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以下拍手御礼文。


バニラ

なにがおこっているのかさっぱりわからなかった。
まさかこの世界にケーキを爆発させる人間がいるなんて、俺は本気で信じてはいなかったのだ。
そんな人間が居た。
いま目の前にいた。

「どうしてこうなった…」

俺が目を離した隙にお前は何を入れたんだ。
まさかバレンタインと称して殺人事件を起こす気なのか。
悪気はなかったんだと言って罪を逃れる気なのかそうなのか。

「そんなこと言われてもわかんないわよ!」

目を吊り上げながらも瞳を潤ませているセリスがなんでなんでと喚いているところ、まあホントに悪気はなかったんだろう。それにしても…ひどい。
爆発、炎上。の後みたいなケーキはもうハート形とは言えなかった。

「大丈夫、恋と違って料理はやり直しが出来ます」
「なんで目を逸らすのよ!」
「次は付きっきりで見てやるから心配すんな」

粉まみれのキッチンを片付けつつ俺は言った。
後ろから聞こえてくる鼻水の音は聞こえないフリ。人には向き不向きがあるなんて言ってやらない。セリス、お前はやればできる子。
数時間後にはきっと、形は歪でもうんと愛情のこもった甘い甘いガトーショコラが出来上がる。






「…というわけで、アンタへのケーキは用意出来ませんでした」

エドガーはその柳眉を下げて、おつかれさま、と笑った。ほとんど一日中キッチンに拘束されて泡立て器やらバタベラやらを動かしていた腕が痛い。ぐるぐると肩を回すと骨が軋んだ音を立てた。
「あー、疲れた」
冷凍庫からアイスクリームを持ってくる。それから銀のスプーンをふたつ。味はバニラ。
「チョコレート味なら良かったんだけどねえ」
「私は気にしないよ」
ぺりりと蓋を開け、滑らかな白い表面にスプーンを入れる。冷凍庫から出したばかりのアイスはまだ固いままで、力を込めたら大きな塊で掬われてしまった。
「あ、」
その大きな塊をエドガーの口に放り込む。冷たい、と舌を出しながら食べる姿は何とも間抜けだ。
「美味しい?」
頷くエドガーの唇が冷たく濡れている。甘い匂いに釣られて唇を寄せた。
バニラフレーヴァーのキス。


チョコレートを投げ与えてみる



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