お題
□心はアゲナイ
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無理やりに置いた距離も、今までとはまるで違う生活も、あの日を色褪せた思い出にしてくれないの・・・・。
平気なふりをしてみても、今自分が誰だけを愛すべきか分かっていても心はひどく思い通りにならないものだった。
もし、いつかどこかで偶然、零に逢ってしまったら私はどうするんだろう。
すっかり醒めた頭でそんな有得ない都合のよい偶然を想い浮かべて見る。
今となっては「好き」は言えない言葉だから・・・。
「心はアゲナイ」と強がって平気そうに振舞おうとして、そのくせ動揺して挨拶くらいしかできなくて、あいまいな笑みを浮かべてしまいそう。
違うの。
そうじゃないの。
「心はアゲナイ・・・ホントは・・・とっくに・・・半分貴方のもの。」
そう、彼の腕の中で言えたら良いのに。
溶けるように口の中で小さく呟くと、甘くて苦い・・・気持ちが高まる。