小説

□カラフルワールド第六章
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「楓って誰?」
唐突に聞いてみた。だって彼が良く名前を口にする。
その声は嬉しそうなんだけど、複雑そうな変な響きがあるから興味を持った。
「ぼ、坊ちゃんが興味を持つなんて・・・今日は赤飯ですかねぇ・・・」
「多分夕飯の残飯か、期限切れの物じゃない?いつも通りだけど」
その言葉にそりゃないですぜー、と彼は言う。なんだかこのノリにも慣れてしまった。
大爺様の目を盗んでは、彼はやってくる。要領が良いのか、制裁を受けた所は聞いたことない。
俺以外の子供とも上手く付き合っているらしい。きっと俺には出来ない。
たまに触れてくる手は温かい。冷たい俺の手とは大違いだ。
「今日も青痣酷いなー・・・」
「いつも通り。これが普通だよ?それより楓って?」
いつも通り。小さい頃からの普通。青い傷なんて見たことない。触っても血の感触がない。
本当にあるものなのかすら俺は知らない。見えないから。
人間の血は赤いのに、痣は青いなんて少し変な話。どっちも見たことないから分からないけど。
「楓は俺の友達だよ。変な奴、だけど面白い!」
「変なのに?」
「まともなのに一緒にいても面白くない奴は嫌いなんだ」
彼が苦笑する気配がした。変なのに面白い・・・よくわからない。
変ってことは、普通とは違うってことだし、それだけで敬遠する人もいるよな。
「あ、坊ちゃんも充分変ですので、気が合うかも!」
「え!?」
「うわ・・・坊ちゃんのそこまで嫌そうな顔初めて見た・・・」
そりゃ変だって言われて嬉しいことなんてない。悪気がなくてもだ。
つまりは普通と違うって、線引きして遠ざけるじゃないか。

「ちなみにそんな2人が大好きな俺も変人だけどね!!」

そんなこと言われたら、悪態つく気もなくなるじゃないか。
彼はズルイ。要領よくて、優しくて、本当に変人だ。


あれ・・・そういえば彼の名前はなんだっけ?




名前が思い出せないまま目が覚めた。
最近、昔の事をよく思い出すように夢を見る。
そして夢見てから、思い出した彼は一体誰なんだろうか?
楓・・・その名前も気になる・・・けど名前しか彼は出てこない。
対極的な2人。出会った事ないのに名前を知ってて、出会っているのに名前を知らない彼。
なんだろう、変な感じがする・・・思い出さなきゃいけないような、思い出したら駄目なような・・・
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