お題

□溢れる涙
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地獄のような日々は過ぎ去り
嘘のように穏やかな日々が訪れた。
目の前には零。
今はソファに座り、本を読んでいる。

「あの頃、本当に辛かった…」
零はどうだったのか…
それを知りたくて、私は当時の話を持ち掛けた。

零は読んでいた本から視線を私に移す。
だけど、何も言ってくれない。
『俺もだよ』

その一言だけでいいのに…
恥ずかしいのか、こういうことは絶対に口にしない零。

私はぷくっと頬を膨らまし、ぷいとそっぽを向いて
明らかに不機嫌だと示してやった。

それを見て、零ははぁと溜め息を零すと

「…優姫、こっちに来いよ。」
と、本を置いて言う。

「何よ?」

つれない態度をしながらも、私は零へと近づいた。
すると…

「…わっ!?」

一瞬のうちに腕を引かれ、ひょいと持ち上げられたと思うと
私は零の膝の上に乗せられていた。

「なっ///」

その状況に気付き
恥ずかしくなって、とっさに離れようとしたが
零の腕がそれを許さない。
暴れれば暴れるほど、零はぎゅっと腕に力を入れる。
『これは無理だな…』と諦めて、零にもたれかかってみると
心地良い零の体温を感じた。

…あぁ…私、ずっとこの温もりが欲しかったの…

その状態のまま、零が優しく私の頭を撫でる。
そして、顔を近づけてくると思ったら

「言わなくても、分かってるだろ。」と、そっと耳元で囁かれた。

「…うん///」

分かってるよ…零がどう思ってくれてたのか。
でも…どうしても零の口から聞いてみたいんだ。

「ねぇ、零。」
「ん?」

私は直球に訊いてみることにした。

「今、幸せ?」

零は一瞬、きょとんとしたが、「あぁ」と短く答えた。

「私がいるから?」
「あぁ」
「私のこと、好き?」
「あぁ」

…ほらね、やっぱり
はっきりと言葉にして言ってくれない。
でも、瞳を見れば分かる。
これらの返事は本心なんだって。
嬉しくて、私の目から温かいものが零れた。



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