+歌小説+

□もう恋なんてしない
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どうして君は僕から去っていったの?
【さよなら】と残した君の気持ちがわからない。


僕は君にたくさんの愛を注いだのに。
たりなかった?
僕は君にたくさんの優しさを注いだのに。
たりなかった?
僕は君にたくさんの幸せを注いだのに。
たりなかった?

僕は君にたくさんの愛を注がれていたの?
気付けなかった。
僕は君にたくさんの優しさを注がれていたの?
気付けなかった。
僕は君にたくさんの幸せを注がれていたの?
気付けなかった。


だから君は僕の隣を離れたの?
落ち込み、俯いた僕の左耳に
「どうしたの?」と君の声がした。
慌てて顔を上げてもそこに君の姿はない。
いるはずがないんだ。
だって君はもう、僕に別れを告げたのだから。
いつもと何だか風景が違う、そう思って切なくなる。
君が居ないだけでこんなにも眺めが良くなるなんて。


もしも君に一つだけ強がりが言えるのなら
【もう恋なんてしない】なんて言わないよ。絶対。


誰かにこんな姿を見られたくない。
洗面所へ行き顔を洗う。
洗顔をしてひげを剃り、髪型を整えた。
鏡を見てため息をつく。

「なんて酷い顔をしてるんだ。」

自分に呟き、頬を軽く叩く。
歯を磨こうとコップに手を伸ばした。

「あ・・・」

二つ並んだ色違いの歯ブラシ。
紫とピンク。
仲がとても良さそうだった。
今の僕には1本で十分。
ピンクの歯ブラシを捨ててしまおう。


独りで住むには家具も服も多すぎる。
どうせ何かを捨てるのなら
君の趣味で選んだ服と
君の趣味で選んだ家具を捨てよう。
勿体ないけど他の物は必要なんだ。

”男らしく 潔く”

そう、心で言っている僕は
他の誰が見ても一番センチメンタルだろう。
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