オリジナル『仮面ライダーダルク』

□第4話「組戦」
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第4話「組戦」


1年1組の教室。

「悪かったって、ごめん!」
「ふん!知らない!」

席についてからも、輝と美月のやり取りは終わらない。
周りの視線は2人に集中しており、隣同士であるので余計に目立つ。

反対隣の前澤千代は、どうすれば良いか分からない。

「千代ちゃん、あの2人どうしたの?」
「えっと、輝くんが美月ちゃんの胸を触っちゃったって」
「だから!不可抗力だ!!」

弁明しようと必死になる輝。
が、生徒が美月に詰め寄る。

「良かったじゃない、美月。輝くんみたいなイケメンに触られたら嬉しいでしょ」
「な、何言ってんのよ!!大体コイツはっ」

―カツッ!―

―ガツッ!!―

美月と輝の額に、白いものが当たった。


「静かにしなさい!!出席取るわよ」

担任のマリア=ケントの飛ばしたチョークは、風のマナを纏って飛び、正確に命中した。

「は、はいっ」
「俺の方チョーク壊れてるッ!」

威力に差があるのはご愛嬌。


出席を終えて、1時間目の授業担当が来るまでの間、

「美月、機嫌直してくれよ。今日の昼飯奢るから」

両手を合わせて頭を深々と下げる輝。

こう何度も謝られると、許さずにはおれず、

「・・・明日も奢ってくれたら許す」
「分かった!ありがとな、美月ぃ〜」

追加条件を出して許すことにした。

『はぁ〜あたしって、輝に甘いのかなぁ?』

輝の喜ぶ笑顔を見ると、それも良いかもと思えたのだった。


一方で、

「ねぇ、知ってる?最近、市街地の方で殺人事件が増えてるんだって」
「猟奇殺人ってニュースであったよ」

クラスメイトの会話を、輝は聞き耳を立てていた。

≪ファントムでしょうか?≫
『まだ確定してないけどな。もしもの場合は、放課後出てみよう』

ジャンヌと思念会話をする輝。
自分達が動かない様な事なら、それに越した事はないだろう。



昼休みの生徒会室

大きくコの字に並ばれた机の数と、ここにいる人数は不釣合いだった。

「REALから司令が来た?」

教卓の前の3席の1つ、書記の札が置かれた席に少年が座っている。
少年は、長身で茶色の短髪で青い瞳をしている。

彼が声をかけたのは、窓際の壁に寄りかかって携帯端末の立体ディスプレイを見ている羽名。

「ええ。警察からREALへ依頼来たみたいね。放課後、早速向うわ」
「手伝おうか?」
「大丈夫よ、ユウキ」

羽名は壁から離れて、少年“ユウキ”の後ろに立って両肩に手を乗せる。

「あなたは戦わなくて良い。私に任せて」

そう告げる羽名に、ユウキは微笑んでいた。



薄暗い、古びた建物の奥深く、

≪ふふふっ、もうすぐだわ≫
≪ああ。もうすぐだ≫

男女の二つの声が響き、その周囲を無数の何かが蠢いた。



放課後になって、各クラスで生徒達が下校してゆく。

1年1組でも、輝達を含め下校準備をしている。

「さてと、一旦寮に戻って千代を送るわよ」
「おっし!」
「2人共、もういいのにっ」

千代に対して、どこか過保護な美月と輝。
彼女がファントムに拉致されて以来、家まで送るのが、2人の習慣になっていた。

ふと、輝は窓から外を眺めると、

「?羽名?」

羽名らしき人物を発見し呟いた。
それに気付いて美月と千代も外を見た。

他の生徒達よりも不自然なほど早く走って寮に帰って行く。

3人は顔を見合わせて首をかしげた。



寮から出てきた羽名は、駐輪場に置かれたバイクを広い場所まで押す。
赤く染まったオートマチックタイプのバイク“ソウルチェイサー・サイファン”。

跨る羽名は、白のロングTシャツにオレンジのミニスカート、その下に黒のスパッツを穿いている。

ヘルメットを被って、いざエンジンをかけようとした時だった。


「任務か、羽名?」
「わあ、先輩のバイクもカッコいい!!」

自分のソウルチェイサーを押してくる輝と、羽名のを見てときめいている美月。
2人共確り私服姿。
その後ろから、躊躇い気味に千代が来る。

「あ、あなた達!どう言うつもり?」
「見ての通り。一緒に行こうと思ってね」

平然と答える輝に羽名は声を張る。

「これは私の任務よ!それに、無関係な彼女達を連れて行けないわ!」
「いいじゃん、一緒の方がさっさと済むし、2人共頼りになるぜ」

大きく頷く美月と、控えめな千代。
過去何度か巻き込まれている2人はいろんな意味で慣れてしまっている。

それを知ってか知らずか、でも!と食い下がる羽名。
彼女にも生徒会副会長としての意地がある。

しかし、

「だめ、ですか?」

何時の間にか側に来ていた千代が、目を潤ませて羽名に懇願する。

『うぅ〜この子ッ』

羽名の心が、キュン♪、と鳴った。

「・・・勝手な行動は謹んでね」

赤くなる頬を見られまいと、顔を背けて告げた。

千代は、どうして良いか分からず、助けを求める様に輝達に視線を向けた。

「流石千代。あの羽名ですらノックアウトかよ」
「天然であれだから強力よね」


と言うわけで、輝達は羽名の任務に同行することになった。
輝のバイクに美月が2人乗りし、羽名のバイクに千代が乗る。

走り出し、道路に出てから輝が羽名に問う。

「で、まずどこに行くんだ?!」
「聖上市警察署よ!そこで依頼内容を確認するの!」


聖上市警察署、
その名の通り聖上市一帯の警察組織を統括する部署。

到着した輝達、警備に呼び止められたが、
輝と羽名が携帯端末にあるREALの証明を見せて通る事が出来た。

応接室に案内された4人、

「何か2人共凄いわね。VIP扱いじゃない?」
「そんな事は無いわ。昔からREALと警察は友好関係にあるからよ」

羽名が美月に説明しているとドアが開き、

「よう、羽名ちゃん!」

見るからに刑事(デカ)風の男が入ってきた。
口に煙草を咥えている。

「寺浪さん、煙草は喫煙所で吸ってくださいよ」
「細けぇ事は気にすんな。美人が台無しだぜ」
「余計なお世話です」

座っていたソファから立ち上がる羽名。
彼の名は寺浪五郎、聖上市警察のベテラン刑事である。

「で、そっちは?」
「あ、ええ、私と同じREALのライダーと、同じ学校の後輩です」

視線が合った輝、立ち上がり、寺浪に自分から手を差し出す。

「天蒼輝だ。よろしくな、オッサン!」

羽名は寺浪をオッサンと呼んだ事を叱ろうとしたが、

「お、中々肝が据わってやがるな。眼もいい、気に入ったぜ、坊主!」

寺浪が力強く握手した事でコケそうになる。


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