オリジナル『仮面ライダーダルク』

□第3話「規則」
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第3話「規則」

聖ミロンド学園、1年1組の教室。
4時限目の数学が終わり、生徒達は退室したり昼食の準備をしたりとザワザワしている。

そんな中、

「何してんの?」

長い黒髪の女子生徒“上城美月”は隣の輝に目を向けた。

輝は力尽きた様に机に伏せていた。

「昨日、夜中に数学の課題思い出してやって寝不足」
「あんたねぇ、そんなの寝る前にやるもんでしょ」
「こっちだって夜のお勤めが大変なのだよ」

美月は輝が仮面ライダーだと知っている為、伏せた表現で理解できる。
それでも少し間抜けだなと思う。

「輝君、大丈夫?ごはん、食べに行ける?」

美月の反対の隣の席の生徒“前澤千代”が心配して、可愛らしいポニーテールを揺らして声をかける。

「大丈夫、大丈夫。飯食った方が眠気も覚める」

むくっと上半身を起こした輝。
いざ食堂へ、と席を立とうと思った時、周りのクラスメイト達の様子が変わった。

1人の女子生徒―この学園の大半が女子だが―が教室に入ってきた途端に静かになった。

その生徒は、赤紫色のセミロングの髪に朱色の瞳をしている。

周囲で、ボソボソと話す声が聞こえるが気にする素振りは見せず、彼女は迷うことなく足を勧めた。


「あなた、天蒼輝ね?」

輝の机の前に立ち、笑顔を向ける。

「ん?あんたは?」
「ちょ、生徒会副会長の香坂羽名先輩よ!!」

美月が直ぐに小突いてツッコミを入れる。
2年2組の香坂羽名(こうさかはな)、先月入学した美月でも生徒会副会長の名前ぐらいは知っている。

「ふ〜ん。で、その副会長さんが俺に何のよう?」

先輩に敬語を使う気配がない輝に引いている美月だが、
羽名は全く気にしていない様子で話を進める。

「単刀直入に言うわ。あなた、生徒会に入りなさい」
「うわ、本当に直だわ。わりぃ、パス」

そんなのは柄じゃない、と生徒会への勧誘をバッサリ斬った輝。
それでも羽名は引かない。

「そうでもないわ。あなたはそんな柄よ」

羽名は、輝の目を見て、こう告げた。


「あなた、仮面ライダーでしょ?」


クラス全員の視線が輝に集中する。

「天蒼君が、仮面ライダー?」
「うそでしょっ」

と思い思い口にしている中、
正体を知っている美月と千代はどうすればいいか分からず、戸惑っている。


「俺が?冗談キツいぜ」

対して、輝は平然とシラを切ってみせる。

「誤魔化してもダメよ。大体・・・」

羽名は、壁に立て掛けてある長い袋に手を伸ばし、
徐にジッパーを下げた。

「こんなものを平然と学校に持ち込む時点で、仮面ライダーか犯罪者ぐらいしかいないわ」

中にある、デンライを周囲にバラす様に。

またざわつきだす教室内に、盛大に溜息を吐いた輝。

「・・・あんたか、昨日の夜、俺を見てたのは」
「あら、やり残した課題に焦ってた割には気付いてたのね。気配は消してたのに」
「視線がバチバチきてたぜ。あんた誰だ?」
「私?私も仮面ライダーよ」

平然と公言した羽名、自分は仮面ライダーだと。
それに対しては流石に驚いた輝。

「不思議な事は無いわ。この学校はREALの管轄校である上に、日本での対ファントムの防衛拠点の1つでもあるわ。
当然、派遣されたライダーが未成年の場合は、ここに入学して一帯を守らなければならない」

寮性でマナに関する勉学を学べるこの学園は、羽名や輝の様な仮面ライダーには打って付けの場所と言う事になる。
寧ろそうなる様に創られたと言う方が正しいかもしれない。

「そして、この学園の生徒会は学園を守る義務がある。それが可能なのは、仮面ライダーだけよ」

勿論一般生徒も入会可能だが、ライダーにしてみれば色々と融通が利くので便利といえる。


「なるほど、俺は最良の人材って訳だ。でもパスさせてもらうわ、俺ってそう言う堅苦しいの苦手なんだよね」

2回目の入会拒否をする輝。
横から聞いていた美月は、輝らしいと思っていた。

だが、

「そう。なら、交渉しましょうか」

羽名の、若干トーンが下がった声に、空気が冷たくなったのを感じた。

数秒の沈黙後、
輝が美月を突き飛ばす行為が0.5秒遅ければ、彼女は巻き込まれていたかも知れない。

床に倒れる前に確かに見えた。

羽名が、輝の机を天井に付きそうなほど高く蹴り上げたのを。


机が落下する前に、輝は椅子の背凭れに手をかけて、腕の力だけでバク転し、背凭れの上に乗った。

その直後、落下し終える机を羽名が踵落としを放って、見るも無残な姿に机を変えた。


美月は唾を飲み込む、もし側にいたままだったら、と。

一方、バランスよく背凭れの上で屈んでいる輝は顔を引きつらせている。

「おいおい、毎回勧誘でこんな交渉すんのかよっ」
「失礼ね。あなたが初めてよ」

笑顔を振りまく羽名だが、逆に恐怖を感じる輝。

そんな事はお構い無しに、羽名は回し蹴りを放つ。
咄嗟に椅子から飛び降りて避けた輝だったが、追い討ちの下段からの中段蹴りが飛んでくる。

それらを避け、壁に追いやられた輝の顔面に向って上段蹴りが迫る。
反射的に頭を傾け、羽名の脚を両手で掴んで動きを止めた。

「へぇ〜こんな破天荒な事する割に、ちゃんと女子の慎みはあるわけだ」

羽名のスカートの中は、確りとスパッツが穿かれていた。
美月辺りから『スケベ!』と非難が飛んできそうだが、
実際は、冗談が言える程の余裕は無かったりする。

「これでも副会長ですもの。あなたこそ、何だかんだでちゃんと男子なのね」

掴まれた脚を勢い良く振り上げ、そのまま振り下ろす。
横に転がるようにかわした輝、耳に床が割れる音が聞こえた。

起きた瞬間、ステップで距離を詰めたサイドキックを放たれ、
モロに受けた輝は吹き飛ばされた。



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