に行けるかも知れないという淡い期待を抱いてしまう。
自分が馬鹿なのはわかっていても、もう一度だけ会いたい。それが最期ならそれでも構わない。
何年も書いては消して、書いては消しているあなたへのラブレター。
届くかわからないのに、届くとも決まってないのに、自分の気持ちを綴っては消して、綴っては消して。そして渇きに耐えきれず自分の皮膚に牙を立てた。