SSS

□one-love,your-love
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結局、叶わないんだ。



『one-love,your-love』



「前にも聞いたかもしれないけれど」
アラウディは、いつものように突然切り出した。

「君が大事なのはファミリー、大事な人は誰」
だからそれは…、とジョットは、彼の腕の中で小さく首をかしげた。こうやって、ベッドで朝を共に迎える関係になってもまだわからないのか、ジョットは真剣に、彼の鈍さにうんざりする。

もちろんアラウディは、わかってて聞いている。愛しい人の言葉で、自分が特別であることを確認したいのだ。いや、繰り返し言わせて、呪文のように本人の脳裏に焼き付けるのだ。マインドコントロールなんかじゃない。それではどこかの誰かと一緒じゃないか、気にくわない。

ジョットは、鈍くて忘れやすい彼のために、もちろん、きちんと答えを伝えなくてはいけない。だから毎回、とてつもなく恥ずかしい思いをすることになる。

「アラウディ、あの…。俺は、その…」
「何?よく聞こえない」

自分のために、顔を真っ赤にして、しどろもどろになる愛しい人に、アラウディは毎回、意地悪く執拗に責め立てる。そんな勘違いな君もかわいい。ドン・ボンゴレのこんな姿は、僕にしか見ることはできない、そう思うと、アラウディは言い様のない満足感に満たされる。

「ジョット、顔見せて」
胸の中で身を震わせる恋人に、耳元で優しくささやく。アラウディにとってはということだが。ジョットにとっては、甘い言葉も今は拷問に近い。低く腰に響くような声は、先程までの官能を呼び覚ますのには十分すぎた。

「…アラ…ウ…ディ」
「どうかした?」
「…アラウディが…大事…だ」

顔を見なくてもわかる、ジョットは羞恥の限りを全身で表して、自分に体を預けてくる。胸の内をさらけ出すようなこと、君には耐えられないよね。でも僕に対しては無理をしてもらうよ。だって…。

「ふーん、そうなんだ」
「…それだけ?」
「うん、確認できたからそれでいいけど僕は」

それでは言った損ではないか、とジョットは少しむくれる。アラウディは、と聞けない自分が情けない。言葉が出ない代わりに、ジョットは両腕を背中に回して、ギュッと愛しい人にしがみつく。

「何、まだ足りないの?」
「…足りない」
「どうしてほしい?」
「…ギュッとして」
「こうして抱きしめてるけど」
「…もっと強く」

あーあ、火照っちゃって…ほんとかわいいよ、ジョット。確かめたいんだよね、君は。僕の気持ちを。でももう少しこのままの君を見ていたいから、君のお望みの台詞はしばらくお預けだ。


ふいに、ジョットは顔をあげ、その琥珀色の瞳を官能的に潤ませながら、かつ、諭すように宣言した。


「アラウディ、俺は…好き…だから…、その、……安心していいからなっ!」


…………はぁ?


て言うか君、まだ僕のことそういう風にとらえてたわけ?鈍くて、君に愛されてたいと懇願してる、情けない男に見えてたのか。


さらにギュッと抱き締める腕に力を込めるジョット。心配しなくていいってことだよね、そうやって子供をあやすように、僕を支配しようとしてるの?


アラウディは愕然とする、と同時にやはり叶わないと思う。君はまっすぐで、人を疑わない。試されても騙されても、常に信じ続けるんだろうね。万人を受け入れ、敵さえも取り込む、君は…強い、最強だ…。


…脱帽だよ


「ジョット、君にはいつも驚かされるよ、僕の最大の興味は、目下、君だな。」

ジョットは意味が少しわからなかったらしく、目をぱちくりさせていたが、アラウディの表情から、自分の気持ちが通じたのだと思ったらしい。安堵の微笑みと得意気な視線で、アラウディを魅了する。吸い込まれるような瞳、引き寄せられるように自然に…


ついばむようなキス。
何度も、何度も。
会話をしているみたいに。







仕方ないな。しばらくこのまま君に華を持たせてあげるよ。



最愛の独裁者へ…




end

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