+歌小説+

□うたかた花火
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二人で行った、溢れる人で賑わう8月のお祭り。
キミに「可愛い」って言ってもらいたくて頑張って浴衣を着た。
足が痛くても我慢して、下駄も履いた。
【からん ころん】って音を立てて、キミの隣を歩いた。
人と人との間をすり抜けて。
たまにはぐれそうになる時は、何も言わず、その手を出した。
私はその手に甘える。



不意に咲いた花火を二人で見上げた。
その時、キミに気付かれないようにそれを夢中で見るキミを盗み見た。
キミがあんなにキラキラしている時は見た事がなかった。
新しいキミを見つけて嬉しくて。
このことは私だけの秘密なんだ。



見たことないキミを見つけるた度に
新しいキミを見つける度に好きになっていく。
どんどん好きになってしまう。
私だけに募る思い。




キミの事、嫌いになれたらいいのに。
今日みたいな日にはきっと。
きっと君を思い出して泣いちゃうんだ。
笑った顔や照れる顔、怒った顔と心配した顔。
全部、思い出しちゃうんだ。



こんな気持ち、知らなきゃ良かった。
こんな気持ち、なきゃ良かった。
もう二度と会う事が出来ないのに思っちゃうんだ。
【逢いたい。】って。
本当に逢いたくて逢いたくて小さく言うよ。
『逢いたい。逢いたいんだ。』
だから今でも想う。
キミの居た、あの夏を。
キミと居た、あの夏を。

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