お題
□繋いだ手は温かくて
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「優姫、今日街の方で小さいお祭りがあるらしいよ。錐生くんと遊びに行ってきたら〜」
理事長からの提案に、ふむ、と優姫は少し考えてみた。
休日。街はお祭り。
…と、くれば出掛けるしかない。
バンッ
私的居住区の零の自室にお構いなしで入り込む。零にはノックしろと言われたがとりあえずスルー。
「ほらほら、零、寝っころがってないで出掛けようよ」
「…出掛けたいならお前一人で行ってこいよ」
天気の良さもアピールするが、簡単に断られた。
「つれないなぁ。それが女の子に対する態度?」
「とりあえず、お前に対する態度だ」
…女の子を強調してもやはりダメ、ならば食べ物しかない。
「ね〜行こうよ。お祭りだから、ラーメン屋もサービスしてるらしいし。ね?」
「俺はお前みたいに食い意地張ってないんだが」
・・・・・
「……いいから行くの!」
***
――で 結局、零を無理やり連れてきた…までは良かったんだけど。
零の“迷子になるからあまりうろちょろするな”という保護者的発言に対し、
“平気平気”と思って行動してたら、見事に迷子になってしまい、気づいたら零は側にいなくて私は一人で。
たくさんの人混みの中で、散々もみくちゃにされて不安いっぱいになった頃、
後ろから“優姫っ”って叫ばれて振り返ると零がいて、泣く手前の私を見つけだしてくれた。
「…お前、いい歳して迷子になるなよ」
「………………」
呆れたように話す零に返す言葉もない。
「……ごめんなさい」
とりあえず謝ってみる。…うぅ、情けない。
「はぁ…」
小さいため息が零からこぼれた。
やっぱり呆れられたかな…。
「…ほら。」
へこんだ私に、そっけない言葉と共に、さりげなく差し出された手。
その手を何の迷いも無く繋ぐ。
まるでそれが当たり前のように。
ぎゅ……
零の大きな手と私の小さな手が重なって生まれる熱は、幸せな温度のように感じられて…
どうしよう
今この手の中にある温もりを手放したくないって思ってしまった。
――…ずっと、きょうだいみたいと思ってたけど、
……どうやらそれは間違いだったみたい。